NHK:マイケル・サンデル究極の選択「許せる格差 許せない格差」 書き起こし・ほぼ完全版
- toshihiro36
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眞鍋: やっぱり派遣労働者で普通に働いて正規の社員と条件が違っても、それによって自分が恩恵を受けていると思うのであればそれはそれでいいと思うんですけれど。たぶん不満に思っている人が圧倒的多数だと思うので、現在の社会では(派遣が)増えるというのは良くないことなのかなと思います。
2012-03-21 00:14:33猪瀬: それは派遣労働者にチャンスがあるかどうかということに尽きると思うんですね。派遣労働者にチャンスがあれば、派遣労働者が増えてもいいわけです。ところが今の日本の派遣労働者にはチャンスがない。そこが問題だと思います。
2012-03-21 00:17:35竹中: 日本では明らかにジャスティスが欠けている面もあってですね、たとえばこの若い人たちが…日本では終身雇用・年功序列ですから…みなさん若い人たちの方がたぶん能力があって、高い給料を持てるであろうにもかかわらず、
2012-03-21 00:23:47竹中: ある年代の人たちがその職場を占拠して、非常に長期の非常に安定した雇用環境にいるために、若い人たちが入っていけない。私はこれはアンフェアだと思います。
2012-03-21 00:26:06眞鍋: 周りの意見を聞いていて最初は不平等だと思ったんですけど、なんか平等なんじゃないかとちょっと分からなくなってきてしまって。日本の会社でも同じようなことがあるじゃないですか。他の会社より低い給料で、それでもいい人だけ来て下さい。
2012-03-21 00:32:14眞鍋: それがいやなら、いらないですよっていうことがあるので。なんかそれって悪いことなのかなって、みなさんの意見を聞いていてちょっとわかんなくなってきました。
2012-03-21 00:35:10サンデル: きょう私たちは幅広い問題について議論を交わしました。経済的な格差と正義や公正さについての議論です。途中で自分の意見を変える人もいました。眞鍋さんは「考えが変わった」と言いましたが、他の皆さんはどうでしたか?
2012-03-21 00:38:25眞鍋: 本当に、あの…すごく新鮮な意見をたくさん聞けたんですけど、やっぱりいろんな人種の人がいっぱいいるので、またそういう人たちも入れて話をすると意見も変わってくるのかなというのは…それこそ最初に出たポジションでどう感じるかという話ですけど。そういうのにも興味がありました。
2012-03-21 00:45:28サンデル: 私たちは実に多くのテーマを議論してきました。格差の拡大は許せないことなのか。私たちの社会は、あるべき正しい姿から遠ざかろうとしているのか。あるいは許せる格差もあるのか。会社の給料や野球選手の年俸に差があるからこそ、人々はやる気を高め努力をし、成果を達成しようとする。
2012-03-21 00:51:32サンデル: それが社会全体にとって、より良い結果を引き出している。そう言い切れるのか。大きな哲学的な問題にもぶつかった。「何が正義かは、立場によって決まる」という意見があった。かつてソクラテスはこう考えた。「正義というのは最も力のある人間が決める」というものではなく、
2012-03-21 00:55:56サンデル: 経済力や軍事力とは無関係に存在しているはずだ。自分の立場を越えて、誰もが納得できる正義や公平さの基準があるはずだと。近代に入って、この考え方を進めた人がいた。ジョン・ロールズという哲学者だ。彼は無知のヴェールという考え方を唱えた。
2012-03-21 01:00:33サンデル: それぞれの社会的地位や立場、お金のあるなしに関係なく、共通の正義を見出そうとする一つの考え方だ。それは、こういうものだ。あなたが無知のヴェールに覆われ、自分の立場も相手の立場も、能力、周囲の状況も何も分からないと想像してみよう。
2012-03-21 01:04:24サンデル: 自分が金持なのか貧乏人なのか、健康なのか病気なのか情報が何もない状態で正義とは何かを問われた時、その時のあなたの答えこそが正義についての真の答えだというものだ。 このように、お互いにとって共通のルールを導き出そうとする時は、自分がいる社会的な立場から一歩離れ、
2012-03-21 01:08:58サンデル: 他人の視点に立って物を見るというのが、一つの方法だ。これにはあなたの想像力を発揮する必要がある。もし自分が打率わずか2割の野球選手だったら。もし貧しい家に生まれた移民労働者だったら。その時、人生についてどのように感じるか考えてみて欲しい。
2012-03-21 01:13:00サンデル: さあ、今日ここでの議論は実にすばらしいものだった。全員がそれぞれの違いや、お互いとの距離を乗り越えながら正義や平等について考え、社会が抱える格差の問題にどう向き合い、どう考えればよいか手本を示すことができたと思う。参加してくれて、どうもありがとう。
2012-03-21 01:17:50