整備兵氏(@seibihei)による「戦術の基礎(D. Wyly海兵隊大佐)」("Maneuver Warfare Handbook"付録)翻訳・第2課―1
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第2課 任務戦術 任務戦術の考え方は、「表面と間隙」のように、常に戦闘に反映されてきた。この名前はドイツ語の「Auftragtaktik」、直訳して「任務戦術(原文ママ。日本語では『訓令戦術』」から来る。
2012-03-11 23:48:57この名称に「戦術」と付くのは、何の不思議もない。部下に任務を与え、遂行は部下に任せることがこの戦術である。部下に主動的にどうするかを決定させることが、現場に最も適切な決心し、敵が反応するより速く行動するための方法となる。
2012-03-11 23:53:54敵より一歩先んじるために必要な、迅速なテンポで作戦を遂行するため、部下には高度な主動性が承認される。このように敵よりも速いペースで行動したならば、敵の全ての決心は、それを実行するまでの時間の経過によって、我の行動に対処するにはふさわしいものでなくなる。
2012-03-12 00:02:00任務戦術を学ぶ上で、以下のモルトケが好んだエピソードなしで語ることはできない。彼はこれを1870年の普仏戦争の時期に何度も繰り返し語ったし、また最近ではトレバー・デピュイが彼の著作「戦争の天才」に書いている。
2012-03-12 00:09:41フリードリッヒ・カール公が、戦術的な失敗を犯した部下の少佐を叱りつけていた。その少佐は「命令に従ったのです」と弁解し、「上官の命令は国王陛下の命令と心得よ」というプロイセン陸軍の規則を持ち出した。
2012-03-12 00:13:36しかし、フリードリッヒ・カール公は気にも留めず、こう言った。「国王陛下は、君が命令に従ってはならない時があることを知っていると思って、君を少佐に任命したのだよ」と。
2012-03-12 00:15:01そして、これがまた「任務戦術」の主要素でもある。部下は、上官の命令が変更を要するものになっているかどうかの検討も含め、自分で何をするかを自分で決定する。
2012-03-12 00:18:28任務は不可侵である。任務は変えてはいけない。しかし、そのアウトプットをどう作り出すかは変えるべきであり、どのようにすべきか、どのようにすべきではないかは、知的な部下指揮官に任されるべきである。
2012-03-12 00:19:59任務戦術を学生に教えるために、何度も繰り返し使われてきた古典的な例がある。これは単純で価値があるので、今回も使わせてもらおう。ある指揮官が「渡河せよ」との任務を受けた。部隊がある川を渡ることが、上官の企図である。指定された経路は、一番近い橋を渡るものであった。
2012-03-12 00:24:15しかし、部隊が橋に近づくと、その橋は破壊されていたのだ。指揮官はそこで立ち止まるべきではない。新たな命令を受ける必要もない。経路変更の許可を受ける必要もない。近場の数km離れた渡河点に行って渡ればいい話だ。
2012-03-12 00:26:36もちろん、できる限り早く、そのことを上官に報告しなければならない。しかし、待ってはならない。任務戦術とは、作戦を迅速に進めるために必要なものであり、敵を混乱させ続けるために必要なものなのだ。
2012-03-12 00:28:40攻撃開始線と、隣接のB中隊との境界線に注意せよ。我が大隊は南から北へ攻撃する。攻撃開始線はH時に通過する。目標Aは手前の丘で、目標Bは奥の丘である。まずは動きの遅い戦闘要領の例から見ていこう。
2012-03-12 00:34:25君はA中隊長だ。大隊の任務はR6(戦場を横切る道路)を、M河(隣接中隊との境界)より西側(A中隊側)において、敵が使用するのを拒否することである。命令は、この伝統的な戦術に慣れているならば、いつも見慣れたものであろう。
2012-03-12 00:36:58A中隊に与えられる命令は、このようなものになろう。「H時に攻撃を開始し、目標Aを奪取。別命により、攻撃を続行して、目標Bを奪取。敵によるM河以西のR6使用を拒否するため、防御陣地を構築」
2012-03-12 00:38:59この命令について少し考えてみよう。君は敵がいるいないに関わらず、目標Aを攻撃しなければならない。命令ではそうなっている。命令が下されたときには、目標Aに敵がいたのだろう。しかし攻撃開始線を通過した時には、その状況は変わっているかもしれない。
2012-03-12 00:41:24古い形式の命令では、敵情が常に変化するという否定できない事実を、必ずしも考慮に入れていないのだ。そして、別命により目標Bを攻撃し、その後、防御陣地を構築する。これは、まさにこの順番で、君がそうするべき行動であろう。しかし、そうでない場合もあり得る。
2012-03-12 00:44:39本当にどうすればいいのかは、命令を発出した段階では予測がつくものではない。敵は彼らがやりたいように動くのであり、我が敵にやってほしいように動くものではない。
2012-03-12 00:46:29それは橋を渡す工兵とは違う。架橋するのであれば、作業を開始してから、作業を完了するまで、対岸は動くものではないだろう。しかし、歩兵としては、状況は違う。
2012-03-12 00:48:50歩兵にとってたった一つ確かなことは、攻撃を開始した後で、「対岸」が開始前の状況と同じに留まることは、決してないということだけだ。
2012-03-12 00:50:44さて、任務戦術における命令を見てみよう。状況は同じである。命令が出されたとき、目標A・Bには敵がいたかもしれないし、いなかったかもしれない。とりあえず、それぞれに1コ小隊ずついることにしようか。
2012-03-12 00:52:35