これは成長でも英雄でもない-ギリシャ神話の英雄ペルセウスと新劇場版「破」の碇シンジの比較検証-

ユング=ノイマン的解釈における「英雄たる条件」の解析。果たして本当に碇シンジはスーパーヒーロー化したのか?本当に何か変わったのか?英雄神話の模範ともいえるペルセウス神話と比較しつつ検証する。この後に続く展開は関係なく、現段階で分かっていることだけを元にして分析します。(未完・続く) ※このトゥギャッターが発端となってツイートされたもの。 『ギリシャ神話的観点からみた旧作エヴァ-碇シンジ=テセウス?- 』 http://togetter.com/li/26316
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アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

「破」のシンジが、使徒の囚われ身になったアスカを救い出せなかった(というか製作者の発言からして、新キャラを増やしつつ、使用用途がないから犠牲に捧げたとか残酷極まりない)ことと、レイに関してほとんど飲み込まれる勢いで突っ込んだことはユング=ノイマン的解釈においては致命的である。

2010-05-29 13:12:29
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

新劇「破」において、シンジがアスカを救わず、レイに関してはほとんど飲み込まれる勢いで突っ込んだ事が熱血と受け取られ、歓迎されている向きがあるようだが、あのような行為は台詞もそうだが英雄たる条件を失っている。ペルセウス神話と比較することでそれが示せると思うので後ほど提示してみたい。

2010-05-30 03:01:19
machinan @machinan

ペルセウス神話!おもしろい!ぜひ、詳しく解説してほしいです…… RT @Abraxas_Aeon 新劇「破」において、シンジがアスカを救わず、レイに関してはほとんど飲み込まれる勢いで突っ込んだ事が熱血と受け取られ、歓迎されている向きがあるようだが、あのような行為は台詞もそうだが英

2010-05-30 21:30:10
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

@machinan どうもです~。実は今まとめているところだったりしますよ~w。

2010-05-30 21:37:15
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

英雄神話における、英雄の「龍との戦い」の目的は、ほとんどいつでも囚われの女性[=得難い貴重な性質]を解放することである。このような神話における解放の対象となる女性の例としては、グノーシス神話のソフィア、錬金術におけるアニマ・ムンディ、ギリシャ神話のアンドロメダなどが挙がる。

2010-05-31 01:16:01
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

こうした囚われの女性の「得難い貴重な性質」は、神話・儀式・宗教・秘文・メルヘン・伝説・文学において、金・宝石(特にダイヤモンドや真珠)・命の水・薬草・不死の妙薬(エレキシル)・賢者の石・などの無形の価値をもった「宝物」として象徴化されることが多い。

2010-05-31 01:16:21
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

英雄の「龍との戦い」の解放の対象となる囚われの女性は、客観的にはこの世の実際の女性と考えることが出来る。この神話においては、男性-女性関係の問題、その困難と解決が模範として描き出され、それ故このモチーフは誰によっても単純に外的な出来事として理解される。[外向型]

2010-05-31 01:17:15
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

また同時にこの神話のモチーフは、主観的には内向型の人の関心の中心である魂という内奥の出来事が神話の象徴体系の中に写し取られたものでもある。この囚われの女性は、超個人的な内的存在、即ち人間の内面の集合的無意識、魂(ゼーレ)そのものである。[内向型]

2010-05-31 01:17:47
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

この神話において重要なのは、英雄[実際の男性+男性的自我]の、囚われの女性[実際の女性+魂]に対する関係であり、囚われの女性[実際の女性+魂]を得るための戦いにおける冒険と危険、及び救出をもたらす奪取という二重の構造である。

2010-05-31 01:18:44
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

魂の内奥が強調されるか、外的客体としての世界が強調されるかは、もちろん常に無意識的なままである。魂という内奥で起こる出来事でさえ外部に投影され、外的現実とこの外のものが心の中で生命を与えられたものとが客体において統合されて一体となっている如くに体験される。(ノイマン)

2010-05-31 01:19:11
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

囚われの女性を支配するのは怪物であり、それは元型的なものとしては龍、元型的だが個人的な特徴をも帯びているものとしては魔女あるいは魔法使いとして、個人的なものとしては意地悪な父親あるいは母親として現れる。

2010-05-31 01:19:46
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

英雄の「龍との戦い」は、この「囚われの女性を支配する怪物」に象徴される母元型と父元型の双方[=両面的なウロボロス龍・拘束する諸力]との対決である。ではこの「龍との戦い」の目的である「囚われの女性の解放」、即ち彼女を支配する怪物を打ち倒すことは何を意味しているのか。

