民間事故調のWGメンバーからのメッセージ

民間事故調のワーキンググループで中心的な役割を果たした秋山さんの、報告書の意図や調査の経緯、ワーキンググループのメンバーへの思いが詰まった連続ツイートをまとめました。無料で公開しないことや商業出版に対する批判、また「民間」事故調とはいったい何者なのか、といった疑問にストレートに答えるツイートです。報告書の内容や民間事故調のやり方に批判はあると思いますが、disる前に是非一度目を通していただきたいツイートです。
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nobu akiyama @nobu_akiyama

この前この番組に出演させてもらった→“原発情報”クライシス ~日本は何を問われたか~ - NHK クローズアップ現代 http://t.co/fpqiUxKL サッカーの裏で、視聴率は悪かったけど。で、せっかくなので僕も関与したこの民間事故調についてつらつらと書いてみたい。

2012-03-03 13:49:48
nobu akiyama @nobu_akiyama

28日の記者会見以降、新聞などで大きく取り上げてもらって、注目も高まっている。確かに報告書の中で官邸の動きを描いたチャプターは出色の出来だ。僕の仲間たち、すごいよ、本当に。読んでいると本当にそこにいたみたいな臨場感のある場面もある。

2012-03-03 13:51:37
nobu akiyama @nobu_akiyama

で、メディアではこの官邸のところをみんなピックアップして報道したので、菅批判の報告書だとの印象をみんな持ったかもしれない。でも、僕らが目指していたのは、結局、なんで事故に対する備えができていなかったのか、なんでマニュアルが使えなかったのか、本当にこれ以上のことはできなかったのか、

2012-03-03 13:53:49
nobu akiyama @nobu_akiyama

という、もっと構造やシステムに対する疑問に答えることだ。危機においてリーダーの個性や資質は、確かに重要だ。しかし、それと同じくらいに、あるいはそれ以上に、そうしたリーダーシップがより適切に発揮できるようなシステムはもっと重要だ。逆にリーダーシップを妨げるようなシステムはだめだ。

2012-03-03 13:55:39
nobu akiyama @nobu_akiyama

そして、そのシステムというのは単に政府の危機管理のシステムだけではない。いわゆる原子力ムラと呼ばれるような業界の構造も、重要な要因である。専門的知見の所在(規制側と規制される側の関係のあり方に影響)、人材のキャリアパス、産官学に地方も加えたお金の流れ、それに国際的規制の受容、

2012-03-03 13:59:00
nobu akiyama @nobu_akiyama

いろんな要因が絡みあい、そして今回のような悲劇が生まれたんだと思う。そして、なぜこの事故は起きてしまったのか、もっとうまく対処できなかったのか、とみんなが思ったのと、同じ疑問を持った人たちが自らの意思で集まってきた(もちろんいろいろ声をかけあったんだけど)のが今回の事故調だ。

2012-03-03 14:00:58
nobu akiyama @nobu_akiyama

プロジェクトは、有識者の先生方で構成される委員会と、その下で実際に調査にあたったワーキングループ(WG)、それに事務局で構成されている。WGは、僕たちのような中堅クラスの研究者(一部シニアな人もいるが)、弁護士、ジャーナリスト、それに若手の大学院生などで構成されている。

2012-03-03 14:03:49
nobu akiyama @nobu_akiyama

その中には、原子力工学の専門家もいれば、NGOとして日本の原子力の問題点を指摘してきた「村八分」系の人間もいる。不拡散問題をやる僕やSさんなど、一般から見れば、核問題やってるから「原子力ムラ」の一員、そして「ムラ」のコアな人たちからすれば厄介者とみられる、「蝙蝠」のような人も。

2012-03-03 14:07:28
nobu akiyama @nobu_akiyama

だけど、共通していたのは原子力政策のガバナンスに大きな疑問を持っていたこと。安全規制のあり方はこれでよかったのか、これでよかったのだと我々自身も思い込もうとしていたのではないか、あるいは目をつぶっていたのではないか。これはそこに集まった人たちが例外なく持っていた思いだ。

2012-03-03 14:09:58
nobu akiyama @nobu_akiyama

だから、われわれの調査は、誰に対しても手心を加えたつもりはない。掛け値なしで真実を追求したかっただけだ。もちろん、真実を追求しきれなかった部分もある。東電は何度もインタビューを要請したにもかかわらず我々の要請に応じてくれなかった。また保安院や協力企業などインタビューしきれない

2012-03-03 14:14:01
nobu akiyama @nobu_akiyama

ところも数多い。福島県の地元で何が起きていたのかについても僕らは残念だが十分な調査ができなかった。これは、今も苦しんでいる人たちのことを考えると本当に残念なところだ。だから、たぶん我々の描いた絵は、福島原発事故という大きな象のしっぽや耳くらいにしか過ぎないのかもしれない。

2012-03-03 14:15:24
nobu akiyama @nobu_akiyama

でも、僕らは本当に一生懸命、真面目に、真実というものに対する最大のインテグリティを持ってこのプロジェクトにあたった。それだけは分かってほしいと思う。特に、僕らのようなおっさんはすれっからしだが、原子力分野にいながら、そのあり方に対して疑問を持ちそれに切り込んでいった勇気のある

