カール（うすあじ）への愛について

@cihcugadum

これからカール（うすあじ）についてつぶやきます。後で消すのでタイムラインを散らかすことについて、しばし御了承ください。

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小さな頃から、私は陳列棚を彩るジャンクなスナック菓子の中から、かつおと昆布の風味を味わえる子どもだった。スーパーでひとつだけ好きなものを選ぶとき、私は迷わずそれを選んだ。「歯につくからイヤ」という子どもじみたことを言わない。歯磨きをしたらいいじゃない、それが私とカールの約束。

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仕事をしていた母は3時のおやつをたいてい用意してくれていた。主にカール、ときどきポテチ。余談だがルイジアナというギザギザのポテトのことも愛していたがそれはまたいつか語ろう。とにもかくにも、私とカールとの蜜月は続いた。カールおじさんは、いつも私を見守ってくれている気がしたものだ。

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そんなとき、事件が起こる。あれは小学校6年生くらいだっただろうか。定期検診で歯医者さんが恐るべきことを母に告げた。「矯正した方がいいかもしれません」私の歯は一本一本が大きく、歯茎の長さは短い。これから生えてくる上の歯は間違いなく重なるように生えてくる。乱ぐい歯になってしまう、と。

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12才にもなっているにも関わらず、永久歯になっていない元気いっぱいの乳歯を3本抜き、奇妙な矯正器具をがっちりつけることになったあの日。痛いよりも痒かった。痒いところを掻きむしれることは幸福なんだと知った、あれはそう夏の日。

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今も矯正というものにはお金がかかるが、まだ矯正の走りだった当時の比ではないだろう。母は可愛い娘を想い並々ならぬ大枚をはたいたに違いない。幼心に申し訳ない気持ちでいっぱいになった。「お母さん、私の歯がごめんね」と、私は母に言ったらしい。健気だが、責任転嫁も甚だしい子だ。

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私はカールと決別した。矯正をしたことのある人は分かると思うが、あれはいろんな物体を吸い寄せる代物だ。ネギやニラなどは避けて通ったし、カールなんてもっての他である。虫歯になって余計お金がかかっては、ほんとに申し訳ない。カールおじさんとのお別れは、あっさりとしたものだった。

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それから数年経って、矯正器具をはずし自由の身となった歯とともにカールおじさんとの再会。この物語を書いていて言うのもなんだが、正直覚えていない。だから、つい最近の話をしていきたい。

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カールに溺れるようになったのは、ここ数年だったと思う。華やかで色とりどりのスナック菓子のなかで、ポテトチップスがデザインを変えるなかで、いつまでも昔のままで待っているカールおじさん。ユーミンの『卒業写真』の歌を彷彿とさせた。卒業写真のあの人はそのままだったから～♪

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それからはカール一色だった。いや、もちろん時々ポテトチップスに浮気はしたけど、本命はお前だけさ。ごめんよ、毎日ステーキじゃあきるだろう？そういうことなんだ。というセリフを言い訳に使いながらカールとの時を過ごしてきた。しかし、そんな俺がバカだった。

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なぜかカールはあまりお店に置かれなくなった。今さらだが、私にとってのカールは「うすあじ」だ。うすあじ一辺倒だ。だが、コンビニでもスーパーでも出会うのはチーズ。チーズ。チーズ。アンパンマンに出てくる犬の名前は？そう、チーズ。

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復刻版カレー、メキシカンなんとか、そしてチーズ。店で出会うのはやけに派手な服を着せられたカールおじさん。ふざけるな、カールと言えばうすあじ。うすあじに決まってる。麦わら帽子と野良着のカールおじさんはどこ？かつおと昆布の風味はどこ？

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私はスナック菓子の海で迷う、いたいけなスイミーだった。ひとりぼっちな気がした。

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しばらくはカールうすあじ推進委員会として、布教活動も行った。コンビニで「カールうすあじないんですか」友人に「カールとは…云々」時にクールに時に熱くカールうすあじを広める努力を地道に行った。ローラー作戦だ。チーズが君臨するカール政党の解散総選挙は近い、そう信じていた。あの日まで…

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私は出会った。いつもの布教活動の傍らで、ふと目が合った「堅あげポテト（うすあじ）」に。

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あれが運命だとは思いもよらなかったし、今でもカールうすあじのことを思うと胸が張り裂けそうになる。でも、まぎれもなく私はカールと別れざるを得なかった。食感もその味もカールとは全く異なる「堅あげポテト（うすあじ）」しか見えなくなっていたから。

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今でもときどき思い出す。カールとの日々。カールとの約束。付き合いたての堅あげポテトはそんな私を黙って見守ってくれている。時が経って、またカールのことを笑って話せるようになったらいいね。あんなにも愛したカールとのこと。そう言って、私のそばで、パリパリと優しい音を立てている。完