フラッシュファイト・ラン・キル・アタック #1

翻訳チームによるサイバーパンク・ニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) ニンジャスレイヤー公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 続きを読む
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

01001第三00101部「不滅のニンジャソウル」より0100:「フラッシュファイト・ラン・キル・アタック」

2012-03-02 12:19:58
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

KRAAAAASSH!「グワーッ!?」突然の破砕音と粉塵に、女はフートンから跳ね起きた。「待て、畜生待て、何?ナンデ?どんな状況だ?」ベランダを見やると、ナムサン!クレーンで吊られた巨大な鉄球が再度、振り子めいて飛んできた。壁が砕ける!KRAAAASH!「グワーッ!」1

2012-03-02 12:24:25
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「待て、ダメ!ありえないインシデントだろ!」女は叫ぶが、鉄球に耳は無い。振り子めいて三度目の破壊準備!「やめろッて!」女は下着のままだ。脱ぎ捨ててあったタイトなジーンズを慌てて穿いた。「ジャケット!ジャケットあった!」掴み取り、タンクトップの上に黒革のテックジャケットを羽織る。2

2012-03-02 12:30:32
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「ヤバイヤバイヤバイ」KRAAAASH!部屋のおよそ半分が床ごと崩壊!「まだ居る!人が居る!」女は叫んだ。「畜生……」玄関脇の鏡まで走り、いつもの日課を慌てて行う。黒いアイラインを引き、鏡の向こうの自分にアイサツをするのだ。「オ、オハヨ!」KRAAAAASH! 3

2012-03-02 12:33:39
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女は黒いショートボブ、痩せて小柄で、長い睫毛、何より特徴的なのは眉毛のかわりに入れられたイバラめかせたタトゥーだ。眉毛は永久脱毛済で、生えてこない。女はベランダ(があった場所)を見やり、悲鳴を上げかけ、ドアを蹴り開けるようにして室外へ飛び出した。KRAAAAAASH! 4

2012-03-02 12:50:06
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「アアアアア……」女は廊下にへたり込んだ。「こんなのってないぞ……ネオサイタマいい加減にしろよ……」そこで我に返り、「ヤバイ」タイトなテックジャケットを探る。ナムサン、財布は内ポケットにあった!「ブ、ブッダ!」 5

2012-03-02 12:53:07
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KRAAAAAASH!さらなる破砕音!アパートごと吹き飛ばすつもりか?彼女は泡を食って、転がるように階段を駆け下りた。「アーラ、まあ、あら、エーリアス=サンじゃないの?」太った中年女性が驚いて声をかけた。「ナンデ?なんで中にいたのよお、危ないじゃないのよ、死ぬわよお……」 6

2012-03-02 12:56:28
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「実際死ぬ!」エーリアスと呼ばれた彼女は叫び返した。「死ぬ!管理人さん!実際死ぬところだ!」「そうよお、危ないわよお」「アーッ!」エーリアスは髪を掻きむしった。「家財道具全部パアだって!」「張り紙したし、個別に連絡もしてたわよお」と管理人。「だいたいあなたがいつも留守だから」 7

2012-03-02 13:00:41
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「張り紙?張り紙ナンデ?」エーリアスは鼻白んだ。管理人はアパートの前に立てられた掲示板を指さす。『老朽化で取り壊し重点。月内に引越すか何かしてください』「……え?」「家賃もあなた二ヶ月滞納。でももうそれはいいわあ」管理人はため息を吐いた。「カラダニキヲツケテネ」「え……」 8

2012-03-02 13:04:01
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

エーリアスは口を半開きにし、管理人を凝視する。「……え……住居……」「カラダニキヲツケテネ」 9

2012-03-02 13:07:30
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「そう。うん。そんなワケだよ」スシ・ソバを食べる手を止めたまま、エーリアスは携帯IRC端末(幸運にも持ち出せた品だ)に向かって呟いた。意気消沈だ。「え?そりゃ、やるしかねえよ。これは突発事故。どうにかするよ。あいつは俺よりよっぽどヤバイ事になってるんじゃないかって。うん」 11

