「ピアノマンで物語を書く」まとめ
- jemibiozoms
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そういえば今日の友達の試験、ビリージョエルのピアノマンを聞いて物語を書きなさい(歌詞そのままはダメ、でも歌詞と矛盾があってもダメ)というよくわかんないけどとても楽しそうなのがあったのでどなたかチャレンジしてみてください、試験時間は一時間です。
2012-01-30 16:40:05どうしてこの場所に来てしまったのか。僕には他に行くあてがなかったからだ。第一扉が開いている保証だってなかった。なのに僕はこうしてここに来て、薄汚れたヤニまみれの壁に挟まれたバーの片隅の、古ぼけたピアノの椅子に腰掛けている。土曜の夜9時といったって、もう客なんか居るはずもないのに。
2012-01-30 18:13:46僕は鍵盤を叩く。僅かに調律のずれた音が響く。今夜は上客が集まってるぜ、と笑ったマネージャーはゾンビどもに食われる前にビルから飛び降りたらしい。飲んだくれの爺さんの幻影にせっつかれた気がして僕はあの古い歌を今夜の曲に選んだ。あんたピアノ弾きだろ?弾いてくれ、何か聴きたい気分なんだ。
2012-01-30 18:15:15鍵盤を叩く、音が響く。このあたりで生き残っているのはもう僕だけなのかもしれない。目を閉じる。こんな事になるまでは気にもしていなかったけれど、僕はきっと此処が好きだったのだ。ほら、こうしていればきっとみんな帰って来る、いつものように、ひとりまたひとりと、扉をくぐって、帰って来る、
2012-01-30 18:15:49鍵盤を叩く、音が響く、ああ、あれはジョンか、ウエイトレスもいる、鍵盤を叩く、音が響く、足を食いちぎられた、ペダルが踏めなくなったが構わない、弾いてくれよ、今夜は歌ってくれ、わかってるさ、ぼくの場所はここだ。首筋を噛み砕かれた、もうすぐ曲が終わる、僕は最後のフレーズを……
2012-01-30 18:16:19おしまい!ちなみにピアノマン対訳付き動画→ http://t.co/Jb9g40NG こちらを参考にしました(´ω`*)
2012-01-30 18:17:11@sousakuTL (R.1) 閑散とした道を風にもてあそばれたゴミが撫でていく艶やかな夜。場末の酒場は紫煙に塗れ、ピアノの旋律と歓談のざわめきが絡み合って転げ落ちていく。カウンターを背に、グラスを手にした男が、ピアノの上に組んだ腕を置いた。
2012-01-30 21:47:35@sousakuTL (R.2) ぼんやりとした仄暗い光に、濃淡をゆらめかせながら紫煙が漂っていく。唐突に音楽が断絶した。腕を軸に身を傾げ、男はピアノ弾きに声をかける。「兄ちゃん、どうしてこんなとこにいるんだ? あんたの腕なら、大ホールで演奏するも、夢じゃないだろうに」
2012-01-30 21:49:02@sousakuTL (R.3) 呂律の回らない、酒に焼けた声が床に落ちた。ざらついた音がかたどった意味に、ピアノ弾きは苦笑する。「それこそ、酒の見せる夢ですよ」男は豪快に笑った。昼を忘れさせる安酒は、酩酊によって美酒となり、二日酔いと引き換えに一時の夢心地を与えてくれるのだろう
2012-01-30 21:50:42@sousakuTL (R.4) 鷲掴みにしたグラスを持ち上げ、男は酒を舐める。「あんたはどこかへ行きたくないか?こんな穴倉、抜け出して、さ」ピアノ弾きは曖昧に首を傾げた。「あなたは?」「金でも石油でも掘り当てて、いつか、この街を出て行くさ。
2012-01-30 21:52:58@sousakuTL (R.5) 身ぐるみ剥がされて転がりこんできた野良犬だ。骨付き肉をくわえて抜け出してやるよ」男は肩を揺らす。「あんたは?」ピアノ弾きは肩をすくめた。薄い身体を包むくたびれたスーツには煙草の匂いが染み付いている。
