山猫氏(Nyar_Horten)の、航空撃滅戦における選択と日本におけるその応用のお話

錆猫 @Nyar_Horten

以前も呟きましたが、序盤に於ける航空撃滅戦は湾岸戦争等から鑑みるに敵の頭と目の破壊が優先されることになるでしょう。その有効性は、例えば、強力なパンチ力を持つボクサーでも脳がシェイクされ、且失明した状態でそのパンチを相手に当てる事は難しいであろうことから窺えるかと思います

錆猫 @Nyar_Horten

しかし、以上は定石ではあっても、絶対の行為という訳ではありません

錆猫 @Nyar_Horten

1967年に起きた第三次中東戦争の序盤の航空撃滅戦（第一次攻撃隊）に於けるイスラエル側の優先攻撃目標は、第一にアラブ側の持つ航空機（内訳は爆撃機＞新型戦闘機＞旧式戦闘機＋攻撃機といった優先順位がつけられていた模様）、第二が滑走路の破壊でした（中東戦争全史、中東軍事紛争史3参考）

錆猫 @Nyar_Horten

イスラエル側からすれば内線作戦を実施する関係上、味方地上兵力の機動を妨げる要因となる敵航空兵力（という遠距離投射火力）の撃滅は重要度の高いものであり、以上の判断は当然のものだったと言えます（内線作戦については今月の軍事研究誌「軍事用語のミニ知識」辺りが参考になるかと）

錆猫 @Nyar_Horten

ですが、以上は決して敵の頭や目を潰すという定石を蔑ろにした結果という訳ではありません（実際、第二次攻撃隊の「攻撃目標は基地十四で、その半数近くが運河西側にあった、エジプトのレーダー基地全部である（第三次中東戦争全史312頁）」とあり、その重要性は認識されています）

錆猫 @Nyar_Horten

イスラエル側は先制攻撃並びに、企図の隠蔽と欺瞞を兼ねてアラブ側警戒網を大きく迂回しつつレーダーの被覆域外の超低空で侵入、背後から襲撃する事で奇襲を成立させています（アトラス世界航空戦史、現代航空戦史事典等参考）

錆猫 @Nyar_Horten

更には、事前の諜報活動により彼らはアラブ側警戒網の穴、とりわけ人員の交代や出勤、休憩といった要因から生じる、警戒の緩む時間を割り出し利用する事で奇襲の成算を引上げている様です（中東戦争全史、中東軍事紛争史3参考）

錆猫 @Nyar_Horten

つまりイスラエル側は、敵の目を欺き、亦敵が自ら目を閉じている時間を利用し、発見後の適切な判断を行う余力と時間を奪う事により、敵の頭と目がまともに働いて無い状況≒序盤の航空撃滅戦の定石に近い状況を作り出したと言える訳です

錆猫 @Nyar_Horten

以上から、重要なのは相手の目を潰す事ではなく、相手にとって見えない状況、或は見えている筈なのにそれに問題を感じない状況を作り出すことである様に思われます。逆に言えば序盤の航空撃滅戦とは、それを強制的に且継続する切っ掛けを作り出す行為であると言えるのではないでしょうか

錆猫 @Nyar_Horten

そして、その様な状況が開戦前の敵国に醸成されているのであれば、序盤の航空撃滅戦は先ず以て敵航空兵力とその策源地に対する破壊行動となる可能性が高く（そも其れが航空撃滅戦の本旨なので当然の話とも）、第三次中東戦争序盤の航空撃滅戦とはそういうものだった、という事なのでしょう

錆猫 @Nyar_Horten

ついで。極東有数の防空火力の密集地帯である某国を攻める可能性の有る国としては、多分強固に見えるハードではなく、脆い様に感じられるソフトの面を平時よりねちねち攻める方が難易度は低いとして其れを主とするんじゃなかろうか、と思わなくもなく

錆猫 @Nyar_Horten

某国の防空火力を明らかに技術的に優越するのは新大陸の人か露の人くらいであり、それ以外は優越の多くを攻者の利に頼る状態な訳ですし（その攻者の利が亦厄介なのですが）。多分長い目で見るなら、優越を決定的なものにする為にソフト面＝情報戦を活用してくるだろうな、と

錆猫 @Nyar_Horten

実際、戦略的奇襲となる環境を作り出すことを目的に三戦とかの情報戦に一定の重点を置いている国もある様ですし

錆猫 @Nyar_Horten

我軍以外に対して行はるる敵の宣伝に関しても、亦其の特質上深き考慮を要するものあり。就中我と我同盟国軍民とを離間し、或は我軍背後に反軍思想を扶植し、或は我後方の住民を使嗾して騒擾を惹起せしめんとする場合等に於ては、之が防衛の為軍は関係諸機関と協力し必要の処置を講ずるを要す

錆猫 @Nyar_Horten

とは作戦要務令第三部の宣伝戦に関する記述（句読点は個人的に追加）。こんな感じの要領で、序盤の対応が鈍る様な環境構築が敵国にとっては望ましいのだろうな、と

錆猫 @Nyar_Horten

そんな事を先の北のロケット打上とそれ以降のゴタゴタを眺めながら思って見たり。航空話が情報話に摩り替った様に見えるのは、多分気のせいです