2012-03-03 14:17:47
nobu akiyama @nobu_akiyama

若い仲間に、ツイッタ―やブログに散見される、何の根拠も調査もしないでの批判や中傷は、なんか申し訳なく思う。そういう人たちに、我々が2週間に一度、土曜日に集まって朝から夜まで真剣に議論していた姿を見せられないのが本当に残念だ。僕らは、原発支持・不支持、いずれの先入観も持たずに

2012-03-03 14:22:28
nobu akiyama @nobu_akiyama

真実を追求したかったのだ。繰り返しになるが、それでも僕らが明らかにできたのは、たぶん事故の大きな絵のほんの一部にしか過ぎない。また、僕らの解釈が間違っている部分もあると思う。なので、関係者にも、そうでない人にも是非報告書を読んで、その分析や評価について議論をいただきたいと思う。

2012-03-03 14:24:29
nobu akiyama @nobu_akiyama

この報告書の公表の仕方にいろいろな批判があることは承知している。書籍として商業出版、あわせて電子書籍で発売する、しかも11日の発売、というのがあざといマーケティングだ、という指摘も読んだ。僕ら仲間の中でも、無料派と有料派で議論があった。

2012-03-03 14:26:15
nobu akiyama @nobu_akiyama

僕自身は、本当は無料でみんなに読めるようになったらいいと思う。でも、他方で僕らが読んでほしい人にはいきわたらない可能性がある。ハードコピーをお送りすることで読んでもらえるかもしれない。それに、僕らは今回の報告書を後世の評価にゆだねたいと考えた。

2012-03-03 14:28:10
nobu akiyama @nobu_akiyama

後世の評価に委ねるためには、後世に残る形で報告書を残しておきたいと思う。であるならば、紙媒体のほうがいいのではないだろうか。そして、資金の出所についてもいろいろ憶測があるが、本当はそんなに潤沢にプロジェクトにお金が使えるわけもなく、無料で報告書を配布するほどの資金的余裕はない。

2012-03-03 14:29:50
nobu akiyama @nobu_akiyama

だとすれば、有料での出版を選択せざるを得ないのだ。本当に、無料で多くの人たちに読んでもらいたいとは思う。だけど、すべてを満たすようなソリューションは、結局のところお金でしか解決できないのだ。1500円で本を販売したとして、プロジェクト側に入るお金はたかが知れている。

2012-03-03 14:31:20
nobu akiyama @nobu_akiyama

なのでこの商業出版を含むプロジェクトでお金もうけをしようといっても、ビジネスモデルとしては、完全に破たんしている。だから、出版の公表のいきさつは、いわゆる「ステマ」ではなく、商業出版に二の足を踏む出版社があり、記者会見までに決まらなかった、ということでしかない。

2012-03-03 14:32:47
nobu akiyama @nobu_akiyama

そうは言っても、報告書を読んで下さる方々にはお金を払っていただくことになる。申し訳ないが、できればそのコストはご負担いただきたいと思う。WGの若手は自分の博士論文を抱えながら、僕らも大学の講義や他のプロジェクトを抱えながら、弁護士の友人も事務所独立という人生の一大転機の中で

2012-03-03 14:35:22
nobu akiyama @nobu_akiyama

それでも、この事故が、原子力という一つの政策領域を超え、日本という社会(もしかしたら「ムラ」)のあり方を問われる、本当に重大な事態だ、これをなんとかしないといけないという少々間の中で、自分の問題として向き合おうとした。ただ、だからこの報告書の中身が凄いだろ、と言いたい訳ではない。

2012-03-03 14:37:30
nobu akiyama @nobu_akiyama

むしろ、何度も言うように、たぶん穴だらけだろう。僕らの願いは、この報告書を読んで、みんなが自分たちの思うこと、考えることを、議論するきっかけになってくれたら、ということだ。僕らの報告書が出たからと言って世の中が変わるわけではない。この報告書で世の中が変わるわけがない。

2012-03-03 14:38:55
nobu akiyama @nobu_akiyama

だから、一緒に考えてほしい。ぜひ議論を喚起したい。それが僕たちWGのメンバーの思いだ。まあ、僕がそう勝手に思っているだけかもしれないが…)そりゃ、こんな勝手に語ったって報告書の中身がなきゃしょうがないが、まあ、中身もそれなりだと思うよ。逆に報告書の内容以外のところでDisるのは

2012-03-03 14:43:16
nobu akiyama @nobu_akiyama

…ぜひ、みなさん、報告書の分析、議論に対して、厳しいご意見をお寄せください。くどいようですが、僕らの分析が「決定版」ではありません。むしろ出発点じゃないかと思っています。そういう出発点を作れたことを少なくとも僕自身は誇りに思っています。

2012-03-03 14:45:14

民間事故調のインタビューに答えた内閣広報室審議官の下村健一さんのツイート。インタビューでの表現の使われ方についてのコメント。