ストライクウィッチーズ関連、高角砲・対空射撃について【SW設定妄想垂れ流し-033】

主に艦艇から行われる対空射撃についての解説です。 沿岸から輸送船団攻撃に進出するネウロイに対して護衛の艦艇は如何にして射撃を行っているのか? 思いを馳せて頂ければ幸いです。
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M-鈴木 甲28 @kapitan_black

さて、諸兄にあっては高角砲と高射砲が如何に有効な打撃を得にくいものであるかを感覚的に理解頂いているクチは極めて少数だと思う。(私だって未体験だ) #ス魔考

2012-03-17 07:31:28
M-鈴木 甲28 @kapitan_black

何故、唐突にこんな事を書き始めたかと言うと、そこそこミリな人だと思っていた友人に、数字込で話をしたら酷く得心していた様子だったからです。 #ス魔考

2012-03-17 19:29:47
M-鈴木 甲28 @kapitan_black

では、まず空中の機動目標にどうやって対空砲を命中させるか?を説明しましょう。機関銃や機関砲で狙う行為はまだ感覚的に理解できるとは思いますが(思うだけ)、砲を当てるのはトンでも無い難儀な行為です。何故ならば、例えば爆装した航空機を例に取ってみましょう。 #ス魔考

2012-03-17 19:31:34

250kgや500kgや800kgなんて重量物を航空機がぶら下げれば、空気抵抗の点でも重量の点でも、航空機の自由を極端に制限します。水平飛行を行うだけでも迎え角を増やすかフラップを展開して揚力を増大する必要に駆られますが、それは速度と運動性能を低下させるからです。

M-鈴木 甲28 @kapitan_black

爆弾を抱えて接近する(又は投弾のチャンスを伺う)航空機が時速340km程度だと仮定しましょう。するとその速度は1秒間に94mになります。航空機の全長はせいぜい10mですから、自身の大きさの9倍の距離を移動する目標と言う事になります。 #ス魔考

2012-03-17 19:36:31

ここで上げる数値は、対艦攻撃に使用される可能性が高い、艦載機=単発機です。念の為

M-鈴木 甲28 @kapitan_black

しかも、目標は良くても高度3000m程度を飛行している場合が多く、対空砲を売った場合、距離と高度から概ね5000m先の目標を撃つと仮定してみます。すると対空砲の速度が初速でも7~800m/sですから、目標の近くに届くまで6~9秒かかる事になります。 #ス魔考

2012-03-17 19:38:52
M-鈴木 甲28 @kapitan_black

仮に8秒だとすると、目標はその間に700m以上も移動しています。航空機の旋回半径を語るまでも無く、その間に操縦桿とフットバーを操作すれば、予測位置から50mくらいずれる事もあり得る訳です。 #ス魔考

2012-03-17 20:06:17
M-鈴木 甲28 @kapitan_black

そんな目標に、直撃させるのはほぼ不可能です。しかも、弾丸は距離と角度により、速度も弾道も変化しますので、単純に照準器の中心に目標を入れて撃っても命中しません。それどころか距離4~5kmの10mの目標は視差角0.15°位しか無いのです。 #ス魔考

2012-03-17 20:09:29

ざっくり言うと0.15度は1/6度くらいです

M-鈴木 甲28 @kapitan_black

つまり、弾丸が目標の位置に到着するタイミングに、その位置に到着すように射撃をして相手が予測通り動いても、射撃時の方向が0.075°ずれていたら、命中しません。無理です。そこで解決策が考えだされます。 #ス魔考

2012-03-17 20:15:28
M-鈴木 甲28 @kapitan_black

大きな弾を爆発させて、沢山の破片を発生させて、その破片で破壊すると言うもの。対空砲の誕生です。但し破片はあっと言う間に速度が落ちて威力がなくなりますし、距離が離れれば密度も下がるので、目標を破壊する事が出来ません。 #ス魔考

