TottemoMilkTeaさんの「放射戦」1~15

とってぃ @TottemoMilkTea

頭は痛いし、眠いし、なでしこは勝てそうもない。今日もどこかで放射能の危険に関して争いが起きている。それは放射線が持つ本来の毒性を上回る放射戦だ。

とってぃ @TottemoMilkTea

「放射戦」1・大規模な放射能汚染が起こった。放射線の危険、その相場観を見定める情報は錯綜し続けている。避難する必要がある、可能な限り避けろ、食べ物にだけ気をつければいい、気にしすぎない方がいい……比較的に低濃度である首都圏でその評価はさまざまだ。

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「放射戦」2・相場観を見定めるための情報のやり取りはときに考えの違う相手を罵倒する言葉に変わる。放射能を気にして生活するなんて馬鹿だ、放射能を気にしない人間は馬鹿だ。相場観を共有できないもの同士の争いだ。これを『放射戦』とぼくは便宜的に名付けた。

とってぃ @TottemoMilkTea

「放射戦」3・他人の放射能に対する相場観を目にしたとき、人はしばしば苛立つようだ。少なくともぼくはそう。危険寄りに見積もっていても、安全寄りに見積もっていても、目にしたものが自分の相場観と大きくずれていたとき、心に波風が立つのがわかる。

とってぃ @TottemoMilkTea

「放射戦」4・どうして放射能の相場観のずれは人の心を揺さぶるのだろう。例えば「焼き魚の焦げに含まれる発がん性」について語られているのなら、心の振動はきっと僅かなはずだ。魚は美味しい、焼いたらもっと美味しい、ごく小さな発がん性なんて気にしなくていい、と。

とってぃ @TottemoMilkTea

「放射戦」5・相場観が心を揺さぶる理由をぼくは一年近く考え続けた。考えるにあたって、ぼくはいくつかのサンプルから学ぶことにした。それは、嫌煙運動、ベジタリアン、離婚対策など、生活に潜むリスク評価と拘わるものだ。

とってぃ @TottemoMilkTea

「放射戦」6・嫌煙家と愛煙家の論争、ベジタリアンと非ベジタリアンの論争は必ずどこかで着地点が生まれる。「互いに迷惑をかけない範囲なら良しとする」というものだ。わかりあえないままでも生活ができる。だから論戦の着地点は平和的な別れになる。

とってぃ @TottemoMilkTea

「放射戦」7・平和的な別れ、離婚のリスクも学んでみたものの、この「放射戦」との深い拘わりが見られないので割愛する。とにかく、嫌煙家と愛煙家の論争、ベジタリアンと非ベジタリアンの論争と、今の着地点が見つからない「放射戦」にははっきりとした差異があることに気づいた。

とってぃ @TottemoMilkTea

「放射戦」8・どんな立場であれ、この原発事故後の世界に生きる限り、人は放射線のリスクと無関係ではいられない。喫煙者と嫌煙者、ベジタリアンと非ベジタリアンのように棲み分けはできない。だから切実な気持ちになる。だから相場観の違いが心を揺らがせる。ぼくはそう考えた。

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「放射戦」9・放射線のリスクを評価する、ただそれだけのことが争いの火種になる。隣人の日常にケチをつけることになる。心の分断を生む。これは、焼き魚を食べたときの発ガンリスクについて語るのとは違うのだ。リスク評価はそのまま戦争に繋がる。

とってぃ @TottemoMilkTea

「放射戦」10・原発事故からしばらくの間、ぼくは「この程度のリスクでそこまでの対策は必要ないよ」と呼び掛けるスタンスを取っていた。深く考えずに。でも本当にそれでいいのか、と気がついた。どのリスクにどのぐらいのコストをかけるかは人の自由だ。自由を阻害して本当にいいのか。

とってぃ @TottemoMilkTea

「放射戦」11・青信号で手を上げて渡る人を、誰も馬鹿にしてはいけない。やむを得ない事情と一定の死の覚悟を持っている人に、赤信号を渡ることを叱っても仕方がない。この「放射戦」を鎮める方法は、寄り添うことなんじゃないかと考えるようになった。

とってぃ @TottemoMilkTea

「放射戦」12・他人がする放射線のリスク評価を尊重したい。ぼくは誰の被曝も笑いたくないし、笑われたくない。被爆の対策も、覚悟の上での被曝も笑いの種にはしたくない。人の被曝を笑うな、と思う。

とってぃ @TottemoMilkTea

「放射戦」14・ぼくもこの戦争に参加するには武器（知識）が足りない、戦争開始の当初よりかは少しだけ充実したけれど。だから当面の間は中立の衛生兵として参加したいと思う。従軍慰安婦と置き換えてもいい。とはいえ、丸腰で戦地に向かう人間のことは助けない。それだけは決めた。

とってぃ @TottemoMilkTea

「放射戦」15・この戦争が終わるのは、この社会における相場観のブレ幅が狭まったときに違いない。それまでに何ができるのかまだわからない。でも、戦争の様子をじっと後ろから真剣な顔で眺めていなければいけない。そんな予感だけはある。（完）