『ザ・コーヴ』上映中止問題

hamano_takashi @hamano_takashi

『ザ・コーヴ』が上映中止となった。【毎日ｊｐ】映画：「ザ・コーヴ」上映中止　東京・渋谷の映画館、抗議相次ぎ http://bit.ly/9wigpC　

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上映を暴力で封じ込めることは、誰を利することになるか考えて欲しい。『ザ・コーヴ』は、自分たちが「隠し撮り」という非合法な手段に訴えるのは、正面から取材しようとしても許可が下りずまた暴力で脅されるからだと主張する。今回の一件は、ほらまさにその通りじゃないか、となる。

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仮に『ザ・コーヴ』がこの上ないクソプロパガンダ映画だとしても、そのクソさについて、どこがどうクソであるかを論じる自由と権利があるはず。その土台、最低限のゲームの前提をひっくり返そうとする輩は、闘う民主主義Streitbare Demokratieによって排除されるべきだ。

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今回の抗議から中止への流れは、『ザ・コーヴ』の正しさを逆説的に証明してしまった。「イルカ殺しは扱えない、タブーだから」「日本人の大半はイルカ漁について知らない、情報統制があるから」「イルカ漁を撮ろうとすると暴力的に脅される」。こうした『ザ・コーヴ』の主張は皆正しいということになる

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今回の『ザ・コーヴ』中止ははじめてではない。すでに立教大学での上映会が太地町の抗議を受けて３月に中止になっている。　http://bit.ly/9dCV9P

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立教大での『ザ・コーヴ』上映中止の場合、太地町の私人の方々の肖像権という問題はあるので微妙だったわけだが、それでもやはりモザイクなり一定の措置をした上で上映するべきだったと思う。上映後に賛成派・反対派で公開の議論を行なえばよいだけの話だったと思う。

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その上でそれでも名誉毀損にあたるというのなら、司法というルールにしたがって堂々と訴えればよかっただけの話だと思う。とにかく『ザ・コーヴ』に関してはアカデミー賞受賞というところまで来ているわけだから、上映を止める・隠すということで名誉を守れるわけはない。もはやそういう段階ではない。

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『ザ・コーヴ』を堂々と上映させた上で、自分たちのイルカ文化論を正面から展開する、世に問う。単なる水産資源問題とせず、歴史学、文化人類学、哲学を総動員してイデオロギーを構築する。これしかイルカ漁の名誉を回復させる手立てはない。隠してどうにかなる、というものではない。

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今回の『ザ・コーヴ』上映中止の一件を受けて、なぜか＜三島由紀夫ｖｓ東大全共闘＞を想い出した。敵との対話の可能性ということについて一つのモデルを提示しているからだ（両者の類似性／「君らが天皇とさえ言ってくれれば」問題はこの際おいとく）。

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＜三島由紀夫ｖｓ東大全共闘＞にはこんなくだりがある。三島「体制側の優秀なる人、この人がいうには『どうも困ったもんです、あんな気違いみたいな連中が騒いで。まあこういうのはほんとうにバカバカしいことでございますね』。私はちょっといやな気がした。これは諸君に阿諛するわけではない」

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三島「気違いが騒いで困るというのならば気違い病院へ入れればいいので、気違いというのを相手にして政府が騒ぐなんて、そっちのほうがみっともないじゃないか。（笑）大体気違いというものは大事に看護して、薬を与えて、このごろ精神病の薬も発達しておりますから（続く）」

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三島「（承前）大事に檻に入れて看護すべきもので、気違いに怪我をさせたり、気違いを殺したりするというのは非常に非人道的で、けしからんと私は思います。私は諸君を気違いとは思いませんので、やはりこうして出てまいりました。（続く）」

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三島「とにかく言葉というものはまだここで何ほどかの有効性があるかもしれない、ないかもしれない。まあためしに来てみようぐらいな気持をもっております」。引用終わり。『討論：三島由紀夫ｖｓ東大全共闘：＜美と共同体と東大闘争＞』（新潮社、１９６９年、７－８ページ）

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『ザ・コーヴ』中止。こう言いたい。２１世紀に、牛肉や豚肉。旨いタンパク質がある中で、敢てイルカを喰うことが気違いなら、牛の大量殺処分を尻目に過剰な愛からイルカ殺しを糾弾することも気違いだ。だからこれから始まる気違い同士（自分もその一人）の乱闘なんて放っておいてください、と。

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『ザ・コーヴ』上映と同時に始まるはずだった、「気違い」同士の乱闘を、あたかも「機械じかけの神Deus ex machina」のようにちゃぶ台返しするのはやめてくれ。そう気違いの一人として言いたい。