日博協研究協議会「東日本大震災に学ぶ資料管理」事例報告

2012/03/08 日本博物館協会研究協議会「東日本大震災に学ぶ資料管理」における、岩手県立博物館専門学芸員の鈴木まほろさんの事例報告「さまざまなネットワークを活用した自然史資料救出・保全の取り組み」をまとめました。
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SEIICHI OKUYAMA @soku26

(1/29)2012/03/08 日本博物館協会研究協議会「東日本大震災に学ぶ資料管理」於:仙台市博物館 事例報告「さまざまなネットワークを活用した自然史資料救出・保全の取り組み」 鈴木まほろさん(岩手県立博物館専門学芸員)   今日は、 #jmuse0308

2012-03-09 23:52:33
SEIICHI OKUYAMA @soku26

(2/29)「被災した岩手県内の自然史系博物館における被害と収蔵資料救出作業の概要」、「救出した自然史標本の復元における協力体制」、「問題点と将来展望」の3つについて話したい。  山田町立鯨と海の科学館は1992年開館した、 #jmuse0308

2012-03-09 23:52:33
SEIICHI OKUYAMA @soku26

(3/29)鯨をはじめとする海生生物と人との関わりを扱う博物館。多数のクジラ標本、捕鯨関係資料に加え、平成22年に寄贈された約8万点の海藻押し葉標本と約2500点の海藻液浸標本を収蔵。館の目玉でもあったマッコウクジラの巨大な骨格標本も土砂で汚れたが、 #jmuse0308

2012-03-09 23:52:34
SEIICHI OKUYAMA @soku26

(4/29)東京海洋大学の協力を得て、山田町が洗浄と保存処理をすすめている。海藻押し葉標本は大部分が収納庫ごと流出したため、残った約1万点を救出。液浸標本も土砂にうまったが、ほぼすべてを救出できた。  陸前高田市海と貝のミュージアムは、1994年開館、 #jmuse0308

2012-03-09 23:52:34
Suzuki Mahoro @mahoroszk

(4/29)の補足。標本を救出したのは町と館の職員さんたちです。 http://t.co/cKrYFZAa

2012-03-10 00:46:03
SEIICHI OKUYAMA @soku26

(5/29)貝類を中心とする海の生物を専門に扱う博物館。貝類標本のコレクションを約11万点収蔵。2階最上部まで浸水、展示室は壊滅状態で展示標本の多くは流出。収蔵庫では窓の有無で被害が大きく異なり、窓のある収蔵庫では窓から収蔵品が流出したが、 #jmuse0308

2012-03-09 23:52:35
SEIICHI OKUYAMA @soku26

(6/29)窓のない収蔵庫の標本は流出を免れた。幸いにも職員は全員無事であった。  陸前高田市立博物館は、1959年開館、博物館法第2条による博物館としては岩手県第1号、東北地区でも第2号の由緒のある施設で、陸前高田市の人文・自然を扱う総合博物館。 #jmuse0308

2012-03-09 23:52:35
Suzuki Mahoro @mahoroszk

(6/29)の補足。「職員は1人を除き全員無事であった。」 http://t.co/cKrYFZAa

2012-03-10 00:47:59
SEIICHI OKUYAMA @soku26

(7/29)15万点以上の人文・自然史資料を収蔵。津波で6人の職員全員が死亡または行方不明、建物最上部まで浸水、建物の内部は大量の瓦礫と土砂で埋め尽くされていた。収蔵庫に窓は無く資料の流出は防げたが、建物内にある瓦礫の除去を行わない限り、 #jmuse0308

2012-03-09 23:52:36
SEIICHI OKUYAMA @soku26

(8/29)資料の救出を開始できない状況。  4月中旬、陸前高田市からの要請を受け、岩手県教委が県内博物館・文化財関係者を動員、市職員(博物館勤務経験者)に協力して、内部の瓦礫の撤去を開始。救出された自然史標本は、植物標本約1万5千点、 #jmuse0308

2012-03-09 23:52:36
SEIICHI OKUYAMA @soku26

(9/29)昆虫標本は約2万4千点、その他の生物標本(鳥獣剥製・骨格・液浸標本等)が約1000点、地質標本は3400点だった。資料すべてが海水と砂泥にまみれており、特に植物標本と昆虫標本は、カビが生えているものや腐敗のはじまっているものもあり、 #jmuse0308

2012-03-09 23:52:37
SEIICHI OKUYAMA @soku26

(10/29)急いで処理をしないと腐ってしまう危険があった。我々も単に手をこまねいていたわけではないが、被災地は混乱しており、現地と連絡がとれるようになったのは4月に入ってから。また、他館の資料を救出するためには、正式な応援要請がなくては、 #jmuse0308

