第7話 「 鍵と金色の意味 」

光野 水栄（Yukue_Hikarino） @Hika_Rarala

【第7話の1】　「私は、『先生が決まるまでの間の先生』です。よろしくお願いします」さわやかに一礼した先生の顔は、いたずらっ子のように見えました。礼を返して、秋本くんが尋ねます。「習いたい先生が決まったら、その先生が、未咲ちゃんや琴子ちゃんや、ブルー・ブーケの担任になるんですか？」

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【第7話の2】　先生は、「いい質問ですね！」と、何もないところからボンッとテーブルを出しながら言い、「早速やりましょう」と、クッションに腰をおろしました。見ると、テーブルの周囲には、いつ置いたのか、人数分のクッションが並んでいます。考え込んだ顔のまま、全員、同時に席に着きました。

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【第7話の3】　「自己紹介とかは、無しですか？」ハルルが不思議そうに尋ねると、先生は、やはり、という表情で言いました。「今回は、省略します。次の新しい先生のために、とっておきのを考えておいてください」「そうきたか‥」未咲は、いつになく、真剣に考える顔になりました。

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【第7話の4】　秋本くんが、自己紹介のセリフを考えついたような表情に変わりました。「もう考えたの！？」「速っ！」未咲とハルルは、驚いた様子です。「ところで、」先生は、2秒だけ未咲の本棚を見て、視線をもどしてから、尋ねました。「あのマンガは、今も読んでるんですか？」「え？ ダメ？」

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【第7話の5】　未咲は、自分の額から頬へ、冷や汗が流れてゆくのを感じました。「逆です。正義の味方さんには、SF的な感覚も、けっこう大事なんですよね」先生は そう言って、誇らしそうな笑みを浮かべました。「じゃあ、本当に‥タイム・マシーンとか、魔法の鏡とか、」ピンポーン。

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【第7話の6】　（うそ！ 言ったとたんに？ なんで？？）未咲は、少しコワくなりました。まるで、言えば そうなるかのようで、不思議だったのです。ハルルと秋本くんも、同じ気持ちでした。「ラファエルが帰ってきたようですね」ささのみことが穏やかな声で言い、いつもの空気にもどりました。

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【第7話の7】　「未咲ちゃん！」「え？//」ふいに、秋本くんの手が、未咲に触れました。（もしかして、私のこと？///）それは、左右の鎖骨の間より少しだけ下の位置でした。そして、未咲の首から下がっている鍵を手にとり、言いました。「この金の鍵。いつからペンダントになったの？」「へ？」

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【第7話の8】　「それは、学校で手に入れたんですか？」先生が、穏やかな笑顔で尋ねました。「はいっ。教室で」「なんか、床に落ちてた‥」秋本くんと未咲が、一体なぜ！？―という表情で答えました。ハルルが、「教室？ ‥ああ、どうぞ、続けてくださいっ」と、あわてて言いました。

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【第7話の9】　「それは『金の鍵』といって、とても重要なアイテムです。おそらく、『重要』だから、学校に置いたんです！」先生は、品のいい私立の教授のような笑顔から、少年――といっても、善良な少年よりも、いたずらを企んでいる少年――のような笑みに変わりながら、確信に満ちて言いました。

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【第7話の10】　ラファエルは、未咲のパパとママにスーパーの袋を手渡しました。急な電話で未咲のママが忙しくなったと判断した ささのみことに、代わりにおつかいを済ませるよう命じられていたのです。そして、ラファエルは、2人にお礼を言われながら、穏やかな微笑で階段を上がってゆきました。

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【第7話の11】　ささのみことが、ふいに尋ねました。「雪の呪いとは、関係ありますか？」「ありません。ほかに質問は、ありますか？」先生が即答したところで、ノックの音。「どうぞ♪」先生が開けると、ラファエルが入ってきてドアを閉め、人間の白人風の姿から、もとの天使の姿にもどりました。

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【第7話の12】　「お、おかえりなさい」ハルルがノートの手を止めて言うと、秋本くんが立って「おかえり」と駆け寄り、先生と ささのみことも「おかえりなさい」と同時に言いました。ラファエルが「ただいま」と返すと、秋本くんが未咲に言いました。「おつかい、ありがとうって言った？」「あ！」

