新潟大学藤堂先生の原子力防災に関するお話

3月11日新潟県長岡市「原子力防災を考える長岡市民の会」 新潟大学藤堂史明先生のお話をまとめました。 新潟市でのお話のまとめはコチラ↓ http://togetter.com/li/253091
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藤堂史明 @FumiakiToudouTW

長岡市中央図書館で開催の「原子力防災を考える長岡市民の会」より帰宅。30名程度の参加がありました。 http://t.co/NvH67ZjD

2012-03-11 18:38:36
藤堂史明 @FumiakiToudouTW

冒頭に主催者より東電福島原発事故の復旧作業現場等の写真による紹介あり、続いて45分ほど「東電福島第一原発事故と原子力防災の考え方」と題して、お話ししました。

2012-03-11 18:40:38
藤堂史明 @FumiakiToudouTW

ちなみに、「東電福島第一原発事故と原子力防災の考え方」とわざわざ「東電」とつけているのは、原子力防災の考え方においても、原発そのものの問題についても、東京の電力を地方が供給し、リスクも負うという構造があることを忘れてはならないからです。

2012-03-11 18:42:16
藤堂史明 @FumiakiToudouTW

1 .はじめに、「大震災と原発事故と状況認識 と題して、世界史上初の3 機メルトダウン、広島原爆換算セシウム137で168発分以上の放出、炉心の解体まで 20 年以上。セシウム137汚染が 4 分の1になるのに60年。私たちに一生、ついてまわる問題ということと、

2012-03-11 18:48:41
藤堂史明 @FumiakiToudouTW

(・・承前)、脱原発(原子炉の停止、廃炉等)が実現しても、(使用済)核燃料は、危険なままであり、災害発生時の防災体制の構築が必要であることを述べました。

2012-03-11 18:49:57
藤堂史明 @FumiakiToudouTW

続いて、政府の対応の概観について述べました。避難: 「警戒区域」20 km 圏、 「計画的避難区域」、特定避難勧奨地点(ホットスポット)及び食品安全基準等。また、事故収束作業が続く中 「除染」、 「がれき処分」と合わせ、放射線の「正しい知識」の普及など、内容に問題がある事。

2012-03-11 18:54:28
藤堂史明 @FumiakiToudouTW

続いて、既に基本的な事項ではありますが、加えて、放射性被曝に安全基準はなく、日本政府の採用する(してきた) ICRP 、IAEA、BEIR等の採用してきた、しきい値なし線形被曝リスクと、低線量での論争を、児玉龍彦『内部被曝の真実』幻冬舎、2011年を参照して述べました。

2012-03-11 18:58:03
藤堂史明 @FumiakiToudouTW

安全性の閾値(しきい値)はない中、ICRP 勧告に準拠して策定されてきた一般公衆:年 1 mSv、職業人: 年 20mSvについても、 基本的には功利主義的に効率化(正当化、最適化)するという考え方で、経済的な概念としての安全であるという点を確認。

2012-03-11 19:00:15
藤堂史明 @FumiakiToudouTW

つまり、このような相対的なリスクを便益で正当化するという安全性(経済性)の考え方は、リスクと便益の受益、負担者が異なる格差構造の中で議論されてきたこと。原子力産業を推進する原動力に、被曝労働や、原子力立地地域へのリスクの転嫁と利益の享受の乖離があるということについて述べました。

2012-03-11 19:02:33
藤堂史明 @FumiakiToudouTW

続いて現行の原子力防災について解説。基本的法令に、JCO 事故 ( 1999年 9 月 30 日)後の原子力災害対策特別措置法(1999年 12 月 17 日制定)、原子力施設等の防災対策について(防災指針)・環境放射線モニタリング指針( 両者、2008 年改訂)がある。

2012-03-11 19:06:06
藤堂史明 @FumiakiToudouTW

これらの基本枠組みの下、各種防災計画:指定行政機関の防災業務計画、地域防災計画(関係都道府県、市町村)、原子力事業者防災業務計画(原子力事業所ごとに事業者が作成)、指定公共機関(日本赤十字社、日本原子力研究開発機構、各電気事業者等)の防災業務計画があり。

2012-03-11 19:07:36
藤堂史明 @FumiakiToudouTW

続いて、原子力災害対策特別措置法上の、第十条「原子力防災管理者の通報義務等」、第十五条「原子力緊急事態」について、述べた。現在、東電福島第一原発については、原子力緊急事態は継続されている。

2012-03-11 19:11:54
藤堂史明 @FumiakiToudouTW

続いて、原子力災害時の対応組織について、原子力災害対策本部 、緊急事態応急対策拠点施設(オフサイトセンター (Off-site Center: OFC )内におかれる「原子力災害現地対策本部」、「都道府県災害対策本部」以下の「原子力災害合同対策協議会」等について説明。

