牧眞司の文学あれこれ

調子こいてTLから拾っているうちに、長大なまとめになってしまいました。もっとコンパクトにしたいのですが、まとめからさらに切り分ける方法ってないのかな?
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牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

千街晶之『幻視者のリアル 幻想ミステリの世界観』読了。その副題が示すように幻想ミステリを扱った評論集。もともとは書評や解説記事として書かれた文章をまとめて一冊にしている。 (続く

2011-04-08 11:38:27
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

千街さんは「幻想ミステリ」を、ファンタスティックな要素だけで判断するのではなく、文体・構成・雰囲気の過剰性や異端性をも含めて計っている。 (続く

2011-04-08 11:38:43
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

集中の白眉は、中井英夫を論じた「幻の馬車の両輪」。中井が標榜した“アンチ・ミステリー”という表現は、ある種の矛盾をはらんでいると、千街さんは指摘する。しかし、それは単純な錯誤ではなく、中井がこの呼称に託したものが歴然とあったことを示していく。 (続く

2011-04-08 11:39:49
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

さらに千街さんは、“アンチ・ミステリー”なるフレーズが、のちのミステリ界・読書界に与えた影響の大きさを検証する。 (続く

2011-04-08 11:40:53
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

『幻視者のリアル』を通読して強く感じたのは、幻想ミステリに寄せる千街さんの興味と、ぼくの文学嗜好がかなりの部分で重なっていること。ただし、そのアプローチの仕方がだいぶ異なるし、取りあげる作品も違う。 (続く

2011-04-08 11:58:51
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

たとえば、千街さんは「日常/幻想」という対概念に関して、〔(両者は)気がつかないうちに相互侵犯がおこなわれることすらある〕と述べたうえで、それを現代社会の状況変化との関連で考察し、幻想ミステリが書かれる根拠におく。 (続く

2011-04-08 11:59:26
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

ぼくは千街さんのような社会的・歴史的なスコープを持たず、単純に世界認識の問題として捉えている。また、そのしるべとなるのは、『百年の孤独』などのマジック・リアリズムだったり、『ナジャ』などのシュルレアリスムだったりする。 (続く

2011-04-08 11:59:50
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

本書収録の「「アンチ・ミステリー」という怪物」(もとは1999年発表)で、千街さんは〔今後、「アンチ・ミステリー」がどのようなかたちをとるか〕を予想し、〔この世界に跋扈する「暗合の魔」こそが、(略)全面的に対決し調伏すべき対象になるのではないだろうか〕と述べる。 (続く

2011-04-08 12:25:41
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

「暗合の魔」を扱った実作品として挙げられているのは、笠井潔『天啓の器』(中井英夫を死の日付が『虚無への供物』の開幕と符合する)や、山田正紀『神曲法廷』、藤木稟『ハーメルンに哭く笛』。 (続く

2011-04-08 12:26:11
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

ぼくも「世界に跋扈する暗合」については――“跋扈”という言い方はともかく――ずっと関心をもっていた。しかし、それをミステリ(アンチであろうと本格であろうと)のテーマにするという発想はなかった。というか、ミステリのプロパー読者じゃないので、気づかなかった。 (続く

2011-04-08 12:26:32
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

暗合を扱った小説として、ぼくがまっさきに思い浮かぶのは、ブルトンの『ナジャ』だ。もちろん、笠井潔らのアンチ・ミステリとは、読み心地がまるで違う。そのあたりをもっと考えてみたくなる。

2011-04-08 12:32:39
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

オラフ・オラフソン『ヴァレンタインズ』読了。12篇収録の短篇集で、それぞれの作品に「一月」から「十二月」までの題名がついている。男女のあいだの不和を、抑制のきいた表現でこまやかに語り、ビターな結末に至る。 (続く

2011-04-08 21:32:38
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

「十一月」だけは男女の関係ではなく、男同士の友情を取りあげているが、物語の肌理はほかの作品と変わりない。 (続く

2011-04-08 21:33:04
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

いずれの作品でも、オラルソンは登場人物の心の動きを手づかみにせずに、情景や動作に映して描きだす。さりげなく巧い。けっこうなお手前です。 (続く

2011-04-08 21:33:25
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

ぼくのごとき、ちんぴらジャンキーな読者にはもったいない洗練の小説。センスの良いおしゃれさん――愛の暮らしに倦怠した経験が二度、三度とあるような――が読むと、ぴったりくるでしょう。

2011-04-08 21:33:54
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

たとえば、こりゃオレ向きじゃなさそうだ敬遠して刊行時に読まなかったウェルズ・タワー『奪い尽くされ、焼き尽くされ』を、最近になって読んでビックリ。すごく面白い。西村賢太が好きひとなら、タワーのトホホ小説(本書は短篇集)も気に入ると思う。

2011-04-08 22:15:46
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

西村さんの小説の場合は、トホホなことになる原因は、もっぱら主人公の煩悩にあるのだが、ウェルズ・タワーの作品では世界そのものにうっすらと悪意が蔓延している感じ。不条理というほどではなくが、しかし根強くつきまとい、主人公はむきーっという状態になる。 (続く

2011-04-08 22:19:15
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

八方塞がりでヤケクソなのだが、それでも、たいていは破滅までいかない。そういうカタルシスすら封じられて、じりじりと不全感に炙られる。そんな境地だからこそのドライなユーモアがたまらなく面白い。

2011-04-08 22:22:47
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

ル・クレジオをもう一冊。『向こう側への旅』は1975年発表の長篇で、邦訳されたのは79年。しばらくページをめくって気づいたのだけど、この本は学生時代に読みかけていた。なにかの事情があって――どうせ、くだらないことだが――途中で放りだしたのだろう。 (続く

2011-04-09 14:41:34
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

訳者あとがきで、高山鉄男さんが〔「逃亡」は、じつはル・クレジオの作品のもっとも基本的な主題である〕と指摘している。ただし、この作品の場合、『巨人たち』『逃亡の書』のような、オブセッションに駆られた逃亡ではない。 (続く

2011-04-09 14:42:15
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

もっと“やわらかい”逃亡だ。現実や日常を振りきろうとするのではなく、それを外側からまるごと包みこむ。あるいは、現実を形成している向心力を弱めて、世界を気化させる。そんなかんじ。 (続く

2011-04-09 14:42:36
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

主人公の少女ナジャ・ナジャは、空高く舞いあがり、他人の夢に入りこみ、羽のある生物に姿を変えて洞窟をさぐり、微細化して万物の内部に偏在する。 (続く

2011-04-09 14:43:34
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

この作品は、語りもしごく自由だ。ナジャ・ナジャの動きを三人称で客観的に描きつつ、「わたしたち」という一人称の主観がまじりこむ。さらに二人称も用いられ、ナジャ・ナジャが「君」に転調したり、読者が「あなた」と呼ばれて物語に引きこまれる。 (続く

2011-04-09 14:44:07
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

そのうえ、熱風、地平線、宇宙規模の生命体などのモノローグが挿入される。その部分だけ、独立して読んでも面白い。まるでSFだ。

2011-04-09 14:44:32
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

『幻視者のリアル』のおかげでいろいろ読みたくなり、とりあえず書庫にあった赤江瀑『上空の城』を取りだしてきた。この作家の本は、これまで短篇集を4、5冊読んだものの、どうもピンとこなかった。これは長篇。かなり楽しめた。 (続く

2011-04-09 19:38:06
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