弊社社長によるFitEar TO GO!334の技術的な解説まとめ

FitEar TO GO!334に関するまとめ第二弾です。 第一弾はこちら http://togetter.com/li/261546 カスタムとユニバーサルについての話から製品開発の苦労やイヤーチップの話などいろいろそれつつ最後は特徴的な純チタン削りだしパーツを使ったポート部分の話題に着地します。
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須山慶太 @kindo3

まとめられているようですが、あとなんかあったかな・・・。一般的なちゃんとした企業だと、市場調査や製品イメージやターゲットがあって想定価格があって部品選定やら外部製造委託やらってなるんですが、カスタムをどうすればユニバーサルにできるかだけで、そーゆープロセスは一切無しですな。

2012-02-22 10:44:58
須山慶太 @kindo3

カスタムの良さは分かる!分かるんだけど耳型採取しなきゃなんないしその上高いしというハードルがどうすれば下がるのか。カスタムを安くするのも一つの方法ですが、製造が会社の本質なので外部委託したり国外でやったりもできず、根本的な耳型採取は相変わらず必要で何か別の方法を・・・。

2012-02-22 10:49:47
須山慶太 @kindo3

カスタムの優位性、もちろんその大きな点は耳に合わせたオーダーメイドで、耳型採取は来店以外の他の方法(自分で耳型を取って送ってもらうとか頭部CTを使ってデータ送信とか)では実現しにくい所。すでにカスタムはやってるしそれ以外となるとやはりイヤーチップを用いることになりそうです。

2012-02-22 10:53:24
須山慶太 @kindo3

イヤーチップも実は歴史があり、かなり前から補聴器や警察無線ではてるてる坊主型のタイプが広く使われてきました。知る限りでそのイヤーチップに画期的な革命を起こしたのが94年(位だったかな)、ソニーが発売したポケット型バイノーラル補聴器「TE-ST56B」。

2012-02-22 10:56:52
須山慶太 @kindo3

56Bの前には55ってちょい出力抑えめのモデルがあり、補聴器としては珍しく大型のダイナミック型レシーバーを使用することで高音質を誇っていましたが、ポイントはバイノーラルであったことなんです。外耳道の音響特性まで反映させることはできなかったのですが、大変エポックメイキングでした。

2012-02-22 10:59:51
須山慶太 @kindo3

イヤホン/マイクユニットの外側にマイクが置かれており、外耳道音響条件が付加される訳ではないのですが、耳介による方向感は集音効果はある程度期待され、実際使用すると当時補聴器とは思えない「さすがソニー」の音質。それゆえバードウォッチングのお供に使う方もいらしたようです。

2012-02-22 11:01:49
須山慶太 @kindo3

話が彼岸だな。えーとバイノーラルと言う事で、従来は胸ポケットに本体を納め、本体上部にあるマイクで集音、補聴器で増幅された音はコードを伝わって耳のイヤホンへっていうルートが、耳の位置で集音して首から下げた補聴器に送り、増幅した音を再度耳へってなった訳ですな。

2012-02-22 11:03:32
須山慶太 @kindo3

マイクとスピーカーが近くなれば、当然ハウリングの発生リスクが高くなるわけですが、当時補聴器系ではダナボックスあたりが位相反転によるハウリングキャンセラーを研究してたもののまだ実用レベルにはなく、マイクとスピーカーのセパレーションが必要になったとゆー訳ですな。

2012-02-22 11:04:45
須山慶太 @kindo3

実際、TE-ST55ではちょいボリュームを上げるとすぐに「ふぃーん」ってハウリングが発生してしまうため、折角の能力を発揮できないケースもあり、これまた脱線ですが、耳型からカスタムシェルを起こし、半ば強引にダイナミック型のユニットに固定して使うという荒技を業務としてやってましたよ。

2012-02-22 11:06:39
須山慶太 @kindo3

そう考えると、すでにカスタムも20年近くやってるのか・・・。55のダイナミック型レシーバーには今でもたまにありますがチップレスで耳穴方向に音を集めるようなキャップがついており、耳穴サイズによってS/M/Lとかあったので、これを取り外し、シェルと一体になるように埋めて取り付けます。

2012-02-22 11:08:18
須山慶太 @kindo3

ダイナミック型は完全密閉では動作が規制されやすいのですが、現在のカナル型イヤホンと異なり、かなり外側にセットされていたため、エアボリュームを確保することができたことから、思いのほかS/N比の高い(?)ハイファイな音質が得られたものです。

2012-02-22 11:09:52
須山慶太 @kindo3

でもこのカスタムダイナミック型、致命的な問題としては、カスタム化により本来想定されていない応力がキャップとレシーバーユニットの接合部にかかるため、時として「ポコン」と外れてしまうとさあ大変。ピーピーピーとハウリング祭り。

2012-02-22 11:11:40
須山慶太 @kindo3

カスタム化はソニーの技術の方(外松さんお元気かしら)とやってましたが、このあたりもあったり(なによりあまりにもカスタム過ぎ)してか、耳型を採らずにマイク/レシーバーのセパレーションを良くするため考案されたのが、今はフツーにアタリキのドームチップでした。

2012-02-22 11:13:05
須山慶太 @kindo3

よーやくイヤーチップの話ですが、このドームチップ、音導孔はダイナミック型からの引き込みもあり現在のものよりちょい大きめながら、質感や遮蔽性はすでに現在のレベルに達しており、このイヤーチップによりハウリングマージンは大きく改善し、高音質、両耳装用のしやすさから爆発的ヒットに!

