『映画を語る素人』（抄録）

Shimada Yuichi @chimada

「映画は素人のものだ。映画を鑑賞する玄人は、一部の好事家にすぎないよ」「それでも、私たちは、製作者たちの意図を読み取る必要があるのではないでしょうか」「子供は親を幸せにする必要があるだろうか。幼稚な思い込みだね」（ノーマン・アジェスティヴ『映画を語る素人』より） #twnovel

Shimada Yuichi @chimada

「映画を観るときの作法について伺いたいのですが」「あの。素人にそんなものあるの」「あると思うからお聞きしています」「なら、ひとつだけ。さみしいこと。さみしいから私は映画を観る」「さみしさ」「恋人を抱くように観る」（ノーマン・アジェスティヴ『映画を語る素人』より） #twnovel

Shimada Yuichi @chimada

「映画はメッセージだ。どのような映画にも、メッセージは込められている。メッセージがあると思い込むこと。それが素人としての僕の映画の鑑賞法だ」「それはほんとうに思い込みなのでしょうか」「映画に意味はない。娯楽だからね」（ノーマン・アジェスティヴ『映画を語る素人』） #twnovel

Shimada Yuichi @chimada

「映画を観るときには、杖は必須です」「失礼ですが、あなたは杖を必要とされているようには見えない」「いえ、人間はどのような時期にも自身を支える杖を必要とします。でないと、映画館のスクリーンに呑まれてしまいますから」（ノーマン・アジェスティヴ『映画を語る素人』より） #twnovel

Shimada Yuichi @chimada

「映画を観ている最中に眠るものは幸いだ」「どうしてでしょう。それはつまり映画を観られないということにはなりませんか」「私は眠られないから映画を観る。夢を見る代わりに映画を観る。眠られるならそれに越したことはない」（ノーマン・アジェスティヴ『映画を語る素人』より） #twnovel

Shimada Yuichi @chimada

「映画を観るときに大切なのは、息を止めないことよ」「よくわかりません」「映画鑑賞は運動だから。からだは停止しない。映画鑑賞はただ座っているだけじゃないの」「それを聞いて息が止まりそうになりました」「あら、失礼ね」（ノーマン・アジェスティヴ『映画を語る素人』より） #twnovel

Shimada Yuichi @chimada

「あなたは映画館で映画を観たことはありますか。あるのなら、隣の席に誰かが座ったことは。あなたは隣に座ったその人のことを大切にすることができる」「そうでしょうか」「ねぇ、隣に誰かがいるって、それだけで素敵なことよ」（ノーマン・アジェスティヴ『映画を語る素人』より） #twnovel

Shimada Yuichi @chimada

「映画はひとりで味わうものです。隣に誰がいようとそれは変わらない」「そうでしょうか」「――いえ、待ってください。もしかしたら私たちには相手がいるのかもしれない」「食事の席をともにする人ですか」「いえ、料理人です」（ノーマン・アジェスティヴ『映画を語る素人』より） #twnovel

Shimada Yuichi @chimada

「映画館の暗闇が好きだ。暗闇があるからこそ、私は映画館に赴く」「それは、やはり映写機の投影する映像は、真っ暗闇のなかでこそ映えるということでしょうか」「これは女性の知恵だよ。暗闇のなかでこそ感じるものがあるんだ」（ノーマン・アジェスティヴ『映画を語る素人』より） #twnovel

Shimada Yuichi @chimada

「映画はひとりで観ます」「なるほど、鑑賞は孤独な行為であるというお考えでしょうか」「そうですか、そういう考えの人もいるかもしれませんね」「あなたは違うということでしょうか」「恋人に気をとられるようでは映画に悪い」（ノーマン・アジェスティヴ『映画を語る素人』より） #twnovel

Shimada Yuichi @chimada

「私が映画を語る素人というのは、映画の約束事を知らないからにほかならない」「映画の美学を理解するための約束事ですか」「私が映画に期待するのは、何も考えない時間だ。それで満足している限り、私は素人の立場に甘んじる」（ノーマン・アジェスティヴ『映画を語る素人』より） #twnovel

Shimada Yuichi @chimada

「映画鑑賞はコミュニケーションだよ」「ああ、なるほど。私たちは映画が伝えるものを受け取るから」「ちーがーうー。私は映画にツッコミをいれたいの。話したい。黙って映画を観るなんて、図書館デートと同じくらいありえない」（ノーマン・アジェスティヴ『映画を語る素人』より） #twnovel

