整備兵氏(@seibihei)による「戦術の基礎(D. Wyly海兵隊大佐)」("Maneuver Warfare Handbook"付録)翻訳・第4課―1
前:第3課―2
統合参謀本部教範No.1「軍事用語集」によれば、「目標」とは「行動を行うための物理的な目標物、即ち、指揮官の計画のために奪取及び(又は)保持するべき戦術的実体」とされている。この定義は十分に明確である。
2012-03-24 01:31:53バジル・リデルハートは、この定義に反対している。彼の主張の一つとしては、「本当の目標は敵でしかありえない」ということがある。リデルハートの主張も明確であり、分かりやすい。特に、我々が攻撃しているか防御しているときには、敵を目標にしやすい。
2012-03-24 01:39:20しかし、「目標」という言葉は、統合参謀本部の用語に限らず使われているため、大幅な誤解を招いている。一部の将校は「目標という単語のために混乱するなどということはない」と明言しているが、もしそのことについて議論を始めたとしたら、様々な文脈でどう使われるかという自覚はないだろう。
2012-03-24 01:48:41ところが、海兵隊の中隊及び小隊の運用に関するドクトリンFMFM6-4では、「目標」とは戦術統制の手段に過ぎず、行動地域、境界、攻撃開始線、攻撃位置、前進軸、攻撃方向や統制線と同じように示される。
2012-03-24 01:59:44FMFM6-4に従うなら、我々は「目標」を統制手段の一つとすべきである。FMFM6-4では、統制手段としての目標を以下のように定義している。「攻撃の際に奪取されるか、通過されるべき地域か地形的な特性である。指定された目標は、奪取されるか、支配される」と。
2012-03-24 02:04:09「目標」とは、「地域か地形的な特性」でなければならなかった。これは、リデルハートが主張した「目標とは敵である」という事に反する。
2012-03-24 02:11:40さらには、我々は次の文、即ち「指定された全ての目標は、奪取されるか、支配下に置かれるべき地域である」という目標だと知ることになる。
2012-03-24 02:13:02もし、我々が任務戦術についての議論に立ち戻り、また戦場においては不断に変化する敵情について考えるのであれば、FMFM6-4に書かれたような目標の定義では、作戦に硬直性を自動的に与えてしまう。
2012-03-25 00:52:29多くの海兵隊員は、当時のドクトリンでは、目標は地形であると決め打ちしていたわけではない、と論じている。とはいえ、FMFM6-4を読む限りでは、それは違うように思える。
2012-03-25 00:57:06そこでの定義では、「目標とは、(a)中隊又は小隊の行動範囲や前進軸の大部分を支配し、敵に占領されたならば、任務達成を不可能にする地形 (b)じ後の調整攻撃を発起するべき地形(cont)
2012-03-25 01:00:09(c)観測に制限を受けたり、支援火器の展開が必要とされるような地域において、攻撃を統制するために必要とされる地形の事である」となっている。海兵隊のドクトリンでは、明らかに、地形が目標となっていたのだ。
2012-03-25 01:02:12さらに、FMFM6-4での「目標とは、奪取又は支配されなければならない」との記述に立ち戻ると、我々は敵を完全に打倒するというより、地形の奪取と占領を行うための、範囲が決められた戦闘を行うことになる。
2012-03-25 01:05:02しかし、我々の軍事ドクトリン上の語彙においては、「目標」に第3の定義がある。戦いの原則における「目標の原則」だ。FMFM6-4にも、戦いの原則が列挙してある。「目標の原則」は以下のように書かれている。
2012-03-25 01:07:52「部隊の目標は、通常、任務の形で部隊に与えられるゴールである。この原則は他に優越する。これはどのレベルの部隊のどんな作戦にも適用される。部隊の目標は、ゴールの性質により、広範な、または詳細なものとして与えられる。」
2012-03-25 01:11:26「歩兵の小部隊は、それが構成する上級部隊の目標達成に貢献する。例えば、大隊目標が与えられた時、指揮下の部隊には、大隊目標を達成するのに資するそれぞれの目標が与えられる。戦闘の成功は、目標の達成度によって測られる。」
2012-03-25 01:15:12ここにおいて、FMFM6-4は、任務における「目標」を持ち出すことによって、その定義をさらに混乱させることとなった。目標の原則における「目標」は焦点を与えて目的を明確にするものだったはずなのに、言葉自体の定義はその逆のものとなった。定義はいまだに曖昧であり、明確化が必要だ。
2012-03-25 01:19:39