避難区域見直しに伴う新たな賠償指針について、TAKASHIMA Hidehiro さんが解説してくれました。
【損害賠償】(1)原子力損害賠償紛争審査会が,3月16日の会合で、新たな賠償指針を決定。昨年8月策定した中間指針の「第2次追補」との位置づけ。→http://t.co/QxsBzgkv http://t.co/t9jlAJRt
2012-03-17 11:31:08(2)政府は、3月中にも,現在の「警戒区域」「計画的避難区域」の2区分を、「帰還困難区域」(年間被曝線量50mSv超)、「居住制限区域」(同20mSv~50mSv以下)、「避難指示解除準備区域」(同20mSv以下)の3区分に再編する方針であり,今回の第2次追補はこれを受けたもの。
2012-03-17 11:31:35(a)5年以上帰還できない「帰還困難区域」では、精神的損害への賠償として1人あたり600万円(月10万×5年分)を一括して支払う。
2012-03-17 11:32:36(c) 5年以内に帰還できる可能性がある「居住制限区域」については2年分(240万円)の慰謝料を一括で支払い、帰還が延びるごとに追加で受け取るか、月払いかを選べるようにする。
2012-03-17 11:33:09(e)昨年9月末に解除された「緊急時避難準備区域」の住民への慰謝料は今年の8月末で打ち切る。局所的に放射線量が高い「特定避難勧奨地点」では、慰謝料支払いの打ち切り時期を「指定解除後3カ月後を目安」とする。
2012-03-17 11:33:42(f)政府の避難指示が出なかった福島県内23市町村の住民のうち、妊婦や子供に対する慰謝料(昨年末分まで1人40万円+東電が20万円を自主的に加算)は、今年1月以降は合理性のある場合に限り継続。
2012-03-17 11:34:00(4)このように,中間指針2次追補では,避難区域の区分によって賠償対象期間に差が出る内容となっている。これに対し,福島県の地元町村長から「住民が分断される」と批判されている。→http://t.co/98bLdX29
2012-03-17 11:35:36(6)まず,「(a) 5年以上帰還できない「帰還困難区域」では、精神的損害への賠償として1人あたり600万円(月10万×5年分)を一括払い」については,一括支払い方式がとられること自体は妥当です。これにより,被害者は当面の生活資金を得られるからです。
2012-03-17 11:36:26(7)問題は,故郷およびそこでの生活関係の全体的喪失に対する慰謝料として,はたして600万円が妥当かどうかです。本来,このような価値の喪失に対しては,金銭をもって完全に償うことはできません。そもそも金銭では評価できないほど重要な価値だからです。
2012-03-17 11:37:05(8)それにもかかわらず,金銭によって評価しなければなりません。ここでは少なくとも,従来,ダム等の公共工事によって移転を余儀なくされた場合の精神的損害の補償額を下回ってはならないと考えます。
2012-03-17 11:37:24(9)他方,「(b)同区域の不動産は事故直前の時価で全額賠償」は,損害賠償法の原則からすれば当たり前ですが,適切な賠償の枠組みです。
2012-03-17 11:37:38(10)また,(f)「政府の避難指示が出なかった福島県内23市町村の住民のうち、妊婦や子供に対する慰謝料は、今年1月以降は合理性のある場合に限り継続」については,誰がどのようにして合理性を判断するのかが重要なポイントですが,この点はニュースでは明らかにされていません。
2012-03-17 11:37:52(11)もし合理性の有無を東電が判断するという枠組みであれば,狼に羊の番をさせるのと同じであり,構造的に問題がありますから,この点のチェックが必要不可欠です。
2012-03-17 11:38:09(12)なによりも,この第2次追補もまた,賠償の「最低限の目安」に過ぎないことが重要です。上記の賠償だけ行えばそれで済む訳ではありません。
2012-03-17 11:38:24(13)これを超える賠償や,これ以外の被害者の賠償については,集団あるいは個別に,東電に対する民事訴訟を提起することになります。日弁連や各地域の弁護士会によるサポートが必要です。
2012-03-17 11:38:46