ザ・ファンタスティック・モーグ #1

翻訳チームによるサイバーパンク・ニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) ニンジャスレイヤー公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
ニンジャスレイヤー
alohakun 71407view 1コメント
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  • ニンジャスレイヤー @NJSLYR 2012-03-26 18:29:53
    第三部「不滅のニンジャソウル」より:「ザ・ファンタスティック・モーグ」 #1
  • ニンジャスレイヤー @NJSLYR 2012-03-26 18:42:22
    トレンチコートにハンチング帽の男は「半手動イクラ」22号店の細長い店内を壁沿いににじり進み、一番奥の硬い椅子に腰をおろした。他の客は判で押したように同じファッションである。耐重金属酸性雨ブルゾンを着、野球帽を被った中年男性達だ。1
  • ニンジャスレイヤー @NJSLYR 2012-03-26 18:50:39
    クローム風に塗装されたカウンターには友好的な笑顔のマイクロ・マネキネコが一座席に一体ずつ飾られている。男が腰掛けると、招く手がモーター駆動で縦に素早く動き、「ミャオーウー」という合成ウエルカムマネキネコ音声が発せられた。 2
  • ニンジャスレイヤー @NJSLYR 2012-03-26 19:02:47
    カウンターの向こう側で、イタマエ(とはいえ、この店においては何の技術も要らない仕事だ)が男を一瞥し、「ハイヨロコンデー」と抑揚のない声で言った。そしてドンブリにライスを入れ、カウンターに置いた。男はマネキネコの腹から生えた蛇口の下にドンブリを寄せた。 3
  • ニンジャスレイヤー @NJSLYR 2012-03-26 19:06:39
    「ミャオーウー」マネキネコの目が光り、蛇口から合成イクラがドボドボと溢れた。きっちり一定量で、合成イクラの噴出は止まる。合成イクラは魚貝由来タンパクとDHAから出来ており、既にショーユで味付けされている。男はスプーンを取り、黙々とそれをかきこんだ。 4
  • ニンジャスレイヤー @NJSLYR 2012-03-26 19:20:06
    この店は入場時にトークンを入れねば中へ入れない仕組みである。メニューもイクラ・ドンブリの一種類だ。合理的な構造である。そこへ敢えて、ライスを人の手でよそうというサービス・コストを乗せる事で、オーガニックな人間味を演出しているのだ。5
  • ニンジャスレイヤー @NJSLYR 2012-03-26 19:32:58
    彼はサラリマン時代、時間に追われ、こうした合理化チェーンで食事を摂ることがままあった。実際安く速いこうした店は、カロウシと隣り合わせのサラリマン、あるいは貧困下の者たちの栄養摂取の場だ。彼は感傷とも自嘲とも言えない不思議な気分に襲われる。 6
  • ニンジャスレイヤー @NJSLYR 2012-03-26 19:41:59
    今こうして口にするものは当時と同じものだが、彼自身は違う、何もかも……境遇も……生業も。(私も、思えばずいぶん遠くまで来たものだ。ガンドー=サン)無料で供されるチャを飲みながら、彼は一瞬の瞑想めいて目を閉じた。「……!」すぐにその目が開かれた。彼は音を立てて立ち上がった。 7
  • ニンジャスレイヤー @NJSLYR 2012-03-26 19:49:18
    彼の鋭敏なニンジャ知覚力はその時確かに、建物の外を通過したニンジャソウルを……そして、そのニンジャソウルの持ち主が発する、あけすけで邪悪な殺気を感じ取った。人を一方的に虐げる者が発する、怠惰な殺気を隠しもしない。練れていないサンシタのニンジャと見える。 8
  • ニンジャスレイヤー @NJSLYR 2012-03-26 20:37:41
    彼は振り返り、窓ガラスを上に引き開けた。ここは雑居ビルの三階だ。他の客の何人かが男の行動に視線を向けたが、再びすぐに食事に集中した。何らかのインシデントが発生しても、基本的には無視を決め込むのが奥ゆかしく、恥をかかない。ネオサイタマ市民を遺伝子レベルで支配する奇妙な道徳観だ。 9
  • ニンジャスレイヤー @NJSLYR 2012-03-26 20:41:39
    男は店員に会釈すると、いきなり窓枠を乗り越え、外へ飛び出した。代金前払いであるため、これは食い逃げでは無い。ただの異常な行い、あるいは自殺行為だ。それゆえ店員は濁ったガラスのような目で、一連の彼の動きを見ているだけだった。「イヤーッ!」 10
  • ニンジャスレイヤー @NJSLYR 2012-03-26 20:46:22
    ナムサン!繰り返すが、ここは雑居ビル三階だ。しかし男は落下途中で「明るくビル」と書かれたネオン看板につかまり、一息でその上に登ると、勢いよく跳躍した。「イヤーッ!」なんたる超人的身体能力!そう、彼はニンジャなのだ! 11
  • ニンジャスレイヤー @NJSLYR 2012-03-26 20:54:17
    彼は着地と同時に前転して落下衝撃を殺し、横路へ駆け込んだ。そして走りながらスリケン投擲!「イヤーッ!」「グワーッ!?」危機一髪!素早い判断力が老婆を救った。老婆は今まさに、その者のチョップで殺されるところであったのだ!手の甲にスリケンを受けて仰け反ったのは、やはりニンジャ! 12
