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サツバツ・ナイト・バイ・ナイト #2

翻訳チームによるサイバーパンク・ニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) ニンジャスレイヤー公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 続きを読む
書籍 文学 ニンジャスレイヤー
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第3部「不滅のニンジャソウル」より 「サツバツ・ナイト・バイ・ナイト」#2
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清楚な女学生服に身を包んだ着た少女が、ひとり、昼間の教室に所在無く立ち尽くしている。ガラス窓から差し込んでくる暖かな陽光。ここはキョート・リパブリックか?それとも、重金属酸性雨降り止まぬネオサイタマには極めて不似合いな、春の晴天か? 1
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「……アタイはどうして……?」少女は……ヤモト・コキは、落ち着かぬ素振りで周囲を見回す。その胸は平坦だった。手には何も持っていない。鞄も、バタフライナイフも、カタナも。得物がないのはいささか不安だ。いや、そもそも……どうして自分は、こんな所に居るのか? 2
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「ヤモト=サン、いた!」教室の後ろのフスマが勢いよく開かれ、息を切らせてクラスメイトの一人が駆け込んでくる。「アサリ=サン?」ヤモトが問いかける「なんでアタイ、ここにいるんだっけ?」「忘れたの!?」アサリはヤモトの腕を引いた「新入生を勧誘しないと、オリガミ部は廃部なのよ!」  3
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「そうだっけ?」ヤモトはアサリの手を握って走る。ロッカールームの近くまで駆けると、オリガミ部の他の面々。「ヤッター!」「カワイイヤッター!」彼女らは大袈裟に手を振ったりネコネコカワイイ・ジャンプを決めて2人を歓迎した。廊下にはスクランブル交差点めいて、大勢の学生達が行き交う。 4
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「オリガミ部に入りませんかー!!」「オリガミ部に入りませんかー!!」とても大きなピンク色の折鶴を抱えながら、部員たちは声を上げる。しかし学生達は目もくれず通り過ぎる。「ほら、ヤモト=サンも声出さないと!」「え……アタイは……そういうの得意じゃないから……」ヤモトは躊躇した。 5
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この年齢特有の、校内で目立つ事への気恥ずかしさだろうか?……いや、違う。ヤモト・コキの胸に無意識のうちに去来したのは、自分にそのような資格があるのかという、漠然とした問いだった。何の資格だろう?とヤモトは自問した。平穏な日常を送る資格……?仲間と戯れる資格……?それとも……? 6
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思考は中断する。「ね、ヤモト=サン!お願い!廃部になっちゃうよ!」アサリが目を閉じ、敬虔なブディストめいた礼拝姿勢で懇願してきたからだ。ヤモトは顔を少し赤らめ、その大仰なポーズを止めさせると、自分もピンク色の大きな折鶴を持って声を上げた。「オリガミ部に……入りませんかー!!」 7
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「「「「オリガミ部に、入りませんかー!!!」」」」ヤモトたちは折鶴を上下させながら懸命に声をかける。しかし誰も立ち止まらない。大廊下を挟んだ反対側の壁には時計が掛かり、針は淡々と無慈悲に回転を続けている。焦燥感。「アサリ=サン、あの時計、変じゃない?」「変?」「回転が速い」  8
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アサリはヤモトの指し示す時計を見た「……普通だと……思うけど」「そっか、ゴメン。じゃあ、気のせい」ヤモトは謝り、また部員全員で声を合わせた。成果は上がらない。だが一体感がある。皆と一緒に居るという無邪気なグルーヴ感が。ヤモトが小さく笑おうとしたその時……後ろから、男の声。 9 
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「ドーモ、ヤモト・コキ=サン……!」声は一つではない。不穏!いつしか校内は夜闇に包まれている!ヤモトは折鶴を投げ捨て、振り返った。ナムサン!そこには、死んだはずの父親!その横には、やはり死んだはずのソウカイニンジャ、ソニックブーム!その他にも、大勢のニンジャやヤクザたちが! 10
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……「ンァーッ!」ヤモトはフートンを蹴って飛び起きた。まるで重金属酸性雨の中を歩いて来たかのような異様な寝汗で、全身がぐっしょりと濡れている。その手には、無意識のうちに抜かれたカタナ、ウバステ。ヤモトは乱れた息を整えながら、鋭いニンジャの目で周囲を見渡し、耳を澄ました。 11