2012-02-22 11:14:58
須山慶太 @kindo3

恐らくこの56Bでのノウハウが以降のカナル型イヤホンのイヤーチップに受け継がれていると思われますが、従来のてるてる坊主型に比べソフトで全長が短く、音導孔も太く確保されていたところに、装用感だけではなく音質的なこだわりも垣間見えた訳です。マジで再販してくんないかしらね。>56B

2012-02-22 11:17:27
須山慶太 @kindo3

はっ!ユニバーサルの話をしているつもりが56Bの話に・・・。ユニバーサル化、実は一昨年のInterBEEで試聴機の汎用性に手応えを感じ、昨年春のヘッドホン祭でMH334もご好評をいただいたことから、秋のヘッドホン祭で発表しようと準備をしておりました。

2012-02-22 11:48:16
須山慶太 @kindo3

イヤーチップについては某所の超強力なご協力をいただき、材質、遮蔽性、耳穴への適合性の良いものをご用意いただき、ステム部もなるべく小さな耳穴にも納まるようにと小型化したのですが、いざ特性を取ってみると「なにこれ」状況・・・。ユニットや音響抵抗の設定を変えてみたりしたもののNGに。

2012-02-22 11:50:41
須山慶太 @kindo3

カスタムでオッケーでカスタムの試聴機でオッケーなのに、なんでユニバーサルだとダメなんだよ!ってことで、よぉーく考えてみた所、同じようなことはこれまでカスタムでも発生していた訳で、外耳道径の規制で3本ある音導を途中でまとめたり高域レシーバーを遠くへやると、同じような現象が。

2012-02-22 11:52:51
須山慶太 @kindo3

試聴機では超強引に三角形の配置で3本通してたため、カスタム本来のバランスが出ていたのですが、ユニバーサル試作機ではイヤーチップにあわせてステム部をくびれさせる必要があるため、かなーり断面積が細くなっちゃいます。このステム、音の通り道と同時に、イヤーチップを安定して維持する役割も。

2012-02-22 11:54:43
須山慶太 @kindo3

メーカーによって考え方が良く出る所ですが、イヤーチップの固定方法で多いのはステムに溝を一周切り込んで、そこにイヤーチップの縁をはめ込むタイプ。ソニーやUE他、多くのメーカーが採用し、ウチのも同じです。アンダーカットに維持を求める方法で、ステム長を短くできるメリットがあります。

2012-02-22 11:56:59
須山慶太 @kindo3

これに対し、フリクションを用いて維持を取る方法はEtymotic ResearchやSHUREが。長めのステムに対し、少しきつさを与えたイヤーチップを差し込むタイプで、ステムは細く長くがポイント。ER-4のようにデッドに深く差し込むことで、外耳道残存容積を減らすアプローチにも適。

2012-02-22 11:59:40
須山慶太 @kindo3

シングルタイプにはこの細長ステムも良い結果が出やすいのですが、マルチではユニット間の相互干渉が大きく、特に高域減衰が顕著になります。ショートステムでも同様の問題があり、7kHzあたりを限界に、大きなピークができた後高域減衰という、もっさりした周波数レスポンスとなってしまいます。

2012-02-22 12:03:46
須山慶太 @kindo3

そこに敢然と立ち向かったのがカスタム/イヤホンの雄、Ultimate Ears社で、ブタバナで知られるデュアルポートステムはハイ/ローレシーバーに独立性を与えることでこの問題を解決。今聞いても素晴らしい音質を実現しています。

2012-02-22 12:05:42
須山慶太 @kindo3

もう一つ、高域減衰抑制のアプローチとして画期的な手法を取ったのが、AKG社のK3003。1ユニット2ウェイとなるKnowles社TWFKをステム内に設置することで高域周波数の減衰を抑制。元々ピーキーな同ユニットをダイナミック型レシーバーとのコンビネーションで上手に調教しています。

2012-02-22 12:07:45
須山慶太 @kindo3

素晴らしい先人の知恵をウチの製品にも取り入れて・・・、と思ったらそーはどっこい、いずれも特許の壁があるため、別のアプローチを取りつつ、新規性をアピールしなければなりませんのでさーどするか。ステムに2つの音導を設ける、ステムにレシーバーを入れる以外に・・・。

2012-02-22 12:09:54