ザ・ファンタスティック・モーグ #5

翻訳チームによるサイバーパンク・ニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) ニンジャスレイヤー公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 続きを読む
書籍 文学 ニンジャスレイヤー
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR
(「ニンジャスレイヤー?」とつぜん背後で声が響いた。チバは小さく舌打ちし、そちらを振り返った。ネヴァーモアは無言である。しかし足をやや開いて半身に立った姿勢は、いつでもその相手に襲いかかれる体勢だ。彼らの視線の先には、この広間への新たなエントリー者の姿があった。)
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR
(「ドーモ。ラオモト=サン。ネヴァーモア=サン」彼はオジギした。褐色の肌、後ろへ撫で付けた白髪めいた金髪。着流しを着た、彫像めいて眉目秀麗な男である。その灰色の瞳がチバを見据えると、少年は緊張を悟られまいと、険しい視線を返す。「……ドーモ。アガメムノン=サン」)
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR
(「ご機嫌麗しう」男のアイサツは奥ゆかしくも、底知れぬ威圧的アトモスフィアはチバを呑み込むかのようだ。彼の顔を凝視した者は、超人めいた灰色の瞳の奥で微細な稲妻のパルスが脈打っているのを見る事だろう。彼こそはアガメムノン……ゼウス・ニンジャを身に宿す者!)
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR
第三部「不滅のニンジャソウル」より:「ザ・ファンタスティック・モーグ」 #5
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「ニンジャスレイヤーという言葉が耳に入りましたな」アガメムノンは歩みを進める。威厳溢れる長身、寛いだ着流しの下からでもカラテのワザマエを伺わせる、戦闘的な体格。 1
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その神話英雄めいた佇まいは伊達ではない。彼こそがアマクダリ・セクトの創設者……ラオモト死した後のネオサイタマに得体の知れぬ闇組織を築き上げた張本人。カンの嫡子の中でもっとも優れたチバを象徴として担ぎ上げ、ラオモトの威光と己のカラテをもって、新旧のニンジャを取りまとめた男なのだ。2
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表社会において、彼はネオサイタマ知事の秘書という立場を取り続けている……少なくとも、現在のところは。知事は専ら彼の傀儡に過ぎないと想像するのは容易かろう。彼はチバ以外のラオモト血族、愛人に至るまで、全てを殺害し、チバの象徴性を揺るぎないものとした。平然と、やってのけた。 3
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チバはその虐殺の事実を知っている。チバは兄弟たちをもとより邪魔者としか見なしておらず、母の愛も知らぬ。だがチバは、あの日、父の死にうちひしがれる彼のもとへ唐突に現れ、またたくまに全てを用意して見せたこのアガメムノンを少しも信頼していない。 4
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チバはアガメムノンを畏れる。底の知れぬこの強大なニンジャを。政治を支配し、政治の世界から企業を支配する……数々の企業へ、自らの息のかかった人間を役員として、ニンジャと共に送り込む……その恐るべき手管の行き着く先には、何がある? 5
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チバには自由と権力が与えられている。だがそれはアガメムノンが与えた自由と権力だ。所詮それは、より大きな檻、より大きな鎖でしかない。チバはアマクダリ・セクトの首領でありながら、その組織の全貌を知らぬ。だがそれは、セクト所属のニンジャ達も同様なのだ。 6
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アガメムノンの他に、それを知る者はいるのだろうか?コールド・チェンバーでザゼンし続けるホワイトドラゴンは?ザイバツのグランドマスターを倒したスパルタカスは?スターゲイザーは?否……おそらく否である。 7
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(だが、ぼくは……いずれ見ていろ、アガメムノン。せいぜい今はそうやって、ぼくの事を置き物か何かのように見下しているがいい)チバは奥歯を噛み締め、アガメムノンを睨んだ。 8
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「ニンジャスレイヤーへの御執着、無理からぬ事ではありますが」アガメムノンはアルカイックな笑みを浮かべ、チバを見た。「過度に熱中なさらぬように。御身体に障っては元も子もありません」「……」チバはネヴァーモアに命じてカコデモンとの通信を切断させた。「奴はセクト全体にとって敵だ!」 9