Shimada Yuichi @chimada

「映画はひとりで観るものだろうか」「ひとりで観る人もいるでしょう」「そういうことを言いたいのではないよ」「では、どういうことでしょうか」「誰も映画をひとりでは観ない。いつも隣には誰かがいるんだ。気づかないだけで」（ノーマン・アジェスティヴ『映画を語る素人』より） #twnovel

Shimada Yuichi @chimada

「映画に必要なのは変化です。変化のない映画をあなたは想像できますか」「なるほど。当たり前のようですが、たしかにそうです」「でもね、それって嘘ですよ」「え？」「映画はそもそも存在しない。存在しないものに変化はない」（ノーマン・アジェスティヴ『映画を語る素人』より） #twnovel

Shimada Yuichi @chimada

「映画を語るなんて、おこがましいですよね。映画に語られるのならともかく」「映画が語るとは？」「あなたはご存じない？　映画は何かを語るためにこそ我々の前に現れる。我々は彼らを沈黙をもって迎え入れればそれでよろしい」（ノーマン・アジェスティヴ『映画を語る素人』より） #twnovel

Shimada Yuichi @chimada

「映画は無駄だ。そしてそこがいい」「しかし、ほんとうに映画は無駄なものなのでしょうか」「少なくとも俺にとっては」「無駄なものの何がいいのでしょう」「人生と同じさ。無駄だからこそ楽しみながら捨てることができるんだ」（ノーマン・アジェスティヴ『映画を語る素人』より）#twnovel

Shimada Yuichi @chimada

「ええと。映画を見て得したことがあるかって？」「はい。映画は役に立つのでしょうか」「うーん。どうだろう。あなたは食事が役に立つと思う？」「役に立つというよりも必要なことだと思います」「じゃあ、映画もきっとそれよ」（ノーマン・アジェスティヴ『映画を語る素人』より） #twnovel

Shimada Yuichi @chimada

「映画は観るものです」「それは、まぁ、そうでしょう」「あなた、ほんとうにお分かり？　私たちは映画を観るの。見せられる、ではなくて、観るの。抱かれる、ではなくて、抱きしめるの」「恋人を引き止めるように」「その通り」（ノーマン・アジェスティヴ『映画を語る素人』より） #twnovel

Shimada Yuichi @chimada

「私、映画を観てもいいのでしょうか。もしかして、私、映画に嫌われているのではないでしょうか。それなのに、私、調子に乗って、あんなひどいことをした」「悩みをひとりで抱え込まないで相談してくれてありがとうございます」（ノーマン・アジェスティヴ『映画を語る素人』より） #twnovel

Shimada Yuichi @chimada

「あなたは映画を観たことがありますか」「はい、あります」「それは、ほんとうに、そうでしょうか。ほんとうに映画を観ているのでしょうか。観ているつもりでしかないのでは――と、私は常にその疑念を抱えながら映画を観ます」（ノーマン・アジェスティヴ『映画を語る素人』より） #twnovel

Shimada Yuichi @chimada

「映画と家族のどちらが大事かと聞かれたら、そりゃ家族ですよ」「それは結構なことだと思います」「それでですね。私は家族を大事にするために映画を観ます」「どういうことでしょうか」「家族鑑賞するわけにはいきませんからね」ノーマン・アジェスティヴ『映画を語る素人』より） #twnovel

Shimada Yuichi @chimada

「映画は見て、聞いて、触るものね」「あの。『見る』、『聞く』はともかく、『触る』とはどういうことでしょうか」「『触る』よりも『感じる』と言ったほうがわかりがいいかしら」「ええ、まぁ」「映画は五感で楽しみたいのよ」（ノーマン・アジェスティヴ『映画を語る素人』より） #twnovel

Shimada Yuichi @chimada

「私、ひとりでは映画を観ることができないの」「では、あなたはいつもどのように映画を観るのでしょうか」「うん。ある日ね、気づいたの。映画を観ているのは、私ひとりではないって。だから、私、映画を観ることができるの」（ノーマン・アジェスティヴ『映画を語る素人』より） #twnovel

Shimada Yuichi @chimada

「映画はひとつの問いかけだ。そして、それに答えなければ喰われてしまう」「映画は人を食べますか」「映画を喰らうのが玄人。喰われたことにも気づかないのが素人だ」「怖いですね」「いいや、喰われるのって気持ちいいんだぜ」（ノーマン・アジェスティヴ『映画を語る素人』より） #twnovel

Shimada Yuichi @chimada

「映画館を出ること」「それが、映画を観るときに大切にされていることなのですか」「ええ、そうです」「失礼ですが、それは当たり前のことのように思われます」「映画が終わって、館内に明かりが灯る。映画館を出て、家に帰る」（ノーマン・アジェスティヴ『映画を語る素人』より） #twnovel