2012-03-09 23:52:37
Suzuki Mahoro @mahoroszk

(10/29)の変更。 我々は2週間以上、ただ手をこまねいていました。 http://t.co/cKrYFZAa

2012-03-10 00:50:06
SEIICHI OKUYAMA @soku26

(11/29)動きたくても動けない。そのため支援体制を整えるのに時間がかってしまった。  4月に入り気温も上昇し、植物標本と昆虫標本は、急いで処理をしなければ腐ってしまうという危機感があった。処理には標本の取り扱いに慣れた人が多数必要となるが、 #jmuse0308

2012-03-09 23:52:38
SEIICHI OKUYAMA @soku26

(12/29)岩手県内には人材が2~3人しかいない。そのため、他県の知り合いの学芸員、西日本自然史系博物館ネットワークML,昆虫担当学芸員協議会MLなどを通じ、全国の博物館学芸員に支援をもとめた。それぞれ、わずか4日間で受け入れ先がほぼ充足した。 #jmuse0308

2012-03-09 23:52:38
SEIICHI OKUYAMA @soku26

(13/29)実は3月のうちから、他館学芸員より「なにか協力できないか」というメールを多数いただいていた。このような方々がすぐに動いてくれた結果、4日間という速いスピードで引き取り先が決まったのだろう。  今回の救出作業では、 #jmuse0308

2012-03-09 23:52:39
SEIICHI OKUYAMA @soku26

(14/29)生物資料の持つ特殊性がおおいにプラスになった。つまり、①世界共通の古典的な方法で作成・保管が可能、②サイズが規格化されコンパクト、の2つの事である。①であるからこそ、専門家に取り扱い方法を説明する必要がない、また特殊な設備も必要ない。 #jmuse0308

2012-03-09 23:52:39
SEIICHI OKUYAMA @soku26

(15/29)②であるからこそ、大量輸送が可能。実際に博物館の間では、日常的に宅配便を使用した資料の賃借等を行っている。  陸前高田市博の植物標本の修復は次のように行った。押し葉標本15000枚を岩手県博に搬入し、 #jmuse0308

2012-03-09 23:52:40
SEIICHI OKUYAMA @soku26

(16/29)そのうち約7500枚を全国の博物館等29箇所に輸送した(5月7日~)。この押し葉標本の送り出し作業は約3週間かかり、約70人日の労力がかかった。洗浄方法については、あらかじめ標準プロトコルをネット等で提示し、 #jmuse0308

2012-03-09 23:52:40
SEIICHI OKUYAMA @soku26

(17/29)それをベースに各施設で工夫をして頂いた。各施設にお願いした救出作業に関するアンケートから計算すると、すべての洗浄作業にかかった労力は、約1040人日(推定)と考えている。植物標本については、状態の悪いものから、各施設に送付を行ったのだが、 #jmuse0308

2012-03-09 23:52:41
SEIICHI OKUYAMA @soku26

(18/29)被災標本の洗浄・乾燥作業は、通常の標本作成の作業と似ているため、各施設の通常活動体制と設備を、修復作業に活用できたという利点があった。  陸前高田市博の昆虫標本については、約240箱のドイツ箱を岩手県博に搬入、 #jmuse0308

2012-03-09 23:52:41
SEIICHI OKUYAMA @soku26

(19/29)そのうち136箱を全国の博物館等19箇所に輸送(5月7日~)。その後、昆虫担当学芸員協議会ML等で、被災標本の洗浄方法について議論が行われた。昆虫標本では、比較的状態の良いものから、各協力施設に輸送したが、 #jmuse0308

2012-03-09 23:52:42
SEIICHI OKUYAMA @soku26

(20/29)津波による被害をうけ土砂や塩を浴びた標本の修復は専門家にとっても未経験であり、蝶や蛾、甲虫類やトンボなど分類群ごとに洗浄方法が異なるため、様々な試行錯誤が専門家の間でなされた。  被災標本の受入自体にも調整が必要だった。 #jmuse0308

2012-03-09 23:52:43
SEIICHI OKUYAMA @soku26

(21/29)たとえば受入先の施設から「館内外に活動を認めてもらい、作業しやすくするためにも、公的な活動にできないか」という声があった。これは、岩手県立博物館館長名で公文書を出すことにより解決した。作業上の問題点としては、 #jmuse0308

2012-03-09 23:52:43
SEIICHI OKUYAMA @soku26

(22/29)作業場所の確保が最大の問題点であり、各館の工夫に頼る事が多かった。  地質標本は重くて不定形のため輸送に不向きで、劣化もしにくいため、陸前高田市博の地質標本は、陸前高田市の内陸部にある施設(旧生出小)で保管。 #jmuse0308

2012-03-09 23:52:44