2012-03-11 19:17:16
藤堂史明 @FumiakiToudouTW

オフサイトセンターについては、原子力事業所との距離20km 未満、緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム: SPEEDI、緊急時対策支援システム: ERSSを備えること等の要件があること、それらが東電福島原発事故時に隠蔽含む種々の理由で問題を生じたことを述べた。

2012-03-11 19:21:02
藤堂史明 @FumiakiToudouTW

従来の原子力防災計画について、特徴的なのはやはり、想定される範囲が著しく狭いことだろう。「防災対策を重点的に充実すべき地域の範囲: Emergency planning Zone: EPZ 」に相当するのは、原発 から半径 10km 以内の範囲。

2012-03-11 19:25:07
藤堂史明 @FumiakiToudouTW

従来の原子力防災の実施計画においては、屋内・コンクリート屋内退避、避難の指示に当たり 、SPEEDIによる放射性物質の拡散予測、EPZ区域内を対象に、上記予測に基づく風下を対象とした避難を想定していた。このような避難計画を端的に表現すると「キーホール型」の避難計画と言える。

2012-03-11 19:33:24
藤堂史明 @FumiakiToudouTW

キーホール型の避難区域は、簡単に言うと、原子力施設至近の円+風下へ放射状に伸ばした区域となる。ただし、これについても、東電福島のケースでは、想定した避難地域の設定ができなかった。高汚染地域への避難による被曝が生じたことは、大きな問題。

2012-03-11 19:37:30
藤堂史明 @FumiakiToudouTW

これまでの原子力災害の想定例として、平成2 年(2010年)新潟県原子力防災訓練では、参加人数: 35 機関:500名+避難訓練:250名で行われ、柏崎市総合体育館、長岡市みしま体育館等への避難が訓練された。旧来の10キロ圏の避難想定であることに注意。

2012-03-11 19:40:53
藤堂史明 @FumiakiToudouTW

緊急時モニタリング体制のうち、第一段階のデータと、放出源データ、 SPEEDI、気象情報等を加味して予測(被曝)線量が推定され、防護対策区域(案)が策定され、避難開始となる。この時、炉心の状態、気象データ等の情報が欠ければ問題が生じる。垂直統合された防災体制の盲点と言える。

2012-03-11 19:45:52
藤堂史明 @FumiakiToudouTW

この辺のデータ収集と避難の遅れの問題については、防災計画の改訂方針の、予防防護措置区域PAZ(特定事象発生時の即時避難)の考え方にていくらか対応されているとも言えるが、半径5kmではあまりにも狭い。情報の発表が遅れれば、いずれにせよ間に合わない。

2012-03-11 19:50:03
藤堂史明 @FumiakiToudouTW

避難想定区域の狭さは、従来の防災計画におけるEPZについてもそうであるが、改訂が予想される前出のPAZ(予防的防護措置準備区域,5km)、UPZ(緊急時防護措置準備区域,30km)、PPZ(プルーム防護措置実施地域,50km)の範囲についても、全体に小さめに想定されている。

2012-03-11 19:54:45
藤堂史明 @FumiakiToudouTW

これでは、東電福島原発事故の際、ERSS、SPEEDIの問題に加え、オフサイトセンターが被災、放射線防護設備、気密性などの欠如により機能不全となったことなど、想定の甘さの伝統を繰り返すことになりかねない。少なくとも、既に生じた災害規模に上乗せして防災計画を立てるべきではないか。

2012-03-11 19:58:33
藤堂史明 @FumiakiToudouTW

その他、東電福島原発事故の事例を踏まえて原子力防災の問題点を挙げると、放射性ヨウ素に対する安定ヨウ素剤の予防服用が、手順どおりにはまったく機能せず、自主的配布事例しかなかったこと、交通網の寸断、渋滞による避難経路の問題がある。交通手段の確保という避難の基本課題が解決できていない。

2012-03-11 20:01:40
藤堂史明 @FumiakiToudouTW

後半、やや端折って報告した。基本的には、原子力防災計画については、根本的な見直し我必要であるが、この際、原子力産業によって利益を得てきた立場から専門家や政治家が、利益を出すために策定を行うと、リスクの過小評価と費用の出し惜しみにつながる可能性がある。

2012-03-11 20:05:00
藤堂史明 @FumiakiToudouTW

原子力立地自治体・周辺自治体が原子力防災計画を改訂する際には、このような、利益をもたらす原子力、のモデルを崩したくないという、政治的思惑が、過小な体制へとつながらないように、注意が必要。また、利益を出さない原子力関係事業ということで、財源の問題が生じることが必定。

2012-03-11 20:06:34