シージ・トゥ・ザ・スリーピング・ビューティー #5
(ニンジャスレイヤーは倒れ込んだ。ツヨイ・スリケンは狙い過たず飛び、ワイルドハントの心臓を後ろから撃ち抜いた。「サヨ!ナラ!」ワイルドハントは爆発四散した。ミニガンの掃射。ニンジャスレイヤーの身体に数発の弾丸が着弾。直後、その射線上に武装霊柩車がドリフトして盾となった。 )
2012-02-17 22:55:11(「ヌウ……ウ」ネズミハヤイの陰となったニンジャスレイヤーは、震えながら手をついて起き上がった。助手席ドアが自動でわずかに開き、外部マイクを通してドライバーのバリトン声が発せられた。「深夜は割増料金だぜ、お客さん。それでも乗るかい……」)
2012-02-17 22:55:22暗い海をクロールし、屋形ガンボートのひとつに乗り上げたアブサーディティは、橋の上で起こった壮絶な出来事を無感動に見上げた。そしてIRC音声通信の回線を開いた。「ワイルドハント=サンとインペイルメント=サンが死んだ。……ああ、ニンジャスレイヤーだ」 1
2012-02-17 22:59:08「……いや。当然俺は、殺せたら殺す気でコトを進めていた。ま、最も意外なのは、非ニンジャが俺の爆弾を生き延びて、奴を助けに現れた事だ」彼は特に意外でもなさそうに、淡々と言うのだった。「わざわざ死体をあらためる必要も無いと思えたがな。どのみち時間も無かったが。フフフ」 2
2012-02-17 23:05:18「アブサーディティ=サン、アバーッ!?」操舵室から甲板へ彼を迎えに現れた操舵ヤクザを、アブサーディティはひと蹴りで殺した。ハイキックで首の骨を折ったのだ。その一秒後に彼は、甲板でアサルトライフルを持ち警戒するクローンヤクザに背後から近づき、こちらは手で首の骨を折って即死させた。3
2012-02-17 23:11:11「……ああ、気にする事は無い」アブサーディティはIRC通信機に呟く。「ここは潮時だ。また後ほど」彼は回線を切断した。 4
2012-02-17 23:17:46「シバカリ=サンは……回線がつながらぬという話だったが」車内へ転がり込んだニンジャスレイヤーはなおもチャドー呼吸を深々と繰り返しながら、ドライバーへ尋ねた。「ああ。おっしゃる通りで」逆モヒカン・ヘアーの男はハンドルを切り返しながら低く言った。「ちょっとしたスパイスってとこ……」6
2012-02-17 23:24:09カカカカ、カカカカ。車体フロント部、超硬質フロントガラスに装甲車の銃撃が跳ねる。『攻撃を受けています』ダッシュボードのLEDが点滅、警告した。「ああ。もう少し辛抱してくれよ、レディ」ドライバー、ミフネ・ヒトリ……通称デッドムーンは、まるで通り雨にあった程度のテンションで呟いた。7
2012-02-17 23:37:09「シートベルト締められるかい」ニンジャスレイヤーは言われた通りにした。彼は一度チャドー呼吸を止め、デッドムーンを見た。そして言った。「感謝する。デッドムーン=サン」「悪いが今回、ルートは俺のお任せだ」デッドムーンはアクセルを踏み込む。そして後部ロケットに着火!BOOM! 8
2012-02-17 23:48:02強烈なGを受けながら、デッドムーンはダッシュボードの「跳び」のボタンを押す。車体下部のスプリング機構が働き、銃弾を受けながら突入するネズミハヤイは、あわや装甲車バリケードへ衝突するかという寸前で跳躍した。と同時に車体からウイングが展開、グライダーめいて滑空!包囲車両為す術無し!9
2012-02-17 23:57:59「チャとオカキのサービスはもう少し待ってくれよ」デッドムーンは遠ざかる包囲車両をミラー越しに確認しながら言う「俺が引っ越しを余儀なくされた顛末やらを話したいのは山々……だがアンタも随分やられたね、前に乗せた時と同じかね……」「ナンシー=サンを」ニンジャスレイヤーは呻いた。 10
2012-02-18 00:05:50「包囲からは抜け出た。ニンジャが引き続き彼女を追っている」「拾って行くさ……シバカリ=サンもお戻りだ」彼はダッシュボードの液晶パネルを示した。『シバカリ=サンがオンラインな』奥ゆかしい文字列が流れて消えた。「大概しぶといハッカー=サンだ。ま、職人だな。彼女の位置情報を頂く」 11
2012-02-18 00:17:08ネズミハヤイはパラシュートを展開させつつ道路上に着地、即座に切り離し、ドリフトして何事も無かったかのように走行を再開した(ただしその背後では、進路を突然遮られたコケシトラックが急ブレーキ、荷台から大量のバイオスイカが溢れた。スイカを拾いにヨタモノ達が飛び出し、群がった)。12
2012-02-18 00:26:19「さて、近いぜ」モニタ地図の縮尺が切り替わる。「ニンジャとドンパチやってない事を祈るか」「敵は倒す」ニンジャスレイヤーは即答した。デッドムーンは彼の負傷を横目で見やり、「難儀だね……」と呟いた。「デッドムーン=サン。その後の目的地はどこかアテが?」ニンジャスレイヤーが問う。 13
2012-02-18 00:38:53「ルートは決まっていると先ほど言っていたな」「ああ」デッドムーンは頷き「消去法でそこしかない。俺のガレージも吹っ飛んだ事だし」もう一つの小型モニタに別の地図を表示させた。「ザイバツ、アマクダリ……ま、その手の縄張りの谷間って事で……ヘイブンだな。勝手に気を利かせてもらったが」14
2012-02-18 00:43:37「ニチョーム。ネオ・カブキチョ」ニンジャスレイヤーは表示を読み上げた。デッドムーンはハンドルを切った。「ま、そこはそこで問題はある……油断ならん奴が仕切ってる。不干渉主義って話だ。後でちょいと頑張らないといけない、当然ザイバツ御一行を引き連れての入場なんてNG……どうした?」15
2012-02-18 00:53:24「サイオー・ホースと言うべきかもしれん」ニンジャスレイヤーはデッドムーンを見た。彼は先日の記憶をたぐり寄せた。ザイバツ・シテンノのレッドゴリラを殺した後の邂逅を。("ニチョームの『絵馴染』にいるわ。何か困った事があったら訪ねてらっしゃい")「油断ならぬ者とは、ニンジャでは?」16
2012-02-18 01:03:48デッドムーンは片眉を上げた。「知り合いかい……」「一度会った」いや、二度。だが二度目は先方が気絶していた。数日前の出来事だ。「話は私がつけよう」ニンジャスレイヤーは言った。「頼もしいね……俺の当座の寝床もかかってる」デッドムーンが言った。「ああ、先の話は後だ。行くぜ、前」 17
2012-02-18 01:11:51ナンシーは構えていたロケットランチャーを下ろした。数十メートル先の道路上では墜落した鬼瓦ヘリが爆発炎上し、分厚い煙を噴き上げている。彼女はアイアンオトメのUNIXモニタを操作、シバカリから送信されたばかりの逃走経路指示を確認した。 19
2012-02-19 14:33:36