為末、考える観る、について語る

爲末大 Dai Tamesue　熟達論発売中 @daijapan

おはようございます。今日は【考え始めの谷間】について

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高校時代迄は学校の先生が指導してくれていたから、大学から本格的に自分だけで練習をやり始めた。その頃ちょうど伊東浩司さんの走りが流行っていて、僕は接地する時に足裏をフラットに着地するというのを真似しはじめた。それで3年位やったのだけれど結局うまくはいかなかった。

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こりゃだめだ、じゃあ元に戻そうと思った時に自分が元々どうやって接地していたのかがわからなくなっている事にはたと気づいた。考えれば考えるほどこんがらがってうまくいかない。昔は無意識でやっていた事を意識してもう一回作るような作業で、元に戻すのにさらに数年かかった。

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選手が考え始めると急に成績が落ちる谷間のような局面がある。特に若い選手の動きは、練習で磨きもするのだけれど、できるようになったというより、気がついたらできていたという方が近い。無意識でやっていたものを、意識した途端に動きがぎくしゃくして頭がこんがらがってわからなくなる。

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じゃあ考えずにいければいいかというと、これも危なっかしくて、怪我をしたり動きが乱れると、どう修正していいのか自分で理解していないから、全く戻ってこれなくなったりする。自分を一度も眺めた事がないようなもので、元の姿がわからないから戻し方もわからない。

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厄介なのは一度考え始めると、考えなかった時に戻るのが相当難しいという事。改めて自分がどう動いているかを観察してそれを意識してコントロールして、なおそれが自然になる迄にやっぱりちょっと時間がかかって、その間で選手の競技力は落ちて悩む事が多い。

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その時に大事なのは考えている事を忘れる事ができる能力。僕が足の裏から意識を離せなったときは、左手に鈴を握ってその鈴の音に意識を集中させる事を繰り返していた。考えない状態に入るのが難しいんだったら、何かに心奪われるやり方は、代用としては結構いいと思う。

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【まとめ】ああじゃないこうじゃないとか、いや考え過ぎだ昔に戻ろうとか、引いたり寄ったりしながらアスリートは技術を自分で理解していく。その時に大事なのは自分からの視点と、俯瞰の視点だと思うのだけど、それはまた明日お話しします。

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おはようございます。今日は【観る事】について

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選手が考え始めるというのはどういう事かというと、例えばハードルを越えるとか前に進もうという意識しかない選手が、そうしている自分を眺める視点を持ち始める事に近い。目の前の景色しかなかった世界から、目の前を見ている自分を観る自分が現れてくる感じ。

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目の前の景色しかない世界は、言ってみれば自分がない世界で、何か対象に意識がいっている。対象に意識がいくと、自分の動きをいちいち観ないからこんがらがらなくて、スムーズに動く。でも自分の姿が観えていないから、修正したり変えていったりするのが難しい。

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自分の観始めは難しい。足だけ考えているといつの間にか手が固まっていたり、足を真っすぐ出す事だけを考えていると身体が捻れていたりする。細部をいじると全体がどう変化するかというのを感じながらじゃないと、最初は考えれば考えるほどぎこちなくなっていく。

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選手が技術を変化させる時に怖いのは戻ってこれなくなる事。観るタイプでこなれてくるとベースになる自分を理解しているから、その怖さがない。だから自分をある程度理解できた選手は、遊びや冒険を思い切ってできるようになる。戻って来れるから遠く迄いける。

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観る事ができるようになってきて全部を意識化に置こうとすると、無我夢中の時に出るびっくりするような動きが今度は出なくなる。いくら遊んでも自分を驚かせるには限界があって、その停滞を嫌がって今度は観ている自分をなるべく追い払って行為に没頭しようとする。行ったり来たり。

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陸上でのいいレースってのは観ている自分がいなくて、行為と自分が一体になっている感じで、自分がいるという意識もそんなにない。何かに夢中になって気がついたら時間が経ってたというやつに近い。祭事ごとで踊りや歌等が入って段々行為に没頭していく映像があるけれど、ああいうのに近い気がする。

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【まとめ】僕は同時にはできなかったから没頭と観察を交互に繰り返しながらやってきた。なんとなくそれらを両立させたりどちらか一方に居着かせるよりも、没頭する時は思いっきりして、観察するときは思いっきり離れて観る、というのが大事な事かなと、僕は思う。

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北野武監督が、役者は自分しかいないタイプと、カメラから見ている自分もいるタイプがあって、一番厄介なのは中途半端に後者に踏み込んでる役者だと言ってました RT @Kousuko:初めまして。 僕が学んだ演技法と似ているので、何だスポーツも演技も繋がってるんやと 妙に嬉しい気持ちです