アンデルセン『人魚姫』日本語意訳 まとめ Vol.2

23時の夢物語 @23novel

#twnovel あなたが舞踏会場にいたら、数えきれないほどのお魚たちも見られたわよ。大きな子や小さな子、深紅の鱗をきらめかせながら、あるいは金や銀色の鱗をピカピカ光らせながら、たくさんのお魚たちがガラスの壁のそばをスイスイ泳いでいたわ。 #人魚姫 101

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#twnovel 大広間の真ん中には大きな水流があってね、そこでは人魚の男女たちが歌いながら舞い踊ったのよ。こんなにも美しい声はどんな地上の生き物も持ってないわ。そんな中でも末姫さまの歌声はだれより愛らしかったのよ。みんながみんな、拍手して褒めたたえたほどにね。 #人魚姫 102

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#twnovel つかの間、姫さまは心から喜んでいたわ。海においても、地上においても、自分の声こそ最高なんだって事実にね。けれどすぐ上の世界のことを思い出してた。あの素敵な王子さまのことを、彼のように不死の魂を持たない自分の不幸をどうしても忘れられなかったのね。 #人魚姫 103

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#twnovel だから姫さまは、喜びと笑いに満ちあふれた父君のお城から抜け出したのよ。こっそり自分の小さな花園で悲しみに沈んでた姫さまは、そのときふっと、海を流れていく角笛の音を聞いたの。姫さまは思ったわ。「ああ、いま、彼が船でこの上を通っているんだわ…」#人魚姫 104

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#twnovel 「お父さまよりもお母さまよりも愛するあの方が、私の頭の中をいっぱいにしているあの人が、その手に私の一生の幸せを委ねたいと願っているあの王子さまが…。ああ、彼といっしょになるためなら、永遠の魂が手に入るなら、私、どんなことだってしてみせるのに！」 #人魚姫 105

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#twnovel 「そうだわ！姉さまたちがお城で踊っている間に、海の魔女さんのところへ行ってみよう。ずーっとこわいと思っていたけれど、もしかしたら彼女にならいい考えがあるかもしれない。私を助けてくれるかもしれないわ」そうして末姫さまは花壇を離れたの…。 #人魚姫 106

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#twnovel さっそく末姫さまは、とどろく渦の方へ、魔女の住んでいるところへ向かったわ。末姫さまが一度も通ったことのない、あの道へ。お花も咲いていない、海藻すらない、渦のある場所まで、ただひたすら灰色の砂が広がっているだけの道にね。 #人魚姫 107

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#twnovel 激しくまわる水車のように、渦はあらゆるものを海の深みへと引きずり込んでいたわ。魔女の領地へたどり着くためには、この荒れ狂う渦の隙間をくぐり抜けていくしかない。その後はグツグツ煮立つ泥の道、魔女が「どろどろ沼」って呼んでる場所をずーっと行くの…。 #人魚姫 108

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#twnovel 魔女の家は「どろどろ沼」のさらに奥、不気味な森の真ん中にあったわ。そこの木や薮は全部、植物というか半分動物みたいなイソギンチャクでね。砂の中から何百匹ものヘビが顔を出して生えてる感じ。枝はねばねばの長い腕のよう。のたうちまわるミミズの触手付き。 #人魚姫 109

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#twnovel うねうねしたイソギンチャクたちは、根っこから先端まで、節ごとに絶え間なく動いてたわ。この森の植物にがっちりと絡みかれたら最後、それが何であろうと、もう二度とそこから逃げられないのよ。その前に立った末姫さまは恐ろしさでいっぱいになったの。 #人魚姫 110

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#twnovel 恐怖で心臓がバクバクして、姫さまはもう少しで引き返すところだった。でも王子さまと人間の不死の魂のことを思い浮かべて、勇気を出したのよ。恐ろしいイソギンチャクたちに絡めとられないよう、流れる長い髪をきつく頭に巻き付けて、腕を胸の前で握りしめると… #人魚姫 111

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#twnovel 姫さまは一匹のお魚になったみたいに、ダーツのような素早さで、敏感な触手をのばしてゆらめく恐怖のイソギンチャクの森を通り抜けていったの。時々ね、イソギンチャク以外のものが見えたわ。何百もの触手が鉄のベルトみたいにぎゅうっと握りしめている何か…。 #人魚姫 112

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#twnovel 触手の隙間からチラチラ垣間見えたのは、海で溺れ死んだ人間の白骨化死体。あるいは難破船の舵や、船乗りたちの宝箱、地上に住んでた動物か何かの骨。いちばん姫さまが怖がったものはね、小さな人魚の女の子が絞め殺されている姿よ…。 #人魚姫 113

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#twnovel ようやく姫さまは森の中の開けた場所に出たわ。ねばねばの地面、でっぷり太った海蛇がふざけながらのたうちまわる場所。この広場の真ん中にね、骨と難破船の残骸で建てられた家があって、そこにヒキガエルに餌をやっている魔女が座っていたの…。 #人魚姫 114

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#twnovel まるで人間がカナリアにお砂糖を食べさせるような感じに、口移しでね。魔女は不気味な海蛇たちを「かわいいヒヨッコちゃん」って呼ぶと、みすぼらしい体にシュルシュル巻き付かせながら姫さまに言ったわ。「お前がここにやって来た理由なぞお見通しだよ…」 #人魚姫 115

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#twnovel 「愚かなことを考えてるもんだねえ！このまま自分の望む道を行けば不幸になるよ、麗しいお姫さま。お前はその魚のしっぽを捨てて、人間のように歩くことのできる2本の棒が欲しいというのだろう。あの若い王子が恋に落ちるように、不死の魂までも得られるように」 #人魚姫 116

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#twnovel 言いながら、魔女はゲラゲラ恐ろしい声で笑ったわ。ヒキガエルやヘビが地面に落ちちゃうほどの大声で。そいつらはその後も、もごもご地面で動いてたけどね。「ずいぶんよい時に来たもんだ」魔女は言ったわ。「お前の願いを叶えるためにはね…」 #人魚姫 117

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#twnovel 「次の朝日が昇ってしまっていたら、1年待たなきゃならないとこだったのさ。どれ、薬を作ってあげようか。それを持って、夜明けまでに陸地まで泳いで行くんだよ。砂浜に座ってその薬を飲み干せば、お前のしっぽは2つに分かれて、小さくしぼんでいって…」 #人魚姫 118

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#twnovel 「人間どもが綺麗だともてはやすような足になるだろうさ。けれども苦しいよ。まるで鋭利な剣で貫かれるような痛みだよ。お前の姿を見たものは皆、お前のことを絶世の美少女だと言うだろう。その人魚のなめらかさを保った動きは、どんな舞姫も敵わないだろう」 #人魚姫 119