論文「『中欧』アイデンティティの夢と現実」(思想 No.1056) をめぐって (2012年3月)
明らかに私が出ていかないといけない話なのだけど、諸事情でまだ入手していないので控えます……ただ、顔ぶれを見た時点で嫌な予感がして、それがTLを見ている限りでは的中したようだということだけは書けそうな気配。
2012-03-30 22:48:58あと,「ドイツの『中欧(Mittel Europa)』」(18頁)って記述があるけど,僕の記憶が正しければドイツ語の綴りだとMitteleuropaですよね?
2012-03-30 22:52:39同じ論文の中で,「オスカール・ヤーシ」(16頁)「イシュトヴァーン・サボー」(14頁)といった表記(名・姓)と,「ハプスブルク・オットー」「ネーメト・ミクローシュ」(21頁)といった表記(姓・名)が混在するのはまずいでしょう。どっちかに統一すべきでは。
2012-03-30 22:59:12
羽場久美子「『中欧』アイデンティティの夢と現実 : 拡大EU・NATOのリアリティ」(『思想』No.1056 収載)
いまさら通読しましたが(これまでのツッコミ所はパラパラめくっていて見つけました),ちょっと予想の斜め上に酷いですねこれは……。 RT @nasastar 思想に掲載されている某論文を読んだよ。覚悟していたけど、斜め上で、驚愕すら覚えた。だって注がないんだよ。ただのエッセイ。
2012-03-31 04:15:13ということで,改めて,羽場久美子「『中欧』アイデンティティの夢と現実:拡大EU・NATOのアイデンティティ」『思想』1056,2012年,9-29頁をdisるよ。
2012-03-31 04:16:48
まず,11頁の概念図,いやいやこれを無批判に引っ張ってきたらまずいでしょう,というか,僕最初はてっきり「こういうステレオタイプがありますが」という導入として紹介されるものかと思っていたんですが,それそのまま受容しちゃうのかよ!
2012-03-31 04:19:3411頁の「円の重なり合いとしてとらえたヨーロッパ文化」で描かれるヨーロッパの「円」が,「スカンディナヴィア・ケルト・アングロ・サクソンの円」とか「ギリシア・ビザンティン・正教会の円」(バルカン)だとかになってるのは何かの悪い冗談なのか……
2012-03-31 04:21:56「スカンディナヴィア・ケルト・アングロ・サクソンの円」の構成要素として,「ケルト・カトリシズム」「民俗的伝統」「プロテスタンティズム」「個人主義」とかが並列されてるんだけど,これ,一見しておかしいと思わなかったのか。「ケルト」でアイルランドとコーンウォールとブルターニュを一括……
2012-03-31 04:23:37ここで挙げられてる図は羽場先生のオリジナルじゃなくてDavisの図なんだけど,そのまま使ったってのが有り得ない。つうか,「バルカン」の共通性はオスマン支配にあるんじゃね,みたいな柴宜弘の見解(まあこれはこれでアレなんだけど)もあるのに,そういうの無視してビザンツだけで語るのか……
2012-03-31 04:25:22
「しかしこの地域の『半周縁性』は,アジアやアフリカの従順性や謙虚さとは大きく異なる。他の第三世界や植民地とは異なり,『中欧』では『限りない自由への渇望』,(……)をもつ民族としての特徴と資質を生み出してきた」(12頁。原文ママ)。これ何十年前の歴史家の文章ですか!
2012-03-31 04:28:13「『政治的マキャヴェリズム』(常に権力の動向をしたたかに読み,権力に対抗するため他の権力を利用する。たとえばイラク戦争時における親アメリカ的態度)をもつ民族」(12頁)って,マキャヴェリズムの説明からしてなんか違うし,そもそもイラク戦争における親米的態度を(続
2012-03-31 04:30:41承前)そういう本質主義的語彙で説明してしまうというのは国際政治学者として自殺行為なんじゃないだろうか……? いやだって他にも要因あるっつうかNATO内部のあれこれを抜かしてそれだけで語るんですか! ありえねえ……
2012-03-31 04:32:00「この(……)転換を最も象徴的に表している言葉として,(……)『フェリーボートの国』である,という表現がある。/あるいは,イシュトヴァーン・サボー監督が描いた映画『太陽の雫』(1999年)がある」(14頁)。先生,文章が繋がってません! 言葉の話じゃなかったんですか?
2012-03-31 04:35:53
「またこれらの民族の勤勉さと優秀さは,経済・政治においても重要な役割を果たした」(15頁)。この一文,研究者としては自殺にも等しい文章だと思う。
2012-03-31 04:37:54「この時期には,大オーストリア合衆国,バルカン連邦(……)など,様々な連邦制の試みが花開いた」(16頁)。どれも「構想」であって,「試み」じゃないですよね……。
2012-03-31 04:39:38「旧体制崩壊への抗いがたい歴史的変動,チェコ,ポーランド,スロヴァキア,ルーマニアの諸民族の自立への強い希求が,最終的に,未来の定かでない『独立』へと突き進ませる原動力になったと言えるかもしれない」(16頁)。いや,ルーマニアはハプスブルクから独立した国じゃないですから!
2012-03-31 04:42:38そもそも,チェコ人にしたところで,戦争末期にならないと独立派は擡頭してこなかった。むしろ帝国の維持をはかったズデニェク・トボルカみたいなひとたちがいたことは20年ほど前にあなたが編纂した論集(『ロシア革命と東欧』彩流社,1990年)の中で明らかにされてますよねえ?
2012-03-31 04:44:27