
佐々木隆治『マルクスの物象化論 ~素材の思想』 について

佐々木隆治『マルクスの物象化論』:第一部ではマルクスの『ド・イデ』における「唯物論的方法」確立と哲学批判が展開されている。単に現実を「指差す」啓蒙主義ではなく、転倒の必然性を社会構造から解明するための「構え」としての唯物論である。廣松やアルチュセールの誤謬が真に明らかとなる。
2012-01-27 23:00:18
@koheisaito0131 素人質問をすいません.形態ではなく「素材」というキーワードに惹かれています.これは例えばジジェクがフロイト的フェティッシュとMの価値形態を形式の秘密として読んでいることへの批判という側面もあったりするんですか? 私にも役立つ本のような気がしてます.
2012-01-27 23:28:37
@schizoophrenie 『崇高〜』の話でしょうか?Zが論じている『資本論』「価値形態論」の箇所では、マルクスは素材的次元を徹底的に捨象して、まさに商品生産社会における形態的論理のみを扱っているので、形態の秘密として読むべきであり、ジジェクの批判とはいえないかもしれません続
2012-01-27 23:33:45
@schizoophrenie マルクスはそれを「貨幣形態の謎」と呼んでいます。ただ、そのことはMが形態のみを扱ったということではなく、むしろ労働者の生活や自然環境などの素材的次元に大きな関心を寄せていたから形態の論理をまず分析したのだというのが佐々木さんの主張です。
2012-01-27 23:37:21
@schizoophrenie 価値という形態が資本という独立した主体になることで、形態の論理が素材的な次元を再編成するようになるのですね。つまり、金が貨幣になり、物神崇拝の対象になったり、労働者が価値の源泉として生活が壊れるほどに搾取されたりするわけです。
2012-01-27 23:39:58
@koheisaito0131 ありがとうございます.私がさいきん考えていたハイデガー決断主義とラカン的倫理の話とアナロジーをなしそうで面白いです(決断は一定の形式に従うことであるが,その決断がなされるには対象=素材が必要である,と)
2012-01-27 23:41:02
@schizoophrenie ただ形態的論理は価値の増殖だけに関心を向けるため、素材的次元に固有な論理とは様々な矛盾をきたすようになります。この矛盾の分析こそがマルクスの資本主義批判の中核になるものであり、晩年のマルクス理解にもつながる「導きの糸」になると書かれています。
2012-01-27 23:42:08
@schizoophrenie そのような新しい関心がおありなのですね!面白そうです。価値も素材的担い手がないと存在できませんが、その素材というのはあくまでも形態の意のままになるものではないので、そこに矛盾が生じてくるといった感じです。
2012-01-27 23:44:40
佐々木隆治:マルクスの物象化論―資本主義批判としての素材の思想 http://t.co/X4eKhKOx がとても面白い本だということを @koheisaito0131 さんが紹介してくださいました.形式的論理がいかに物質的対象と内在的な関係を持っているか.興味のある方はどうぞ.
2012-01-27 23:47:16
ええ、ただ当該の本は博士論文がもとになっておりなかなか難しいため、注意であります。そのため内容に関する質問は私が承っておりますw
2012-01-27 23:51:01
ポール=ロラン・アスン:フェティシズム http://t.co/5nBO15OS ちなみに精神分析の物象化=フェティシズム論はこの本が総説的です(しかも安い).アスン教授はパリ7の博覧強記の分析家.著書多数.
2012-01-27 23:54:51
『資本論』は資本家による労働者の隠れた「搾取」を暴いたという解釈が今でも一般的だが、佐々木隆治『マルクスの物象化論』を読むと、マルクスの関心は労働者に真理を伝え、啓蒙することではなく、特定の社会的諸条件下における人々の「振る舞い」が、資本や賃労働の形態を必然化する構造そのもの。
2012-01-29 22:37:41
「搾取」という問題設定からは、資本家が生産手段を「所有」しているという「所有関係」に基づく解釈しか出てこず、搾取なき公正な「配分」をせよ、という要求しか出てこない。そうではなく、労働者がいかなる様態で自己の客観的な再生産の条件としての生産手段に関わっているかが問題なのである。
2012-01-29 22:44:09
つまり、問題は「搾取」「所有」「分配」ではなく、「生産」であり、だからこそ、生産諸条件に対する異なる関わり方を可能にするアソシエーション理論がマルクスの変革論の中心に据えられるのだ。搾取隠蔽論のような問題構成からの断絶は、『ド・イデ』における「新しい唯物論」に基礎付けられている。
2012-01-29 22:47:08
以上、今日の宣伝でした笑 アマゾンは在庫切れのようですので、『マルクスの物象化論』のご購入はこちらから。 http://t.co/K278OVHj
2012-01-29 22:49:14また別の日

ジジェクは現代資本主義のイデオロギーをマルクスの有名な文章をひっくり返し、「人は知っている、にもかかわらずそれを行う」とした。しかし、ジジェクの言っている事はマルクスの物象化論と矛盾しない。結局、価値の次元、物象化の必然性とは意識の次元に関わらない客観的な社会構造だからである。
2012-02-15 16:33:38
このことを佐々木隆治の『マルクスの物象化論』は、「商品語の論理」として展開している。商品生産社会において、労働が価値として現れる必然性を私的労働という人間の歴史的営為から説明することで、人間の無意識の行為が価値の客観的構造を生み出す仕組を解明する手口は見事としか言いようがない。
2012-02-15 16:37:22
その無意識の行為が織りなす物象化の現れの次元が、人間の意識へと跳ね返ってくる際に、人間は価値の論理に合わせた欲求や振る舞いを今度は「意識的に」行うようになる。意識していようがしていまいが、貫徹する力に適応しようとするのだ。それがジジェクの言っている先の文であり、「人格の物象化」。
2012-02-15 16:40:02
価値の論理に合わせて、人間の欲求が変容され、さらには自然なども含めた「素材の次元」が資本主義の論理へと包摂、再編成されていく。マルクスはこの「素材」に着目し、労働者の生のみならず、知、共同体、農業、エコロジーなど人間と自然を包括する「素材変換」の論理を明らかにしようとしたのだ。
2012-02-15 16:44:34