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窓の外には、しとしとと重金属酸性雨。「……大丈夫」ヤモトは紺色の紐が巻かれたカタナの柄をぎゅっと握りながら、そう呟いた。ここに敵はいない。過去の亡霊もいない。ここは彼女が身を寄せる、特殊歓楽街ニチョーム・ストリートのバー「絵馴染」。その上階にある、従業員用八畳間のひとつだ。 12
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その日の夕暮れ。若者向けの商業施設が猥雑に立ち並ぶ、アマザケ・ストリート。ネオ・カブキチョやニチョームからは遠く離れている。ビルとビルの間には無数の電線やLANケーブルが張り巡らされ、枝葉の天蓋のごとく空を覆い隠し、少々の重金属酸性雨を防ぐアーケード的な役目を果たしていた。 14
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灰色のパーカーフードを目深に被ったヤモトは、右手に服飾店のバッグ、左手にカタナを隠した細長い布袋を持ち、ごく普通のネオサイタマ市民めいて街を歩いていた。いや、正確には、身のこなしの端々にキョート的な奥ゆかしさがある。ぴんと伸びた背筋、均整の取れた足の運び、そういった部分だ。 15
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ヤモトは足を止め、ライトサイバーゴス系ブランド「電動」のショウウィンドウに映った、飾り気のない自分の服装を見る。ザクロの小言がニューロンに蘇る……「アータはね、若くてカワイイなんだから、そんな服着ちゃダメよ!もっとこう、シュッとした格好なさい!男共がハッと振り向くような!」 16
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ニチョームの守護者、ネザークィーンことザクロは、ヤモトの庇護者である。ザクロは、簡易宿泊施設を転々としていたヤモトを、自らのバー「絵馴染」に迎え、行くあてができるまで無期限で滞在することを許したのだ。ザクロもまたニンジャソウル憑依者であり、ヤモトの苦悩をよく理解していた。 17
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だからこそザクロは、未だに過去の亡霊にとらわれるヤモトのことを案じてもいた。苦悩は理解するが、辛気臭いヤモトを見たいわけではない。それにいつかは、行くあてを見つけなければいけないのだ。……ヤモトが悪夢にうなされた朝、ザクロは彼女に言った「…アータ、今日はお休み取んなさいな」 18
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朝のこと。「絵馴染の仕込みは?」ヤモトは朝食を取りながら向かいのザクロに答えた。表情が固い。「今日はどうせヒマよ」ザクロは目を閉じ、腕を組みながら答えた。「でも、ニチョームのパトロールが」「アーもう!それもいいの!アータはね、気負いすぎ!もうちょっと、自分が楽しみなさい!」 19
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そして現在、夕暮れ。数ヶ月ぶりに若者向けの街を歩き、服や靴を買ったことで、少しは気が晴れた。半日だけ、ただの人間に戻れた気がした。欲を言えば、誰か友達が……同年代の友達が隣にいてくれたら、もっと良かったのに。そう考えてから、これは身に余る高望みだろうか、とヤモトは自問した。 20
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(((高望み?そういう考えがダメなのよ!もっと楽しみなさい!そう、恋とか!なに気後れしてるの!マータ昔のこと?アータに笑ってほしい人だって、いたンでしょ?!)))何度も聞いたザクロの小言がニューロンに木霊する。「だからザクロ=サンは、あんなに楽しそうに服を選ぶのかなあ……」 21
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そう呟いた直後、ヤモトは向こう側から歩いてくる軽薄な無軌道大学生の一団に……アサリらしき姿を認めた!息を呑み、フードをさらに深く被った。それから、横にあるモージョー・ガレット屋台のノーレンを潜り、薄汚い席に座る。後ろを無軌道学生が通り過ぎる。耳を澄ます。アサリではなかった。 22
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「何にしやす?」「イカ・モージョー」上の空で答えた。ニンジャとなったあの日から、アサリとは違う時間が流れている。ソウル憑依者は老化が止まるという噂も聞いた。なら十年後、二十年後……どうなっているのか?そんな事を案ずるまでもなく、自分はイクサの中で死ぬのか?……それとも…… 23
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それとも、先に世界が終わるのか?屋台には、狂信的マッポー教団のハッキング電波が混じったラジオのヒットチャート番組が流れていた。あとは、モージョーの焼ける音と、鉄板を叩く鉄ゴテの音だけ。ふたつ隣の席に、独りだけ客がいた。トレンチコートを羽織り、ハンチング帽を目深に被った男が。 24
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コメント

オスツ🍣 @alohakun 2012年4月30日
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