整備兵氏(@seibihei)による「戦術の基礎(D. Wyly海兵隊大佐)」("Maneuver Warfare Handbook"付録)翻訳・第1課―3
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我々は「表面」即ち拠点に対しては、どうすれば良いのだろうか?迂回すれば良いという場合もある。敵を迂回してしまえば、拠点は支援から切り離され、だんだんと弱体化していき、そのうち我が容易に攻撃できる弱点となる。
2012-03-07 23:54:23火力による制圧は、敵の拠点を無力化し、安全に迂回できるようにする手段の一つである。火力で効果的に制圧するためには、常に時間が重要であることを覚えておかなければならない。何時間にもわたる砲爆撃でも、必ずしも所望の効果をもたらさないことがある。
2012-03-07 23:57:51拘束のための攻撃も、「表面」に対処する方法の一つである。これは特定の拠点の敵を撃滅するためではなく、我が主作戦正面で迂回や別の場所への攻撃を実施している間、敵を無力化したり注意を反らさせるための、限定目標の攻撃である。
2012-03-08 00:06:43拠点に対処するもう一つの方法は、浸透攻撃である。これは「表面と間隙」をミクロな視点で見たものと言えるかもしれない。即ち、敵に対して緊密な突撃部隊を突っ込ませるのではなく、突撃部隊が敵の拠点にある間隙を探し出し、そこから浸透するのである。通常、これは夜間に達成しやすい。
2012-03-08 00:11:21「表面と間隙」という考え方は、特に従来の動きの遅い戦闘に慣れた指揮官から、疑念が呈せられている。一つは、「指揮官が部下一人一人を掌握できない」ということだ。
2012-03-08 00:13:27海兵隊(当時)では、我々はどこに誰がいるか常に正確に掌握しているよう求められる事に慣れている。今まで述べてきたような動きの速い形態の戦闘では、そのように掌握することは不可能であろう。部下たちは間隙を見つけ、利用するために分散している。
2012-03-08 00:16:35もう一つの問題は、砲撃や航空支援が、動きの遅い戦闘の時ほど厳密には統制できないことだ。所望の効果とは、我々の迅速な作戦によって敵を混乱させ、我々に対して損害を与えられなくすることにある。
2012-03-08 00:22:28砲撃や航空支援には、常に同士討ちの危険が付きまとう。もちろん、我々は友軍相撃を防ぐためにあらゆる手段を取らなければならない。しかし、最終的には、我々が敵より速いテンポで攻撃を続ける方が、より上手くいく。
2012-03-08 00:25:14とにかく、敵は我に火力を指向しているのである。我々は錯誤によって死傷者を出すことがあるだろうが、統制手段によって防止することができる。我が方の迅速なテンポは、結果として、死傷者の減少と、より早い勝利が得られる。
2012-03-08 00:29:36「表面と間隙」に関するもう一つの問題は、我々が縦深にわたり突破すると、正面が狭かった場合にはしばしば、我の翼側が暴露されることである。しかし、これは、また速度に関わってくるが、ちゃんと割に合うのである。
2012-03-08 00:33:11我々は迅速に行動している。敵は、常に(我の迅速な動きに)混乱させられている。「速度は安全を生む」という古い格言を思い出そう。近い場所で友軍が縦深深く突破したならば、それは動きの遅い戦闘によくある鈍重な「翼側掩護」よりも効果的に、敵の圧力を減じてくれる。
2012-03-08 00:38:55ドイツには「Aufrollen」という言葉がある。直訳すると、「刺突」と言う意味だ(ママ。独和辞書で調べると『巻き上げ』になる)。ある方向に攻撃しているとき、主攻撃の方向の左右に向け、狭い正面で助攻撃を行って、それにより翼側を防護するのだ。
2012-03-08 00:46:09これなら速度は犠牲にならずに済む。もし左右の翼側掩護部隊の動きに合わせて主攻撃部隊が攻撃速度を落とすなら、速度が犠牲になってしまうではないか。
2012-03-08 00:48:21ソ連軍の「火力ポケットによる防御」の視点を持って「表面と間隙」を学ぶと、また別の問題が出てくる。ただ、再度繰り返すが、この考え方は近代化し、非線形であることを思い出さなければならない。
2012-03-08 00:51:50図(省略)では、火力ポケットを3つのソ連軍の拠点が囲んでいる。その企図は、敵を火力ポケットに引き込み、周囲の拠点からの攻撃で叩くことだ。「表面と間隙」の考え方を厳密に守ろうとすると、間隙を探し、拠点を迂回しようとして、まさに敵が望んだように火力ポケットに落ち込んでしまう。
2012-03-08 00:55:57「間隙」とは、相対的な概念だと理解しなければならない。指揮官は常に新たな状況を勘案し、何が「表面」で何が「間隙」なのかを検討しなければならない。これには固定的な原則はない。
2012-03-08 00:58:38火力ポケットは敵がいないのだから、「間隙」に見えるだろう。しかし、それは実際には「表面」である。それは敵の強点であり、我々が脆弱になる弱点である。
2012-03-08 01:00:44この場合、敵の拠点が「間隙」になっているかもしれない。相互支援している拠点の一つを、例えば浸透により無力化してしまえば、敵を弱体化させることができ、そこが敵の弱点になるかもしれない。
2012-03-08 01:02:34ある海兵隊の将校は、この概念を討議しているとき、私に彼の感覚を話してくれたことがある。部隊を指揮して「間隙」を探していると、いつの間にか火力ポケットに陥ってしまう、というのだ。それは恐らくあり得るだろう。
2012-03-08 01:06:46しかし、私は彼にドイツ軍のヘルマン・バルク将軍から聞いた事を話した。バルク将軍によれば「戦いとは芸術(アート)である。他のあらゆる芸術(アート)と同様、偉大な芸術家は少数」だ。そして「皆がラファエロになれる訳ではない」とも言っている。件の将校は、明らかにラファエロではなかった。
2012-03-08 01:12:20「正面」と「間隙」を見分けるのも、一種の芸術(アート)である。ここに、我々が戦史を学ぶ理由がある。戦史は、我々がそれらを見分けるのを助けてくれる。
2012-03-08 01:14:41下級部隊の主動性によって特徴づけられる「動きの迅速な戦い方」の批判者は、それによって、一団の兵隊が否応なしに戦場を動き回り、指揮官が統制できなくなるのではないか、と恐れている。しかし、必ずしもそうなる訳ではない。
2012-03-08 01:22:45もし「正面と間隙」という概念が正しく使われるのであれば、そうなることはないだろう。それは、統制手段があるからである。境界や進出限界、統制線はこれからも使うことができる。
2012-03-08 01:25:45