39
PKA @PKAnzug
さて、例の文春記事に関してはいろいろ言われているようですが、かなり正論を言ってる人でも微妙に間違っていたりする部分があるので、甲状腺癌について少し書きましょうかね。
PKA @PKAnzug
まず確認ですが、あの記事に関連して重要なのは、子供2人の甲状腺腫瘍が良性か悪性かではなく、良性であれ悪性であれ原発事故とは関係がないということです。単に子供の甲状腺癌がスクリーニングで見つかった、という話なら普通にありうる話で、原発に絡めて煽ってるのが致命的に間違ってる。
PKA @PKAnzug
実際にあの子供の甲状腺腫瘍が良性か悪性かに関しての見立ては、直接診察してない以上何とも言い難いですが、伝聞で判断する限りは「多分良性だけど悪性の可能性も無視しちゃダメ」レベルかなと。細胞診ってのも実は悪性と出るまでは確定できない物なので、細胞診もしてないなら尚のこと確定できない。
PKA @PKAnzug
なので「二次検査で悪性が否定されたから良性」は概ね正しいけど「100%良性」って意味で言ってるとしたら誤りだし、「細胞診をしていないから悪性を否定できない」は「悪性の可能性が色濃く残ってる」という意味でなければ正しいわけです(実際に細胞診をやるべきかは別の話)。ややこしいですね。
PKA @PKAnzug
良悪性判断についてもう少し書きましょう。今回の件では「細かい石灰化があった」という話が気になっています。甲状腺癌には砂粒状石灰化という特徴が見られることが多く、もし本当に細かい石灰化があったなら、それが甲状腺癌である可能性はかなり上がります。
PKA @PKAnzug
ただ、「砂粒状石灰化→甲状腺癌」というのは医師の多くが知っていても、実際にエコーでプローベを動かしながら見ないと確認しにくい所見である関係上、それまで甲状腺診断をあまりしてない人がいきなり見て判断するのは結構難しいんですね。
PKA @PKAnzug
ちょっと専門的な話をすると、エコー検査ってのは超音波の反射で物を見る検査なので、腫瘍の中身が少し不均一なだけでもザラザラして見えます。慣れてない医師がそれを見て判断しかねた場合、一番簡単なのは二次検査で専門的に診てもらうことです。一般内科からの紹介ではそういうのは非常に多い。
PKA @PKAnzug
で、専門科がそういう患者を紹介された場合どうするか。もし本当に砂粒状石灰化があって甲状腺癌の疑いが強い場合、子供だろうと薬で寝かせて細胞診すると思うんですよね、普通に考えて。甲状腺癌は癌としては大人しいとはいっても、癌かもって紹介されたのを経過観察して転移したら責任問題ですし。
PKA @PKAnzug
専門科で診たらどうも癌ではなさそうだって場合、「多分良性ですよ」と言いつつ、比較的簡単にできる血液検査などをやって、経過観察になります。さっき書いた通り、癌の可能性を完全には否定することはできないので、万一の時にちゃんと対応できるようにするわけです。
PKA @PKAnzug
今回の流れがその2パターンのどっちに近いかは、言うまでもないでしょう。ということで、今回の甲状腺癌?騒動については、医師側が記者会見で言っていた内容だけでなく、あの記事に書かれていた情報からも、あまり悪性ではなさそうだなと言えちゃうわけです。
PKA @PKAnzug
次に、あれが万一甲状腺癌であった場合、原発との関連はどうなのかというお話。甲状腺癌は非常に成長が遅い種類が一般的で、成人の甲状腺癌は「見つかった時には10年もの」とも言われます。ただ、種類も個性もあるので一概には言い切れない。ではなぜ原発事故と無関係と言えるのか。
PKA @PKAnzug
まず、甲状腺癌の種類について。甲状腺癌でダントツで多い(8-9割)のは甲状腺乳頭癌というタイプ。この乳頭というのは組織学的構造の名称なので、おっぱい星人の方々に出番はありません。次いで甲状腺濾胞癌で、これが1-2割弱。
PKA @PKAnzug
残りは非常に珍しくて、日常診療でもあまりお目にかからないものと思って下さい。未分化癌は甲状腺癌のくせに非常に悪性度が高いことで有名。髄様癌はもっと珍しくて、出会ったら地方会くらいの小規模学会で発表できます。甲状腺原発悪性リンパ腫はもはや甲状腺癌ではありませんが、甲状腺の悪性腫瘍。