2012-01-30 21:54:10@sousakuTL (R.6) 小休止にと酒を舐め、ピアノ弾きは窮屈な店内を見渡した。「ここは、居心地がいいので」雑然と、まとまりもとりとめもなく、酒だけで繋がった人々が店内にはひしめいている。話をしていても会話をしているわけではなく、相手の顔を目に映してはいても見てはいない
2012-01-30 21:55:18@sousakuTL (R.7) 騒音と薄暗さに塗り潰されて、それでも楽しい酒が酌み交わされていた。「ひとりひとりがばらばらで、孤独で、無関心で。それでも、酒と煙草に吸い寄せられて、ひとつどころに集まっている。ここでは、お喋りも他人もピアノも、なにひとつ繋ぎとめられることはない
2012-01-30 21:56:27@sousakuTL (R.8) あってもなくても同じ。それが、私には、とても心地よいんですよ」「寂しい奴だなぁ」「優しいじゃないですか」 「うん?」「在るだけでいい。在ろうとしなくていい。それを許すこの街は、とても優しいですよ」
2012-01-30 21:57:45@sousakuTL (R.9) 男の顔から表情が抜け落ち、やがて、呆れたように唇を歪ませる。ピアノから腕を放し、肩越しに背後を見遣りながら、男はグラスを傾けた。「一曲、弾いてくれ」「ご希望は?」 「あんた、ピアノ弾きだろ? 何でもいい、任せる。あぁ、でも、懐かしい曲がいいな」
2012-01-30 21:58:57@sousakuTL (R.10) 淡く微笑しながら、ピアノ弾きは瞼を落とす。「かしこまりました」吸い寄せられるように、ピアノ弾きの指は鍵盤に触れた。この窮屈な酒場が世界のすべてでもあるかのように、男はざわつきに身を委ねる。
2012-01-30 22:00:23@sousakuTL (R.11) ぼやけた光と酒の匂い、紫煙と無関心さに覆われたささやかな夜に、ピアノの音が弾けた。/ピアノマンSS
2012-01-31 23:24:17@sousakuTL 【ピアノマン】「何でこんな所に居るんだ?」土曜の夜9時。それだけでも浮わついていたのに、あの時と同じことを言われて思わず手が止まった。鍵盤から目を上げると、初めて見る客がチップを入れていた。軽く会釈を返し、内心ため息をつく。彼じゃない。
2012-01-31 13:47:27@sousakuTL 『何でこんな所に居るんだ?』『腕もいいが、それより声が特にいい』『なぁ、どうして?』ある土曜の夜、休憩しようとカウンターの端に腰掛けた途端、隣に現れた男が矢継ぎ早にそう言った。目と言葉に力のある若い男だった。
2012-01-31 13:49:52@sousakuTL その時は酔っているのかとそれ相応にあしらった。でも彼は、店じまいまでずっとピアノに近い席に座って僕の歌を聞いていた。次の日も、その次の日も。休憩の度に歌を誉められ、酒を奢られ、いつしか友のような仲になっていた。
2012-01-31 13:50:57@sousakuTL そんなある日の夜。雨で客が少ないからと、ピアノを離れて彼と話している時だった。カウンターの上でお気に入りの曲をなぞっていた僕の手に手を重ね、彼は言った。「この町を出て俺の所に来てくれないか?」「どういう、」意味かと問おうとした口は塞がれた。
2012-01-31 13:52:29@sousakuTL 「あんたの声が、あんたが、好きなんだ。だから、」そこでジョンがカウンターに戻ってきて、僕は慌てて手を引いた。彼の目は真摯だった。その目から逃げたくて俯いていると、彼は何も言わずに席を立って行ってしまった。次の日、彼は店に来なかった。その次の日も、その後も。
2012-01-31 13:55:21