2010-05-31 01:20:19
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

英雄の「龍との戦い」の中で男性が変化すると、男性が女性に対して持つ関係も変化する。この変化は龍の猛威から囚われの女性を解放することに、即ち恐ろしい母の像から囚われの女性を救い出すことに象徴されている。これはユング=ノイマン的に言えば、母元型からのアニマの分離といえる。

2010-05-31 01:21:04
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

成人男性が彼と同質同年代の女性の伴侶と〈聖なる結婚〉によって結ばれる。ここで初めて男性は成熟し、子を作ることができるようになる。この男性は自ら父親として自らの子の養育と責任を引き受け、女性と継続的な関係を保ちながらあらゆる父権的文化の核である家庭構築、更には王朝や国家を建設する。

2010-05-31 01:21:35
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

呑み込む太母に対する少年の恐怖も、ウロボロス的な善き母に頼りきった幼児の幸福も、男性が女性を体験する基本的形態だが、男性が女性と現実的な関係を結ぼうとするならば、それは唯一の形態であってはならない。男性が女性の中の「与える母」の部分のみ愛する限り彼は幼児の域を出ない。(ノイマン)

2010-05-31 01:23:00
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

また、男性が女性を去勢する原子宮であるとして恐れるなら、彼は女性と結合することも、彼女に子を生ませることもできない。英雄によって女性の恐ろしい面のみが殺されるなら、女性は解放され、それと共に彼女の至福を与える多産な面も解放され、このよい面によって彼女は男性と結合する。(ノイマン)

2010-05-31 01:24:14
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

囚われの女性は、もはや高踏的な超個人的な元型ではなく、また無意識の圧倒的な充溢や力でもなく、男性が個人的に結合しうる人間的な存在・伴侶となっている。この女性は更に解放され、救助され、救出されねばならない何者かであり、また男性が男性的であることを証明することを要求する。(ノイマン)

2010-05-31 01:26:15
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

この女性が期待するのは力、才知、尽力、勇気、保護、闘う姿勢である。女性の救済要求は多くある。即ち牢獄の破壊、殺したり魔法をかけたりする母性及び父性的な威力からの救済、阻止や恐れを表す茨や炎の垣根の突破、鎖に繋がれてまどろんでいる女性性の解放、無気力な鬱状態からの救出等(ノイマン)

2010-05-31 01:27:09
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

しかし解放されるべき囚われの女性は常に個人的であり、それゆえ男性の伴侶になりうるが、それに対して克服されるべきものは超個人的な諸力であり、これは客観的には囚われの女性を拘禁し、主観的には英雄が女性と関係するのを妨げる。(ノイマン)

2010-05-31 01:32:21
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

囚われの女性が救済されるべきものとして、龍が殺されるべきものとして、登場する神話の形態と並んで、もう一つの神話形態がある。それは英雄の怪物殺害が、女性の援助によって可能になるという神話形態である。この女性は、呑み込む母としての龍に対立する女性である。(ノイマン)

2010-05-31 01:33:46
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

男性の原始的心理の特徴は、近親相姦的な家族結合を強めようとするリビドーの傾向であり、この傾向をユングは近親リビドーと名づけている。つまり、ウロボロス内での「神秘的融即」という根源状態が、最も近い家族関係の原初的な結合に留まろうとする惰性の形をとって表れるのである。(ノイマン)

2010-05-31 01:49:50
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

この家族関係は個人に投影される場合には、母や姉妹との関係となり、また彼女達との象徴的近親相姦は、ウロボロス内への固着と関係するために、個人と自我を無意識の中に拘留する「下なる女性性」との関係という性格を持つ。(ノイマン)

2010-05-31 01:55:25
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

英雄は、囚われの女性を解放することによって自分自身をも族内婚的な近親リビドーの拘束から解放し、「族外婚」へと向かう、即ち他所の女性の救出的な奪取に乗り出すのである。このアニマの女性的な異質性は常に「上なる女性性」の性格をも持つ。(ノイマン)

2010-05-31 02:20:17
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

というのはアニマは救出される囚われの女性としても援助する女性としても「上なる女性性」として、英雄の「上なる男性性[=光・目・意識・精神(ガイスト)]」と関係付けられるから、即ち英雄の自我-意識の活動と関係付けられるからである。(ノイマン)

2010-05-31 18:02:57
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

囚われの女性と女援助者の双方、あるいはそのどちらかを体験することによって、母達に属する危険な怪物的な無意識世界から一つの領域が解放される。それはゼーレ・アニマであり、英雄[=意識の自我領域]の人間的-女性的伴侶をなす領域である。

2010-05-31 18:03:20
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