2012-03-02 13:28:34
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屋台はソバ茹で機が吐き出す水蒸気が立ち込め、隣の客の顔も見えないほどだ。「まあ、じゃあ後で。話自体は進捗アリなんだ。うん。この後アポを取ってある。また連絡するよ……」通信を終了し、そそくさと味の濃いソバ・スシを啜りこむ。「こんなの無いよ本当にさ……」 12

2012-03-02 13:33:31
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トークンを粘つくカウンターに叩きつけ、エーリアスは霧雨の街角に足を踏み出す。この程度の雨と含有重金属なら傘はいらない。マフラー(これも、幸運にも持ち出せた品だ)を鼻の上まで引き上げる。マフラーには「地獄お」のレタリング。「気を取り直そうぜ……ビズだぞ」彼女は独りごちた。 13

2012-03-02 13:39:42
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歩道橋を歩くとき、彼女は西の空を横目で見た。こんな曇天であっても、そしてあれだけ離れていても、西の空には黒い渦が闇の太陽めいて浮かんでいる。「なンだろね」彼女は呟き、ジャケットのポケットに手を突っ込んで、猫背ぎみに歩く。「シルベスタ服飾ギルド」のネオン看板。路地裏に入る。 14

2012-03-02 13:49:15
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「……」後ろで手を組んだ黒人バウンサーがネオン立て看板「カブ」の傍らに直立している。バウンサーのサイバーサングラスがエーリアスを見据えた。黒い表面に「悪漢は用心する」の液晶表示が瞬く。エーリアスはおずおずとアイサツした「ドーモ、エーリアスです。アポあるんだけど……」「……」 15

2012-03-02 13:53:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……ド、ドーモ、エーリ……」「イエスボス。アポイントメント来客重点」バウンサーは通話機にドスの聞いた声で伝えた。サイバネ声帯だ。バウンサーは無言で頷き、エーリアスに地下への階段を示した。「アイ、アイ、失礼しますよ……」頭を下げながらエーリアスは階段を下ってゆく。 16

2012-03-02 13:57:01
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

会員制サイバネティクスバー「カブ」に流れるのは荘厳なオコト・サウンドシステムのBGMだ。内装はウルシめいた艶のある黒で統一され、壁に穿たれたくぼみには、黒いバイオ水仙生花が奥ゆかしく飾られている。営業時間外であり、ホールにはモップをかけるサイバーボーイしかいない。 17

2012-03-02 14:02:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「あのさァ、座っていいのかな……どの席かな」エーリアスはサイバーボーイに呼びかけた。サイバーボーイは手を止め、エーリアスを見た。中性的なか細い美貌で、その目は白目が無い、サイバーサングラス表面めいた漆黒だ。目には0や1が流れた。「ラピ?」サイバーボーイは呟き、作業を再開した。18

2012-03-02 14:10:05
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ラピ?」エーリアスはおうむ返しにした。「スミマセン、全然わかんないんだけど……」サイバーボーイは清掃を続ける。エーリアスはもじもじと直立し、数分そのまま待った。やがて奥の部屋から目当ての男が現れた。「ドーモ、はじめましてエーリアス=サン。クラクズーです」 19

2012-03-02 14:13:27
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ボンズヘアーの頭頂部を渦巻き状に刈り込んだクラクズーのオジギは、油断ならぬアトモスフィア。この男、ニンジャだ。「ドーモ。エーリアス・ディクタスです」「変な名前ですね」クラクズーは言った。「おかけください」漆黒のソファーを示す。エーリアスは座った。身体が沈み込む。高級! 20

2012-03-02 14:18:07
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ビズのお話したいのですよね」クラクズーは向かい側に座った。別のサイバーボーイが歩いて来て、二人分のグラスを置き、チャを金属ボトルから注いだ。「ノンアルコールでいきましょう」「ドーモ」エーリアスは一口飲んだ。クラクズーも飲む。「で、お話とは」クラクズーが身を乗り出した。 21

2012-03-02 14:22:16