山本七平botまとめ/『日本の組織の問題点』~機能集団ではなく「共同体」である事の長所・短所~

岸田秀との対談集『日本人と「日本病」について』より抜粋引用。
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山本七平bot @yamamoto7hei

①【山本七平:以下[山本]】問題は日本の場合は、全般的な統制はなかなかできないということです。その必要がない間、つまり膨張していける間はいいんですが。これは経済の面でも出てくる問題でしょうね。<岸田秀との対談集『日本人と「日本病」について』より

2012-03-11 18:26:05
山本七平bot @yamamoto7hei

②【岸田秀:以下[岸田]】特に日本の場合は難しいですね。それぞれの共同体をまとめて、一段上の規模の大きい共同体を作らねばなりませんから。

2012-03-11 18:55:59
山本七平bot @yamamoto7hei

③【山本】例えば兵団の団隊長会同――部隊長とか旅団長が集まってする会議――の時、私はカバン持ちで後ろに立ってた事があるんですが、何か聞かれると部隊長が答えるんでカンニング・ペーパーをさっと出す。 【岸田】今の国会の答弁の時と同じですね。

2012-03-11 19:26:06
山本七平bot @yamamoto7hei

④【山本】そうなんです。そういう会議の場合、状況が上手くいかなくなると、それぞれ自分の部下がかわいいから、決定的な局面に立たせるのは嫌だという事になる。どうしても全員応分に犠牲を負担しろという結論になっちゃうでしょう。

2012-03-11 19:56:03
山本七平bot @yamamoto7hei

⑤【山本】すると、ある場所を支牚点として、全滅しても構わないからそこを持ち堪えている間に、他の部隊が別の方面から行って全体として勝ちを収めるという様な作戦ができなくなるんですね。

2012-03-11 20:26:16
山本七平bot @yamamoto7hei

⑥【山本】ただひたすら頑張れといわれて崩壊するまで頑張りますけど、崩壊するとちょうど一家離散みたいなもので二度と再編成できない。

2012-03-11 20:56:05
山本七平bot @yamamoto7hei

⑦【岸田】その辺がヨーロッパの軍隊と違うんですね。ナポレオンなんかは実によくそういう作戦をやった。ある部隊の全滅を最初から想定して、その犠牲において全般的に勝利を占めるという戦略です。

2012-03-11 21:26:07
山本七平bot @yamamoto7hei

⑧【山本】アウステルリッツの戦いがそうですね。ナポレオンの右翼は敵軍との比率が一対四ぐらいで、そこは沼地やなんかだったから、ひたすら死守せよ、と命令される。そこが弱点だと思うから、オーストリアやロシアの援軍が攻め込む。

2012-03-11 21:56:05
山本七平bot @yamamoto7hei

⑨【山本】結局、その地点では負けそうになるんですが、ナポレオンの主力は一気にそこへ向かっていく敵の側背を衝いて全滅させるというような事をやった。 【岸田】日本軍は共同体だから、皆が張り切って戦闘していなくちゃ気がすまない。だから、捨て駒はつくれないんです。

2012-03-11 22:26:09
山本七平bot @yamamoto7hei

⑩【岸田】日本の暗号が簡単に解読された一因がそこにあるんです。アメリカ軍は必要なところにしか暗号解読の乱数表を送らないのに、日本軍は作戦に関係のない部隊にまで乱数表を送ってるんです。送らないと、俺たちを除け者にするのかと文句がくるわけです。

2012-03-11 22:56:02
山本七平bot @yamamoto7hei

⑪【岸田】ああ、今他の部隊はこんな事をやって頑張っている、俺たちも……という意識が必要なんですね。その過程で暗号が敵方に筒技けになってしまった。一ヵ所が陥落すると、全休の作戦計画やあらゆる乱数表が揃っているから、敵は易々と手に入れる事ができたわけです。

2012-03-11 23:26:15
山本七平bot @yamamoto7hei

⑫【山本】今でも会社で、ある部署がやる事を皆が知っていないと、モラールが上がらないんじゃないかというような事がいわれますね。 【岸田】アメリカの企業なんかではそんな事はまずない。社員は自分の仕事が全体としてどう役立っているかなんて事は考えようともしないですね。

2012-03-11 23:56:06
山本七平bot @yamamoto7hei

⑬【山本】契約に基づいて、マニュアルどおりにやっていればいいんであって……。

2012-03-12 00:25:59
山本七平bot @yamamoto7hei

⑭【岸田】トラファルガー沖海戦の時、ネルソン提言は「諸君が各自の義務に忠実である事を期待する」と言い、日本海海戦の時、東郷提言は「皇国の興廃この一戦にあり。各員一層奮励努力せよ」と言ったとの事ですが、この二つの言葉の違いは英兵と日本兵の行動原理の違いをよく表わしていますね。

2012-03-12 00:56:00
山本七平bot @yamamoto7hei

⑮【岸田】英兵はそれぞれの限定された義務を忠実に履行すればいいんで、例えば通信員は通信の仕事をぬかりなくやっていればいいんで、その仕事が大英帝国の興廃にどうつながるかなんて考えない。

2012-03-12 01:25:57
山本七平bot @yamamoto7hei

⑯【岸田】日本兵の場合は、自分の奮励努力が皇国の興廃を左右すると思えないと頑張れない。日本兵というのは、自分のやっている事が全体の目的にどう役立っているか、常に知りたがるわけです。

2012-03-12 01:55:58
山本七平bot @yamamoto7hei

⑱【山本】そうですね。しかしまた、そうした事でバイタリティが出てくるところもある。隣りの部隊に、お前、大変な事をやっているな、頑張れよ、なんて言われると、それでまた力が出てきたりするわけです。一種のコミュニケーション……。

2012-03-12 02:25:51
山本七平bot @yamamoto7hei

⑲【岸田】俺はやってるぞ、という気になるわけ。 【山本】ま、いい点もある。 【岸田】プラス、マイナスなんですよ。それが戦争においてマイナスに出たという事は、兵隊が次々死んじゃうからなんです。死んじゃうと人間関係でもっている共同体は崩壊しますから。

2012-03-12 02:55:58
山本七平bot @yamamoto7hei

⑳【岸田】日本兵が捕虜になった時に極端に意気地がなかったというのも、共同体から切り離されると、戦意をまるっきり失っちゃうからでしょうね。あちらの兵隊は、捕虜になったら、捕虜になったという条件のもとで可能な義務を果たそうとするんですが。

2012-03-12 03:25:55