整備兵氏(@seibihei)による「戦術の基礎(D. Wyly海兵隊大佐)」("Maneuver Warfare Handbook"付録)翻訳・第2課―2
前:第2課―1
FMFM3「指揮幕僚活動」では、任務には「誰が、どこで、いつ、そして何故が、情報の協同と統制のために必要とされる」と書かれていた(当時)。この法則も、定型的すぎる。
2012-03-18 00:01:38しかし、しばしば、時間的なスケジューリングは作戦に硬直性を与えることがある。作戦とは時計を元に考えるべきではない。それは、敵を元に考えるべきだ。
2012-03-18 00:08:37敵は、君の時間的なスケジュールを考えて作戦するわけでは決してない。この点が、命令を与える時に形式にこだわりすぎると危険を招くという例の一つである。
2012-03-18 00:10:11任務戦術による命令のガイドラインとしては、いつでも口頭命令を与えるべきだ、ということがある。第2次世界大戦で第11装甲師団の指揮を執ったヘルマン・バラク将軍は、書面による命令を常に嫌がった。
2012-03-18 00:13:55彼の指示は「全ての命令は口頭であるべきだ」というものであった。この指示を出したのは、おそらく書面による命令が多すぎたからであろう。ドイツ軍においては、実際には口頭命令が多かったものが、時代によって書面に記録されるようになったのだろう。書面の命令は遅いものだと思われていた。
2012-03-18 00:18:20バラク将軍が実施したことは、払暁の攻撃のためには前の晩に指揮官を集め、各人に対して口頭で命令を与えたことだ。隷下指揮官と顔と顔を突き合わせて接触したことは、誤解を排除するうえで重要だった。
2012-03-18 00:21:28隷下指揮官がそれぞれの部隊に戻った後、攻撃開始の時期が来た時に、バラク将軍は無線又は有線で以下のように指示した。「命令に変更なし」と。これは敵情に変化がないときであり、何か変化があれば、その時点で変化についてのみ知らせた。
2012-03-18 00:23:30このようなやり方で、彼は命令を簡潔なものとし、また作戦を迅速に進めた。バラク将軍の好きな言い回しとして「懸命になるな。早くしろ」というものがある。ここにおいて、偉大な指揮官はスピードを重んずるということが分かる。
2012-03-18 00:26:45時として、当初の命令も簡潔な場合がある。通常信じられているのに反し、実際には、師団や軍団、軍の命令よりも、現場の小部隊に対する命令の方が詳細にわたり、長文な場合がある。
2012-03-18 00:30:38我々は、何度逆のやり方をしてきたことであろうか。ひとたび当初の長文にわたる命令が発出されていれば、それが上手く書かれていれば、戦闘間に出されるべきその後の命令は極めて短くて済むし、第一「その後の命令」を出す必要すら少なくなるかもしれないのだ。
2012-03-18 00:34:02当初は、それはごく簡潔に見える。それは上級指揮官の指揮の責任だと思える。しかし決心の多くは部下指揮官によるものである。この考え方をもっと学べば、任務戦術においては、各級指揮官により多くの技術、才能及び責任が必要だと分かるだろう。
2012-03-18 00:37:05指揮官は、何がアウトプットになるのかもっとよく知らなければならない。実行に移れば、何をやりたいかを正確に表現することが極めて難しいことに気づくはずだ。しかし、熟練した指揮官はこれをやらねばならないし、それは実践を通して得るほかない。
2012-03-18 00:39:56この課の最後の実習で、練成する機会はあるかもしれない。教場における練成では、常に以下のように聞かれる。「部下にどんな命令を与えるのか」と。こうした実習により、迅速かつ的確に応えられるよう練成される。
2012-03-18 00:42:55コインのもう一つの表面には、「命令を受ける部下も能力がなければならない」ということがある。アマチュアな部隊、臆病で、鈍重で、練度の低い部隊では、任務戦術による命令を遂行することはできない。
2012-03-18 00:45:08何故か?彼らの能力の不足から、彼らは「どうしなければならないか」まで命令されないといけないからだ。プロフェッショナルのみが、即ち経験豊富なリーダーのみが、言われずともやるべきことをやってのける;。
2012-03-18 00:46:46我々海兵隊では、練度を高く設定しているので、部下が任務戦術による命令を正しく遂行すると信じることができる。我々はそれを当てにできるのだ。
2012-03-18 00:48:58責任の重荷は、上級指揮官と部下の双方において増大する。まずは上級指揮官の方を見てみよう。任務戦術による命令では、彼の命令は「完全に明確」でなければならない。「具体的にどうするべきか」を言わずして部下に何が達成するべきかを伝えるのは、指揮官の責務である。
2012-03-18 00:52:50指揮官の企図を推察するのは、部下の責務ではない。指揮官は、「何をやってほしいか」を明確に伝えないといけない。そうでなければ、部下が自らの企図を達成すると期待するべきではない。
2012-03-18 00:54:491960年代の前半では、初級幹部が教育される基礎教育において、5項目の命令が教えられ、それを実施するように教育されていた。任務が与えられれば、何が具体的に達成すべき任務であり、何がそれに付随して達成すべき任務である、というように。
2012-03-18 00:57:33責任を負うためのもう一つの負担として、上級者は、下級者が失敗することを認めなければならない。「ミス0」を期待してはならない。戦争は人間により勝利するものであって、機械によるものではない。そして、人間はミスを犯すものである。
2012-03-18 01:03:06もしも、兵士が主動性を発揮することよりもミスを犯すことを恐れるのであれば、リスクを冒すことを嫌がり、主動性は発揮できなくなるであろう。すなわち、こうした軍隊は戦争に勝てない。
2012-03-18 01:04:38恐らく、任務戦術による命令を下す指揮官にとって最も重要な、そして新しい責任とは、部下を信頼することなのであろう。信頼が得られないならば、全ての組織は崩壊する。
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