放射能は人を裸にするー医師・高岡滋氏による「時代の風:放射能トラウマとリスク」批判

水俣市で院長を務め、水俣病問題に関わっている医師.高岡滋氏が、 斎藤環が毎日新聞に執筆したコラム「時代の風:放射能トラウマとリスク」を批判的に考察した。 「放射能は、あらゆる人間を裸にする。(これまで、水俣病があらゆる人間を裸にする現場を見てきたが、放射線も同じ)」という言葉には考えさせられる。 続きを読む
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高岡 滋 @st7q

①精神科医・斎藤環氏の「時代の風:放射能トラウマとリスク」(毎日新聞)を読んでの感想…放射能は、あらゆる人間を裸にする。(これまで、水俣病があらゆる人間を裸にする現場を見てきたが、放射線も同じ) http://t.co/fSfQh0aj via @mainichijpnews

2012-01-25 01:13:35
高岡 滋 @st7q

②斎藤環氏の誤りは、大きく分けて二つある。一点は放射線障害についての医学的認識の曖昧さ、もう一点は、人間と人間存在のあり方についての認識の狭さである。

2012-01-25 01:14:20
高岡 滋 @st7q

③前者の問題点は、「放射能はさしあたり人の身体は破壊していないが、“放射能幻想”は人の心を確実に破壊している」という認識に集約されている。放射能はいつの瞬間も人間の身体を破壊している。そして、人間はそれらを修復する一定の能力をもっている、というのが正しい認識である。

2012-01-25 01:14:50
高岡 滋 @st7q

④そして、「低線量被ばくの危険性がはっきりしないという問題がある。…確実なことは何も分かっていない。」という発言は、医師としては疑問符がつく。おそらく、斉藤氏は、放射線影響に関する実験データにも、疫学データにもあまり目を通していないのではないだろうか。

2012-01-25 01:15:21
高岡 滋 @st7q

⑤この人の「確実」がどこまでを指すのだろうか?例えば、妊婦のX線写真を撮ったとして、その子が小児癌や白血病になるか?その子が小児癌や白血病になるかどうかについては、確実なことは誰にもいえないが、危険であるという疫学結果を元に、妊婦のX線撮影は原則として避けられる。

2012-01-25 01:16:04
高岡 滋 @st7q

⑥斎藤氏は、このような日常医療における常識と彼のいう「確実性」の関係をどう評価するのだろうか?「確実性」と予防原則の関係はどうなっているのか?これは、「被曝と放射線障害被曝を『科学的』に考察する」と言った場合、科学的の意味が多様でありうるのと同じ曖昧さと問題点を有している。

2012-01-25 01:16:26
高岡 滋 @st7q

⑦「例えばチェルノブイリの犠牲者数については、数十人から百万人以上とする説まで、報告によってまちまちであるという」などと言う暇があったら、きちんと調べて、その違いがどこから出てくるのかを考察する事だ。違うから意味がないと言うのではなく、違うことに意味を見出すのも医師、科学の仕事。

2012-01-25 01:17:57
高岡 滋 @st7q

⑧「情報が増えれば増えるほど混乱が深まるようにすら思われる。」というのも勝手な思い込み。放射線に限らず、見解の不一致は少なくない。「医学のあゆみ」特集号は問題論文が多いが、吉川肇子(慶応大)の指摘は良い。これに類似した認識を「危機管理者がもつ誤解」の一つに挙げている。

2012-01-25 01:21:15
高岡 滋 @st7q

⑨今必要なのは、存在する正負あらゆる情報の提供。「医学のあゆみ」吉川氏は、危機において人々が「パニックを起こす」というのは、危機管理の専門家がもつ7つの誤解のトップに挙げている。事故現場の危機が去った訳ではない。私達は、いずれ最終的に真実を受け入れざるをえなくなるのである。

2012-01-25 01:22:10
高岡 滋 @st7q

⑩実は、政府があらゆる被曝情報を提供し、子供と妊婦を優先して避難させるという政策の選択肢は存在しうるのである。官僚も、政権が命令すれば、政策を作る。国民も実際の情報を与えれば、それが危機的状況であってもベストを尽くすことができる。誠実さと真実なしに共同や連帯ができるだろうか?

2012-01-25 01:22:32
高岡 滋 @st7q

⑪斎藤氏の「トラウマ」についての理解は一面的に過ぎる。私たちは放射線を恐れるだけでなく、この時代を作ってきた勢力や私たち自身と正面に向き合って闘わなければならなくなっている。斎藤氏の締めくくりは、物書きの戯言と感じてしまう。

2012-01-25 01:23:40
高岡 滋 @st7q

⑫トラウマを作るのは危機だけでなく、孤立である。そしてトラウマは、まず、闘わ(闘え)ない人に向かって襲いかかってくる。私達は、どんな危機にあっても人間は自分の尊厳を示しうることを知るべきであるし、国民のトラウマを最小限にするため、多くの人々が共同できるよう、努力することが必要。

2012-01-25 01:24:52
高岡 滋 @st7q

⑬斎藤氏の「リスクによる連帯」、「リスクによる分断」という言葉は空疎。それは、彼の文章からは、彼がその中の参加者の一人ではなく、傍観者に過ぎないとしか読めないからである。そんな人に、今危機に陥っている人間を前にして「生死観」だの言って欲しくないと思うのは当然だろう。

2012-01-25 01:25:17
高岡 滋 @st7q

⑭今が「生死観」を「語る」ときだろうか。私にはそんなことは出来ない。生死に直面した私たちが連帯すべき時なのだ。生死の分かれ目にある私たちが、その責任者である国と東電に、今と将来の「生死」の責任をたたきつけるのがまずやるべきこと。

2012-01-25 01:28:39
高岡 滋 @st7q

⑮斎藤氏は、まず、放射線に関する既知の情報を具体的に知り、「分かっていない」事の意味を深められることだと思う。誰にも間違いはある。自分も脱原発派だというのは慰めにならない。そして、人間の多様なあり方と可能性について真摯に考えていただければ、大きな意味があるのではないだろうか。

2012-01-25 01:33:18