2012-03-17 20:17:32
M-鈴木 甲28 @kapitan_black

一般的に破片と火薬と材質にもよりますが、これは5inch砲(12.7cm砲)で半径100mに達する事はありません。とは言え、大目に見て半径100mもの有効半径を持つとしましょう。これが目標の近く(100m以内)で爆発すればいいとすると・・・ #ス魔考

2012-03-17 20:18:37
M-鈴木 甲28 @kapitan_black

目標の高度と距離と速度と向きの測定が正確で、未来位置が正確で、自分の水平が保たれているならば、誤差が1°あても破片が命中する事になります。素晴らしい、これならバタバタ敵を落せそうです。・・・・難しいですが・・・・しかし、それも無理なんです #ス魔考

2012-03-17 20:21:56
M-鈴木 甲28 @kapitan_black

問題は、いつ爆発させるか?だからです。対空砲が射撃してから何秒後に爆発するか?は発射時に設定しなくてはいけません。(射撃盤の入力で装填時に自動化されては居ても)もしそれがずれたらどうなるか?例えば秒速600mの弾丸が、目標から100m以内で爆発する為には #ス魔考

2012-03-17 20:23:53
M-鈴木 甲28 @kapitan_black

1/6秒(0.17秒)以下の精度で爆発のタイミングを合わせなくてはいけません。しかし光学観測で距離を測定するのは難しいので、普通に撃っても滅多に都合のよいタイミングで破片をばらまいてはくれないのです。 #ス魔考

2012-03-17 20:25:18

書き忘れましたが、目標が射撃側から見て同じ距離を維持するとも限りません。斜めに接近する経路だったなら、時間と共に距離が近くなるので、信管の時限調整も短めにする必要があります。

当然、信管の調整が甘ければ、目標のはるか手前で爆発してしまい、有効な打撃にならないか、目標の後方で爆発してしまい、全く影響を与えないかになってしまいます。

M-鈴木 甲28 @kapitan_black

高角砲の射撃では距離測定・信管時限調整が極めて重要と書きましたが、そこで新たな兵器が登場します。 #ス魔考

2012-03-18 13:45:56
M-鈴木 甲28 @kapitan_black

レーダー(電波探信儀/電波警戒機)です。これは目視や望遠鏡での光学観測が角度分解能で高い数値を発揮するのに対して、反射した電波のタイミングでの距離測定機能が突出している索敵手段です。 #ス魔考

2012-03-18 13:48:04
M-鈴木 甲28 @kapitan_black

つまり、レーダーと対空高角砲の信管調整を連動すると、より正確な爆発のタイミングを設定できる事になります。 #ス魔考

2012-03-18 13:52:55
M-鈴木 甲28 @kapitan_black

更に、レーダー技術は更なる進化形を現出します。VT信管(マジックヒューズ)です。これは発射直後から弾頭自体が電波を発して、反射波のドップラー効果も利用して、目標の至近距離で爆発するもので、時限信管調整の必要がありません。   #ス魔考

2012-03-18 13:55:03
M-鈴木 甲28 @kapitan_black

とは言え、こうした火器の改良と同時に目標である航空機の性能も向上しており、速度も運動性も上昇した結果、期待したほど有効打撃が増大する訳ではなかった様です。 #ス魔考

2012-03-18 13:56:48
M-鈴木 甲28 @kapitan_black

これに加えて、対空砲の旋回や俯仰角度変化の速度は目標よりも「遅い」場合すらあります。その場合、待ち伏せ的にあの目標を狙えで撃つしかありません。海が荒れて船がゆれても砲の向きは変わります。船が移動する速度は案外馬鹿にならず航空機の1/10~1/20もあり、これも影響します #ス魔考

2012-03-17 20:29:02
M-鈴木 甲28 @kapitan_black

如何でしょうか?高角砲による射撃が、目標を捕捉して、有効な射撃となるのには、想像以上に問題が存在し、当時の対空砲操作員はとんでもない苦労をしていた事を御理解いただけたのではないでしょうか? #ス魔考

2012-03-17 20:29:09