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【第7話の13】　未咲が立って歩いていって、お礼を言うのを、窓の外から見ていたのは、あの水色の小鳥でした。小鳥は、重そうに携帯電話を抱えてボタンを押し、だれかに連絡いたしました。その直後、急いで飛び立ち、空の雲にまぎれましたが、不思議な人が見張っていて、すぐに気がつきました。

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【第7話の14】　そこへ、シーララがやってきて、報告しました――黒ずくめの青年、タイスワールと戦ったときのことを。「気絶させたというのは、峰打ち（みねうち）ですか？」不思議な人が、尋ねました。「はい。しかしながら、」カサ‥「1秒後に、この紙に変わってしまって‥」「紙に？」「はい」

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【第7話の15】　――空を見ていた先生は、「挙動が‥アレですね」言いながら窓から離れ、着席して言いました。「2ページを見てください」―未咲がお茶を飲もうとした瞬間です。「ところで、授業料は発生しないんですか？」「しません。あとで説明しますね」秋本くんの質問に、先生が即答しました。

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【第7話の16】　2ページのカラーの図を見て、未咲たちは、理科の教科書のように感じました――が、秋本くんが手を挙げました。「質問ですか？」「この『非科学ゾーン』というのは、何ですか？」先生が答えようとした瞬間、「え？ ああ。これですね」「ほんとだ！」ハルルと未咲も気がつきました。

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【第7話の17】　先生は、一瞬、たくらんでいるような笑みを浮かべてから、爽やかに言いました。「説明します。この点線で囲った中が、『科学ゾーン』。点線じゃないほう、実線で囲った中の部分が、『非科学ゾーン』。そういう名前です。ここまでは、いいですか？」頷く、一同。先生は、続けます。

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【第7話の18】　「仮説や想像図っていうものを抜きにして考えた場合、あなたたちが学校で習うのは、この『科学ゾーン』の中での現象です。これは、天文学者が発見して、今の科学でわかっている部分です。私たちの銀河系も、この中です」―「なるほど‥」沈黙。「休憩にします」先生が言いました。

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【第7話の19】　7分後。授業の続きが、はじまりました。「そういえば、『じっせん』って？」未咲が、手を挙げて尋ねました。「『切れ目なく連続して引かれる線』のことです。ほら、点線だと、切れてるでしょ？」先生は、説明を言うのと同時に書いて見せました。「‥そっか」未咲は理解しました。

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【第7話の20】　ハルルが、「確かに」と言って、急になにか思い出した顔をしました。「何を思い出したんですか？」先生が、興味津津に尋ねました。「コトバンクに書いてあったのを思い出したんです。‥3日前くらいかな？」「何ですか？ それは」―「え？」ハルルは、頬に冷や汗を感じました。

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【第7話の21】　「未来から来たんだよね？」と、秋本くん。「ちょっと、ケータイ見ていいですか？」「どうぞ♪」先生に言われ、ハルルはポケットから黒いものを取り出し、ウィキペディアを見ました。それは、自分の時代からみた≪現在≫のネットでした。

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【第7話の22】　「2009年4月23日の正式発足時は」という部分が、斜め読みのハルルの目に、飛び込んできました。「すいませんっ、今、こっちは何年でしたっけ！？」「2007年ですか？」と先生。未咲は、指さしていいました。「それ、カレンダー」「2007年‥1月19日か。どうりで‥」

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【第7話の23】　「少し、レトロに感じましたか？」「はい。なんとなく‥」先生は、納得の笑みに変わり、2ページの図に話をもどしました。「さて、『非科学ゾーン』についてですが、これは、魔法学とか、そっち系の人たちだと思ってください。見かけ上、普段は存在しません」「『魔法学』って‥」

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【第7話の24】　秋本くんの表情が変わったのを見て、先生が尋ねました。「どうしました？ なにか、思い当たる節でも？」秋本くんは、少し考えてから、言いました。「魔法って、アニメや映画でしか知らないから、まだ、ピンとこないんです」「なるほど」先生は、わかります、という顔で頷きました。

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【第7話の25】　（なつかしいな‥）未咲は、ほのぼのと聞いていました。先生は、秋本くんの質問攻めを楽しんでいる表情です。（幼稚園の帰り道、不思議な先生をパパのとこへ連れてって‥こんな話をしたっけ‥）「はい。12ページを開いてください」「うそ！」それは、未咲も初めて習う章でした。