PKA @PKAnzug
先に挙げた多い2種類は、さらに分化度というもので分類されるんですが、これを簡単に説明すると、分化度の高い甲状腺癌は甲状腺細胞の本来の形に近くて大人しく、分化度の低い甲状腺癌はよくわからない細胞塊に化けていて凶悪(増えるのが早く、転移も起こしやすい)という傾向があります。
MANAKO40 @nekoroll
上杉隆氏がベラルーシでは最初は全員「良性のしこり」から始まったとTW(http://t.co/L7xF6Ch4)してますが、良性のしこりが悪性化することはあるのでしょうか? @PKAnzug
PKA @PKAnzug
@nekoroll ちょっと待ってて下さいね。あとでその辺も書きますんで。
PKA @PKAnzug
で、甲状腺癌の性質として言われる「非常に成長が遅い」というのは、甲状腺癌の大半を占める甲状腺乳頭癌、特に高分化型甲状腺乳頭癌で特に顕著な性質です。ただし、濾胞癌も乳頭癌ほどではないけど成長が遅く、それぞれの低分化なタイプも癌発生から1年で見えるほどになる早さはありません。
PKA @PKAnzug
そして、重要な点として、成長の極端に早いタイプはエコー検査などでの見た目もおかしいんですよ。成長が早い癌は甲状腺の正常細胞からかけ離れたおかしな細胞塊になっていて、周囲の組織に浸潤したりすることで検査上も「いかにも悪性病変」な格好になっています。そんなの絶対に経過観察しません。
PKA @PKAnzug
今回の件では「甲状腺未分化癌はすごく早いらしいから、原発事故が原因で未分化癌が出来たとすれば1年で見つかったとしても辻褄が合う」的な言説も見かけましたが、未分化癌はそもそもが非常に少ない上に、あんなもんエコーで見て経過観察になるわけがない。
PKA @PKAnzug
ちなみに、今回の記事で悪性の可能性がって話の根拠の1つにされている砂粒状石灰化というのは、基本的には甲状腺乳頭癌で見られる所見。もし本当に砂粒状石灰化があったのであれば、尚のこと原発事故との関連性は低いと言えます。
PKA @PKAnzug
簡単にまとめると、甲状腺癌の大半は成長が遅く、そんなのが発生1年以内にエコーで見つかるような大きさになることはない。甲状腺癌の中にごく僅かに存在する成長の非常に早いタイプ(未分化癌や極端に低分化な乳頭癌・濾胞癌)は明らかに格好が違うから、経過観察になんかならん。そういうことです。
PKA @PKAnzug
あと、これ書いてる時に飛んできた質問に答えておきますね。甲状腺癌の疑いがあるのに細胞診をやらないのは山下医師の指示という説についてと、ベラルーシでは最初は良性のしこりから始まったと言ってる人がいることについて。
PKA @PKAnzug
まず山下教授の指示についてですが、この場合は細胞診をやるかどうか決めるのは二次検査目的に送られた医療機関(記事によると北大病院らしい)です。で、山下教授は患者が北大に送られたことをどうやって知るのでしょうか?無関係の医師にどこそこに紹介しましたーなんて報告しませんよ。
PKA @PKAnzug
陰謀論らしく北大病院に潜入していたスパイが山下教授に報告していたと仮定して、山下教授から指示が行ったとします。癌を放置してえらいことになったら診た医師の責任問題なわけですが(特に子供は大変)、他所の大学の教授からの指示があったからって、現場の医師がそんな危ない橋を渡るでしょうか?
PKA @PKAnzug
山下教授が「従わなかったら医学界を追放する」と脅していた、くらい派手な陰謀論を説いてる方には、「スーパードクターK」の同人誌でも描いてろと言ってあげれば十分。まともに相手するだけ損です。
残りを読む(44)

コメント

G.G. @G__G_ 2012年2月27日
質疑応答などを加えました。
G.G. @G__G_ 2012年2月27日
ちょっと編集。
G.G. @G__G_ 2012年2月27日
追加しました。
G.G. @G__G_ 2012年2月28日
さらに追加しました。

注目の記事 - トゥギャッチ