ギーゲレンツァー『数字に弱いあなたの驚くほど危険な生活』紹介
ゲルト・ギーゲレンツァー(2002=2003)『数字に弱いあなたの驚くほど危険な生活』 http://t.co/9RBLBuBP
2012-04-08 18:11:22読。医師や法曹などの専門家がリスクをいかに誤解するかについての調査がいくつも引かれていて、おもしろかった。どうすれば誤解させられるかの方法も書いてある。放射能安全神話が広まってしまった理由の一端はこうした方向からも考えられそう。http://t.co/9RBLBuBP
2012-04-09 00:15:15「確実性という幻は政治的、経済的目標のためのシールとしても生み出され、利用される。最近では、たとえばイギリス、アイルランド、ポルトガル、フランス、スイスで狂牛病(*BSE)騒ぎが起こったとき、ドイツ政府はドイツではBSEの心配はないと宣言した」(ギーゲレンツァー(2003:24f
2012-04-09 22:44:40「『ドイツの牛’肉は安全だ』この言葉は農業者協会会長や農業大臣、政府官僚の口から何度も繰り返された。ドイツ国民はこのメッセージを聞きたがった。イギリスの牛肉は輸入禁止となり、お客は肉屋でドイツで育った牛の肉かどうか聞きなさいと助言された」(ibid., p.25)
2012-04-09 22:45:36「2000年、ドイツがついに相当数を対象としたBSE検査を始めたところ、病気が見つかって、国民は仰天した。閣僚が辞任に追い込まれ、牛,肉価格は急落して、外国はドイツ産牛肉の輸入を禁止した。政府はようやく、ドイツの牛は安全だという幻にあまりに長いあいだしがみついていた、と認めた」
2012-04-09 22:46:42「ところが確実を約束するというゲームは終わらなかった。プレイヤーが変わっただけだった。スーパーマーケットや肉屋は、お客を安心させようとビラやパンフレットを作った。『当店の牛肉にはBSEの心配はありません』」(ibid.)
2012-04-09 22:47:15「自分のところの牛は幸せなことにエコロジカルな牧場で育てられたから安全だと説明する者も、実際に検査を受けているから安全だという者もあった。だが検査には多くの誤りがあることに触れる者は誰もいなかった」(ibid.)
2012-04-09 22:47:57「検査に合格したのに実際にはBSEだった牛が発見されたと新聞が報じたとき、国民はまたもショックを受けた。また確実性の幻が消えたのだ。政府にとっても肉屋にとってもスーパーマーケットにとっても、第一目標はBSEに関する情報ではなく安心感だった」(ibid.)
2012-04-09 22:48:16「政治やマーケティングのキャンペーンは、幻の確実性が生まれたり消えたりするのは個人の心だけではないことを教えている」(ibid., p.25f)
2012-04-09 22:49:40「自分たちの製品に過誤がある可能性を公然と否定する専門職と、そういうメッセージを聞きたがり、信じたがり、社会的な権威に屈服したがるクライアントなど、多くの関係者が確実性の創造と売り込みに関与しているだろう」(ibid., p.26)
2012-04-09 22:49:54「それに、この幻はすべての人々を対象にしているのでもなく、またすべての人々が幻を受け入れるのでもない。特定の聴衆のためにつくり出されることがある」(ibid.)
2012-04-09 22:50:23「たとえばイエール大学ロースクールのジェイ・カッツ教授は、外科医の友人と乳がん治療につきまとう不確実性について議論したときのことを語っている。議論のなかでは二人とも、どの治療法がベストなのかは誰にもわからない、ということで一致した」(ibid.)
2012-04-09 22:51:09「ところがカッツが友人に、患者にはどう説明するのかと尋ねると、友人は先日の乳がん患者には思い切った外科手術がベストだと言って、ぜひとも手術を受けるべきだと思わせた、と答えた。カッツは、それでは話が違うではないかと指摘した。どうして突然、ベストな治療法にそれほどの確信がもてたのか」
2012-04-09 22:51:55「すると友人は、その患者のことはよく知らないと認めたうえで、だが患者たちは*治療法選択には不確実性がつきものだという事実を受け入れることも理解することもできないだろう、と答えた。彼に言わせれば、患者は確実性という幻を欲するものだし、その患者はその幻を手に入れたのである」(ibid
2012-04-09 22:53:02