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「カコデモン=サン……サラカイカ・ヘクト」アガメムノンは目を細めた。「ニンジャスレイヤーと交戦を?」「ああそうだ、これからな!」「……さて」アガメムノンは煮え切らぬ様子だ。「彼は死ぬかも知れません、残念です」「何だと?」「あまり侮ったものでもない。御父上の事を思い出されよ」 10
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「……」「ニンジャスレイヤーと本格的に事を構えるには、時期尚早と言えましょう」「臆するか!」「コストに見合わぬイクサです。サラカイカ社は、やや痛い。だが所詮、彼は野心無き個人に過ぎない」「……」チバはアガメムノンの無感情な目を見据えた。稲妻の閃く瞳を。チバは目を逸らした。 11
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「ゆえに、お楽しみもほどほどになされよ」アガメムノンは恭しくオジギした。その足元に電光が閃くと、彼は先ほど現れた戸口まで一瞬で移動していた。彼は再度オジギし、広間を去って行った。「奴め……!」ネヴァーモアが唸った。「ネヴァーモア!再度つなげ。カコデモンだ」チバが命じた。 12
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「……」彼はふいに目を覚ました。涎を垂らしながら、緑青で覆われた銅の扉を見、下部の穴から供された紙皿のスシを見やった。ナムサン……オーガニック・バッテラ・スシだ。(では、俺もいよいよ今日でおしまいか。末期の飯か)とにかく彼はスシを手で掴み、ガツガツと食べた。 14
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「うまい、うまい」咳き込みながら、彼は食べた。食物には自白剤が混ぜられている。だが、そんな事はもはや、どうでもよいのだ。彼は涙を流しながら食べた。彼を取り巻く世界は薄ぼんやりとしている。狭い部屋には便器と、何冊かの娯楽用の本がある。当初はテレビモニタもあったが、撤去された。 15
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聞かれた事は既に、全て話した。だが、それでは納得されないのだ。確かに納得はしてもらえないだろう。(私が逆の立場でも、疑うだろうな、それはそうだ)彼はスシを詰め込みながら、他人事のように考える。(バカな事をしたものだなあ。スシ、うまいなあ。これで食べおさめかなあ……) 16
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(そうだ、オーガニック・バッテラは、子供の頃から大好きだったな。あれは年末だった、父さんと、母さんと、私……小学生の私だ。デパートでスシとケーキを食べて……あの時もバッテラを食べて。あの頃の私は、でかい店構え、家業がただそれだけで誇らしかったな。どこでこうなったやら) 17
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR
薬で鈍化した彼のニューロンは過去へ向かった。取り留めのない記憶の旅は、まるでこの先閉じようとする人生を総括するかのようだ。父親との決別、サラカイカ・ヘクトへの入社……愛社……周囲の人々の期待に必死に応え、己を偽り、プラスチックめいた喜怒哀楽が身についた。 18
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(俺は、俺は違うんだよ……違うんだよ)彼は冷たい床に寝転がった。人工大理石ブロックで囲まれた小さな牢獄……壁には「不如帰」のショドー。「ヒトミ=サン」青銅のドアが乱暴に叩かれた。「食事は摂りましたかァ?」「ええ、ええ、うまかった……」 19
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ドアが開き、ショットガンで武装した墳墓警備サラリマンと、白衣を着た初老の社医が入ってきた。「調子はどうですか」とドクター。「ええ、遥かにいいです。わかるんでしょう、いいです」「名前は」「また名前ですか」「名前は」「ヒ、ヒトミ、ギンザです。ドーモ……ウフフ……」 20
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「あなた、会社のUNIXにアクセスして何をしたか、言ってもらえませんか?」「もう何回も……ハイ、言います、経理記録の改竄です。結構簡単で……小数点以下をいじるんです、それで、その端数を集めてプール金を作るんです。だってツライんですよ、わかりますよね?」「わかります、続けて」 21
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コメント

オスツ🍣 @alohakun 2012年4月10日
ザ・ファンタスティック・モーグ #1 http://togetter.com/li/279174 ザ・ファンタスティック・モーグ #6 http://togetter.com/li/286222
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