山本七平botまとめ/『神・主人・奴隷の三角形』~解放奴隷(リベルテ)と上下契約~

山本七平著『日本人と組織』/契約の上下関係と相互関係/25頁以降より抜粋引用
コラム 山本七平 リベルテ アウグストゥス 古代ローマ アポロン 解放奴隷
5
山本七平bot @yamamoto7hei
1】契約とは元来は対等の二者の間で結ばれるもので、組織の上下関係を律する概念ではなかった。ここまでは、世界どこの国も同じであり、日本も例外ではない。従って西欧キリスト教社会だけを契約社会と呼ぶのはおかしい。<『日本人と組織』/契約の「上下関係」と「相互関係」
山本七平bot @yamamoto7hei
2】日本においても対等の相互契約という概念は、大体室町時代に既に定着しており、契約という概念が日本に無いなどとはいえない。だが組織という点において問題となるのは、この対等の相互契約でなく組織を構成する基となっている上下契約である。
山本七平bot @yamamoto7hei
3】この上下契約という我々にとっては実際には少々奇妙な考え方は原理的にいえば「神との契約」という考え方の中に既にある訳だが、これが本当に定着して民衆の生活をも律するようになったのが、いつ頃からかはよくわからないが、史料に残っているという点では、遙か後代の大体ローマ時代であろう。
山本七平bot @yamamoto7hei
3】次にその中の顕著な二例をあげる。一つは奴隷解放契約であり、もう一つはキリスト教式の宣誓と殉教の問題である。当時の社会の史上的かつ一般的なタテの従属関係は主人と奴隷である。奴隷というのは鞭で追い立てれば働くものか、といえば、いずれの時代であれ、そうはいかない。
山本七平bot @yamamoto7hei
4】奴隷の生産性は実に低く、ローマの外征が行き詰まって奴隷〔購入価格〕が高騰すると共にローマ経済はインフレから破綻に向かうわけだが、この時代になると奴隷への「経済的刺激」による生産性の向上という考え方がローマ人にも出てくる。当然であろう。
山本七平bot @yamamoto7hei
5】そして比較的早くから経済的刺激体制に入っていたのが、学問奴隷と技能奴隷であった。この両者は確かに鞭で能率を向上さす訳にはいかない。
山本七平bot @yamamoto7hei
7】単純肉体労働ならいざ知らず、高度の知識や技能・技術をもつこういう奴隷は、どうしても経済的刺激を与えざるを得なくなる。そして生活水準の向上と共にローマ経済は、こういう奴隷が能率をあげてくれないと成り立たなくなる。
山本七平bot @yamamoto7hei
8】しかし生産性を上げさす為、衣食住を保証した上で経済的刺激を与える位なら、まず奴隷購入資金を回収した上で本人を解放し、解放奴隷たる自由人と一種の雇用契約を結んで稼がせた方が楽であるし、雇用主の収入もよい、同時に当時は奴隷への警察的取締りは所有主の義務であるからこの義務を免ぜ(続
山本七平bot @yamamoto7hei
9】続>られるのも楽である。その為、最初の皇帝 #アウグストゥス の時には奴隷の解放が一種の流行になり、これが治安上の問題になるため、彼は数回、 #奴隷解放禁止令 を出している。けれど奴隷の側から見れば、ここに一つの問題が生ずる。
山本七平bot @yamamoto7hei
10】奴隷は”人間ではなく家畜である”から、人間たる所有主と奴隷の間で契約を結ぶことは不可能な訳である。例えば主人が「お前の得てきた賃金の半分をお前の為に積立ててやる。そして、それがお前を購入した金額に等しくなったら解放してやる」と奴隷と契約しても、この契約には効力はない。
山本七平bot @yamamoto7hei
11】奴隷がそのつもりで一心不乱に働き、主人が「購入した金額に等しい」金額を既に積立てた頃、「こりゃいい奴隷ですぜ」といって彼を最高値で他人に売り飛ばし、積立金を自分の懐に入れてしまっても、奴隷は一言の文句もいえない――彼は家畜なのだから――。
山本七平bot @yamamoto7hei
12】だが、こう危惧されて常に疑心暗鬼であっては、生産性はあがらない。それでは主人が困る。 この少々面倒な問題の解決に乗り出して来たのが、実は神様なのである。
山本七平bot @yamamoto7hei
13】そして西欧社会の非常に面白い特徴は、この「神」という概念が実は「法」「契約」という概念の極限として、人間社会の実務と深く関わりあっており、単なる宗教学の対象には収まり切らない点にあると言ってよい。
山本七平bot @yamamoto7hei
14】この方法は、奴隷による収入の一定部分を神殿に寄託して積立てるのである。今残っているのは火神アポロンの場合とユダヤ教徒の場合だが、まず前者を見るとこの寄附金が一定に達すると、アポロンがその奴隷を主人から買いとり、その買取り代金として積立金を旧主人に渡す訳で、ここでその奴(続
山本七平bot @yamamoto7hei
15】続>隷は「アポロン神の奴隷」となる訳である。だがアポロンが彼を使役する訳にはいかないので実際には解放される訳であって、これがリベルテ(解放奴隷)、この言葉からリバティー(自由・解放)が生まれた訳である。これが元来は契約の対象にならない奴隷と契約を結ぶ方法で、上下契約の最(続
山本七平bot @yamamoto7hei
16】続>も古いものの一つであろうと思われる。そしてこの図式は実際には主人・奴隷の上下相互契約でありながら、形では主人と神との契約で、奴隷は主人から神に売られたという形式をとっている訳である。この関係を図示するとA図の様になる。 http://t.co/qCPLZzXl
拡大
山本七平bot @yamamoto7hei
17】面白い事にこういった契約形式は今でも残っておりそれは西欧の結婚式に表われている。これについては前に記した事があるが結婚は実質には男女の対等の相互契約―いわば相互に誓い合う―形の筈であり、図示すればB図の様な形になる筈である。http://t.co/mFgYKN6T
拡大
山本七平bot @yamamoto7hei
18】だが西欧の結婚式の宣誓文をよく読んでご覧になるとわかるが、夫婦は相互に契約はせず、神に向かって定型化された文言を各々別々に断言するだけなのである。その関係はC図のようになるであろう。 http://t.co/kYmOD28v
拡大
山本七平bot @yamamoto7hei
19】いわば一種のA型関係だが、両者が平等なのは定型化された文言が平等だからであって、両者が平等な立場で契約を結んだからではない。この関係を極端にまで推し進めると、確かに離婚ということはありえなくなる。
山本七平bot @yamamoto7hei
20】というのは両者の相互契約ではないから、たとえ夫が失踪宣告をうけても、妻と神との関係はそれによって変化を生じないからである。
山本七平bot @yamamoto7hei
21】したがってこういう上下契約を神官立ち合いの下に、奴隷所有主と神とが結んでくれれば、奴隷はその契約の履行を信ずる事がでぎ、それが結婚の場合と同じように結果においては、一種の相互契約となりうるからである。従って両者とも、共に上下契約であるといいうる。

コメント

コメントがまだありません。感想を最初に伝えてみませんか?

ログインして広告を非表示にする
ログインして広告を非表示にする