山本七平botまとめ/人は人に狼(ホモ・ホミニ・ルプス)

山本七平著「ある異常体験者の偏見」/アントニーの詐術/94頁以降より抜粋引用。
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山本七平bot @yamamoto7hei

①何しろ戦場では、兵士や下級幹部(率からいうとこれが最大だが)は、双方とも確かに被害者で、バタバタ殺され、手がとび足がとび、頭が変になり、病気になったり餓死したりしている。従って自分たちは被害者だから、加害者にそれくらいするのはあたりまえだと思っている。<ある異常体験者の偏見

2012-02-11 02:21:11
山本七平bot @yamamoto7hei

②だがその瞬間、自分が同じような加害者になっているのに気づかないのである。この関係は、戦場にいくと非常にはっきりした形で実に明瞭に出てくる。銃器をもった人間は、自分はあくまでも人間だと思っている。そして銃器をもっている相手は猛獣だと思っている。ところが相手もそう思っている。

2012-02-11 02:51:14
山本七平bot @yamamoto7hei

③すなわち戦場では、お互いに銃器をもち、お互いに自分は人間で相手は猛獣だと思っているわけである。 「人は人に狼(ホモ・ホミニ・ルプス)」という諺はおそらくこの関係を的確に表わしたものであろう。

2012-02-11 03:21:16
山本七平bot @yamamoto7hei

④だからみなお互いに猛獣に対するような態度で相手に接し自分は人間で相手は猛獣だと思っていても、その瞬間自分も人間でなく猛獣になっているとは思えないわけである。 従って相手を「鬼畜」といったら、そういった者も「鬼畜」になっていると考えてまずまちがいない。

2012-02-11 03:51:11
山本七平bot @yamamoto7hei

⑤いわば、「鬼畜」「鬼畜」ということによって自分が「鬼畜」になってしまうから、撲ったり、蹴ったり、上下座させたり、殺したりを、いとも平然と正義感にあふれて、堂々とできるようになってしまう。

2012-02-11 04:21:08