  • ニンジャスレイヤー @NJSLYR 2012-03-26 20:58:46
    「アイエエエ!」老婆は地面にうずくまり、悲鳴を上げた。襲撃ニンジャが男を睨む。「何者だ!」「……通りすがりの探偵だ」男がトレンチコートを翻す。するとそこには……おお、ナムサン!赤黒い装束のニンジャが腕組みして立っていた!襲撃ニンジャが狼狽する「貴様は、ニンジャスレイヤー?」13
  • ニンジャスレイヤー @NJSLYR 2012-03-26 21:04:07
    「ドーモ、ニンジャスレイヤーです」赤黒のニンジャの姿をあらわした男は威圧的にオジギした。禍々しいその装束と「忍」「殺」のメンポこそ、この相手ニンジャを一目で恐れさせた外的アイデンティティである!「名を名乗れ!」「……ドーモ、ナイトサーバントです」 14
  • ニンジャスレイヤー @NJSLYR 2012-03-26 21:08:30
    「オヌシのカラテは、そこのご婦人相手に奮う程度のものと見なしてよいのか」「チィ……」ナイトサーバントが額の前で両腕を交差した。圧縮空気が噴き出し、その両手が凶悪な爪状武器で覆われた。「ナメてかかるがいい、八つ裂きにしてやる」ナイトサーバントの眼がギラギラと輝いた。 15
  • ニンジャスレイヤー @NJSLYR 2012-03-26 21:12:58
    ナイトサーバントには彼なりの覚悟があった。なぜここでニンジャスレイヤーに遭遇したのか、委細はわからぬ。だが、彼は事情通であった。ニンジャスレイヤーに狙われ、生きて逃れる事ができたニンジャは殆どいないと聞く。命乞いも無駄であるらしい。……ならば、殺してしまうのがよい。 16
  • ニンジャスレイヤー @NJSLYR 2012-03-26 21:23:42
    「噂には尾ひれがつくものよ。ベイン・オブ・ソウカイヤ?真実はひとつ!それをやったのはザイバツ・シャドーギルドよ!俺は詳しいんだ!」爪を打ち鳴らす!「貴様はその陰でコソコソしておっただけの虫だ!死ね!ニンジャスレイヤー!イヤーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」 17
  • ニンジャスレイヤー @NJSLYR 2012-03-26 21:34:27
    ナイトサーバントはニンジャスレイヤーを両腕の爪でバラバラに切り裂くビジョンを思い描いた。しかしそのビジョンは白く弾け飛んだ。彼の股間にスリケンが命中!「イヤーッ!」「グワーッ!」低空ジャンプパンチが顔面に命中!メンポごと顔面を叩き潰す!衝撃で背中が壁に叩きつけられる! 18
  • ニンジャスレイヤー @NJSLYR 2012-03-26 21:36:55
    「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」ニンジャスレイヤーの左手がナイトサーバントの胸を貫く!「アバッ!アバーッ!」「眼を閉じ、耳を塞いでおられよ」ニンジャスレイヤーは老婆に言った。だが気遣いは不要だった。老婆は既に、震えながらそうしていた。 19
  • ニンジャスレイヤー @NJSLYR 2012-03-26 21:42:07
    「アバーッ!アバーッ!」「私は今、オヌシの心臓を掴んでいる」ニンジャスレイヤーは地獄めいて言った。「アバーッ!」「インタビューだ。オヌシの主を言え。アマクダリ・セクトか?ツジギリか?スラッシャーか。目的は何だ。ミッションか?蛮行か?」「アバーッ!」「話せばカイシャクする」 20
  • ニンジャスレイヤー @NJSLYR 2012-03-26 21:46:31
    ニンジャスレイヤーの眼が赤く光った。「話さねば苦しみが延びるぞ」「アバッ、その心配は無用だ、絶対に言うものか!モハヤコレマデ!」ナイトサーバントは奥歯の濃縮ズバリカプセルを噛み溶かした。致死量の三倍のズバリが彼のニューロンを快楽と共に焼き、滅ぼした。「サヨナラ!」爆発四散! 21
  • ニンジャスレイヤー @NJSLYR 2012-03-26 21:59:57
    ニンジャスレイヤーは眉根を寄せた。自害……?彼はナイトサーバントの残骸を探った。携帯端末の類は無い。だが、単なる追い剥ぎ、スラッシャー、行き当たりばったりのサイコキラー風情が自害の準備など、するわけがない。「……」彼は老婆を振り返った。老婆は見返した。「終わったかね?」 22
  • ニンジャスレイヤー @NJSLYR 2012-03-26 22:04:53
    「……終わったが」ニンジャスレイヤーはトレンチコートとハンチング帽を拾い上げ、身に纏った。「ニンジャに暗殺されかかるとは、いったい何をしでかしたのだ。身に覚えは?」「アタシャ何もやましい事はしとらん!」老婆は叫んだ。「何て一日だい!」 23
  • ニンジャスレイヤー @NJSLYR 2012-03-26 22:08:05
    老婆は喚いた「爺さんの墓参りから帰ったら、家はメチャクチャ!マッポに行こうとすりゃ、さっきのニンジャ!そいつを殺したのも、またニンジャ(わかっとるか、アンタだよ)!おまけにそいつは、言う、言うに事欠いて、アタシが悪いだって!?悔しい!あんまりだ!」そして泣き出した。 24

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