「似た作品」に生まれる「センス」の違い

21
あかさたな🌗 @emesh

@mogura2001 「似たような作品」を描いてても、「センスの違い」ってのは、明らかにあるよなと思います。これって一体どこから生まれるのでしょう。

2012-01-21 14:48:12
喜多野土竜 ⋈ @mogura2001

@emesh 表層をマネした劣化コピー版と、濃い部分を一般向けに希釈した物では、似て非なる物なんですよね。果汁30%のジュースと、無果汁のオレンジ風味のジュースとの差。作品の中に、自分の経験を喚起させる異化作用は、作りての経験や深い思索の果てにしか生まれないので。

2012-01-21 15:30:06

いか こうかいくわかうくわ[3]【異化効果】〔ドイツ Verfremdungseffekt〕
[分類]演劇全般
演劇用語。ある事物からその特性であると一般に認知されている部分をとり除くと,その事物が未知の異様なものに見えるという効果。ブレヒトの用語。(大辞林より)


異化作用
劇作家ブレヒトが、1930年代にその演劇理論の中心をなす用語として使ってから一般化したことば。当たり前と思われる事柄を、見慣れない未知のものに変える趣向をいう。異化作用ともいい、同化作用の逆。ブレヒトは社会を変革する視点を強調し、観客が登場人物や物語に感情同化せず、距離をおいて批判的に観察するこの技法を自作に適用した。(知恵蔵2011より)

喜多野土竜 ⋈ @mogura2001

異化作用について。例えば、ヤンキーがカツアゲするシーンで「金を出せ、出さないと殴るぞ」というステレオタイプな台詞ではそのヤンキーの個性とか人間性は見えてこない。これを「おい、アニメのサザエさんの、タラちゃんの足音を口で言ってみ? できなかったら罰金な」にしたら、どうだろうか?

2012-01-21 16:09:33
喜多野土竜 ⋈ @mogura2001

承前)だいたいの人間はアニメのサザエさんは見てるし、タラちゃんの足音も聞いている。しかし、それが言語では表現しづらい物だという事までは、思いが至らない。言われてみて、実際に言葉で再現してみようとして、初めてハタと気づく。これが表現における異化作用ということ。そこに共感が生まれる。

2012-01-21 16:13:42
喜多野土竜 ⋈ @mogura2001

承前)例えばアニメの『火垂るの墓』で、ご飯をよそった母親が、手についた米粒を口でパクッと食べて取るシーンがある。何気ない動作だが、日常では割とあるシーンで、改めて見せられるとそこにリアリティーを感じ、作中の人物の実在感が増す。こういう異化作用のある表現には、作り手のセンスが大切。

2012-01-21 16:18:45
しゅう @hideki919

@mogura2001 そういうさりげない日常の動作が入ると、観てる方も作り手の本気を感じる気がします。ちょっと大げさですが

2012-01-21 16:20:33
喜多野土竜 ⋈ @mogura2001

@hideki919 実際にやってみればわかりますが、実はそう簡単には思いつかないもんです。でも、そこをポンポン気づく人がいます。それを才能の差と言うようです。才能がないなら、汗をかくしかない訳で、汗をかくには本気になって執念燃やすしかない。普通の人にはその執念はないですから。

2012-01-21 17:04:12
喜多野土竜 ⋈ @mogura2001

承前)そういうセンスに恵まれない大多数にとっては、対象物に対する熱意とか、かけた時間の長さとか、愛情の寡多が重要になる。現地に行ったこともない作家がシナリオ書いた『アマルフィ 女神の報酬』が、映画になるとさらに上滑りするのは、そういう点が原因かと。

2012-01-21 16:25:13
喜多野土竜 ⋈ @mogura2001

承前)観客もほとんどは行ったことがない海外を舞台にした作品の場合、日常の異化作用よりは誤魔化しは効きやすいが、それでも限界はある。『アマルフィ』は続編の『アンダルシア 女神の報復』方がまだしも見られる映画になっていたのは、監督が前作での海外経験が反映されたからと考えられる。

2012-01-21 16:32:43
喜多野土竜 ⋈ @mogura2001

承前)同様に、異世界ファンタジーとかは誰もみたことのない世界だから、適当で良いと考えると、しっぺ返しを食らうことになる。誰もみたことのない世界ゆえにその世界なりの法則性、我々が現実に生きる世界の法則性と通底するルール、フィクションとしての基準がないと、見る側が混乱し共感できない。

2012-01-21 16:37:16

誰も見たことの無い世界だからこそ、世界を練り込むべき。このことはハリウッドでは「リアリティライン」と呼ばれる一般的な概念だそうです。また大塚英志の「キャラクター小説の作り方」にも、そのことの重要性が説かれています。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4061496468/togetter06-22/ref=nosim/

喜多野土竜 ⋈ @mogura2001

承前)逆説的に、そのような異化作用を巧く織り込ませると、本当はあり得ない世界が違和感なく受け容れられる。近年の例でいえばアニメの『けいおん!』が筆頭。多少なりとも楽器をいじった人間には共感できるあるあるネタが配置され、ギターを抱いて寝たりとかはバットなど他の種目でも良くあること。

2012-01-21 16:42:06
喜多野土竜 ⋈ @mogura2001

承前)実際は、けいおんの作品世界は恋愛がない・親がほぼ出てこない・未来の規範となるような大人が出てこない、という意味では、現実とは断絶した世界。ビーバップ・ハイスクールという作品も、宮下あきら作品をバカにするほどリアリティある服装やアイテムで異化作用を演出するが、同じ構造。

2012-01-21 16:47:07
喜多野土竜 ⋈ @mogura2001

承前)リアリティを持ったファンタジー世界と、ファンタジー性を持ったリアル世界を舞台とした作品と、その優劣は一概には言えない。ただ、現実の経験や問題意識を投影したファンタジー作品は、暗黙の異化作用ゆえに名作となることが多い。例えばフランケンシュタイン、、キングコング、猿の惑星…。

2012-01-21 16:52:23
喜多野土竜 ⋈ @mogura2001

承前)フランケンシュタインは無神論の両親に対する作者の反発と、母親になることの恐怖や不安が投影され、キングコングには伸長する黒人への恐怖が、猿の惑星は言わずもがな。そのような作品と、その作品の枠組みだけを表層的に拝借した作品では、似て非なる物になって当然。でも見逃されがち。

2012-01-21 16:56:40
あかさたな🌗 @emesh

@mogura2001 気が付いたのですが、「異化効果」って枝葉の話ですよね?

2012-01-21 18:20:30
喜多野土竜 ⋈ @mogura2001

@emesh 枝葉の技術ですが、実際に生み出すのは難しい。それゆえに、本質を覆い隠してしまう付加価値、的な怖い技術です。もっとも、そこに気づかずに作品評価しちゃうダメ編集や、確信犯的にダメ作品を異化作用で良作に見せてしまう狡猾な編集がいるので、この機会に呟きました。

2012-01-21 18:25:44
あかさたな🌗 @emesh

@mogura2001 いや、MANZEMIの趣旨と違うなと思いましたから。

2012-01-21 18:42:13
喜多野土竜 ⋈ @mogura2001

@emesh 重要な枝葉であっても、根や幹とは違いますからね。ところが根幹部分を抽出したMANZEMIより、枝葉の技巧に走った入門書をレベルが高いとか評する人間が多くって。枝葉の部分でも○○や××よりこっちは高度な事言えるけど、優先順位としてあの本出したのに…という気持ちから。

2012-01-21 18:59:36