斎藤清二先生の「心身相関的悪循環について」「ライバルを心身症にする方法」

@SaitoSeiji 斎藤清二先生による連続ツイート。 裏テーマは「心身相関的悪循環を解消する方法」
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斎藤清二 @SaitoSeiji

⑫通常、心身相関的な病態の場合、不快な気分を増強させるものでなければ、何をしても特に状況を悪くすることはない。しかし、医療者は『あれを食べるな』とか、『無理をするな』とか言って、具合が良くない時に、益々生活を制限することが多い。その多くは根拠のないことである。

2012-02-10 21:59:51
斎藤清二 @SaitoSeiji

⑬「ライバルを心身症にする方法」には、さらにとっておきの方法があるのだが、ちょっと長くなっているので、本連続ツイートはここでいったん小休止としたい。最終章開始まで、今しばしお待ちください。

2012-02-10 22:04:02

再びちょっと休憩。


斎藤清二 @SaitoSeiji

「ライバルを心身症にする方法」の続編(最終章)を連続ツイートします。なお、この連続ツイートの趣旨は、「相手の『不快な気分』を誘発するようなコミュニケーション」を意識化することにより、心身相関的悪循環を後押しすることを防止することに役立てるということなので、誤解なきようお願いします

2012-02-11 20:36:26
斎藤清二 @SaitoSeiji

①「ライバルを心身症にする方法」の6番目で、おそらく極め付きの方法について述べてみたい。それは『実行不可能なアドバイス』をするということだ。『実行不可能なアドバイス』とは、「100mを8秒で走れ」というような、いわゆる「無理難題」とは異なる。

2012-02-11 20:40:56
斎藤清二 @SaitoSeiji

②『実行不可能なアドバイス』とは、一見簡単に実行できそうなのに、やってみようとすると絶対にできないし、アドバイスされた当人も、実行不可能だということに気がつかないようなアドバイスだ。された方はわけがわからないまま混乱状態になって、結果的に状況は際限なく悪化する。

2012-02-11 20:44:53
斎藤清二 @SaitoSeiji

③一番分かりやすい例をあげよう。もしあなたのライバルが「お腹がしょっちゅう痛くなるの。どうしたらいいかしら?」とアドバイスを求めてきたら、「気にしないようにしなさい」とアドバイスする。「気にしてはいけないよ」「気にするとよけい悪くなるよ」などの表現を用いればより効果は大きくなる。

2012-02-11 20:52:50
斎藤清二 @SaitoSeiji

④このようなアドバイスに対して、もし真に受けて『気にしないこと』を実行しようとすると、たいへんなことになる。人間というものは、何かを意識的に努力して『気にする』ことはできるが、努力して『気にしない』ことはできないように作られている(生物学的根拠が証明されているわけではないが・)。

2012-02-11 20:59:50
斎藤清二 @SaitoSeiji

⑤痛みなどの症状や、イライラの対象などは、『気になる』のであって、『気にしている』のではない。もし、意識的に『気にしないように』しようとすれば、ほとんどの場合、そこに注意が集中するので益々気になってしまう、という悪循環になる。

2012-02-11 21:01:37
斎藤清二 @SaitoSeiji

⑥不当なアドバイスに対して腹をたてることができる人はまだ良い。多くのまじめな人は『気にしないようにしなければいけないのに、どうしても気にしてしまう。私はなんてだめなんだろう』と思いこんで、益々不快な気分になる。このように『気にするな』というアドバイスは実行不可能である。

2012-02-11 21:03:46
斎藤清二 @SaitoSeiji

⑦同じように実行不可能なアドバイスの例をいくつか挙げておく。例えば以下のようなものがよくある例だ。『もっとリラックスしなさい』『気持ちを明るく持ちなさい』『病気を受け入れなさい』。これらをまじめになんとかしようとすると、例外なく『出口なし』の状況に追い込まれる。

2012-02-11 21:09:28
斎藤清二 @SaitoSeiji

⑧これらの言葉は『自分からそうしよう』と思える時は、とても役にたつし、効果もある。しかし、同じことを他人から言われると効果は正反対になる。『そうか、今の自分じゃあだめなんだ。でも変えようと思ってもできっこない』という気分になる。この嫌な気分の正体はダブル・バインドである。

2012-02-11 21:12:21
斎藤清二 @SaitoSeiji

⑨最後に、極めてつけの『実行不可能なアドバイス』の例を挙げておこう。それは次のようなものである。・・・『自発的に努力しなさい』・・・今までの人生において、家でも、学校でも、病院でも、こう言われ続けてきた人は多いのではないだろうか?

2012-02-11 21:19:00
斎藤清二 @SaitoSeiji

⑩『自発的に努力しなさい』と言われたとたんに、絶対それはできなくなってしまう。もし努力しなかったら、もちろんアドバイスは実行できなかったということだ。努力したとしてもそれは他人から言われてしたのだから『自発的努力』ではないということになる。どちらにしてもアドバイスは実行できない。

2012-02-11 21:24:41
斎藤清二 @SaitoSeiji

⑪以上で『ライバルを心身症にする方法』についての紹介を終わる。それでは、心身相関的悪循環を解消するにはどうすれば良いのだろうか?おそらくそれは、簡単な場合もあるしそうでない場合もあるだろう。原則としては今まで考察したことの反対をすればよいということになる。

2012-02-11 21:30:16
斎藤清二 @SaitoSeiji

⑫まとめて言うと『相談者の気持ちに共感しながら丁寧に傾聴する』『適切な病態の説明をする』『継続的に援助することを約束する』といったことになる。言ってしまうとあたりまえのことばかりだが、いつもこれを実行するというこことは、そう簡単なことではないだろう。

2012-02-11 21:33:14
斎藤清二 @SaitoSeiji

⑬おそらく私達は、知らないうちにたくさんのライバルをけ落としながら、今まで生きてきたのだと思う。私達はまずそれに気が付くことが大切だと思う。自分が悪循環の後押しさえしなければ、人間というものは自分自身の持っている力で、それなりの自然にあるべき状態へ戻っていくもではないだろうか。

2012-02-11 21:38:41
斎藤清二 @SaitoSeiji

以上で連続ツイートを終わります。フォローしてくださったみなさまありがとうございました。宣伝になって恐縮ですが、今回の連続ツイートの内容は、拙著『ナラエビ医療学講座ー物語と科学の統合を目指して』においても論じられています。http://t.co/riv6EH9p

2012-02-11 21:45:30
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