茂木健一郎氏 @kenichiromogi 【トキが飛ぶ空、ほたるが舞う小川】連続ツイート

2012.4/23 茂木健一郎氏:連続ツイート573回 【トキが飛ぶ空、ほたるが舞う小川】 …渋谷のNHKの近くには、童謡「春の小川」のモデルとなった流れがある。渋谷の現状を考えれば、「春の小川は、さらさら行くよ。岸のすみれや、れんげの花に」という歌詞は、まるで夢物語のようだ。今は暗渠となっているその流れが、もし元の姿になったとしたら、どうだろう…
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茂木健一郎 @kenichiromogi

連続ツイート第573回をお届けします。文章は、その場で即興で書いています。本日は、ひさびさの、さわやかなニュースについて!

2012-04-23 07:19:30
茂木健一郎 @kenichiromogi

とほ(1)渋谷のNHKの近くには、童謡「春の小川」のモデルとなった流れがある。渋谷の現状を考えれば、「春の小川は、さらさら行くよ。岸のすみれや、れんげの花に」という歌詞は、まるで夢物語のようだ。今は暗渠となっているその流れが、もし元の姿になったとしたら、どうだろう。

2012-04-23 07:24:10
茂木健一郎 @kenichiromogi

とほ(2)私たちが、「幸せ」と考えるための条件が、明らかに変化してきた。もし、渋谷の「春の小川」が元の姿になって、蛍まで飛ぶようになったなら、どれほどの価値を私たちは見いだすことだろう。都市の文明と自然との共生。そこには、まだまだ無限の可能性がある。

2012-04-23 07:25:05
茂木健一郎 @kenichiromogi

とほ(3)自然の再生は、「点」でなく、「線」や「面」の生態系で行わなければならない。そのことを教えてくれるのが、佐渡のトキである。数年前に放鳥の試みが始まり、昨日、ついに自然界でひなが誕生したとの朗報が届いた。実に36年ぶりの繁殖確認だという。関係者の努力をたたえたい。

2012-04-23 07:26:37
茂木健一郎 @kenichiromogi

とほ(4)トキという「点」を保護するためには、自然環境という「線」や「面」を保護せねばならぬ。トキは、食物連鎖の頂点に存在する生物である。トキが暮らし、エサをとり、ひなを育てることができる環境を整備するということは、すなわち、佐渡の豊かな自然を再生、維持することにつながる。

2012-04-23 07:28:32
茂木健一郎 @kenichiromogi

とほ(5)トキのひなの誕生のニュースが、一つの種の保護という意味を超えた響きを持つのは、このためである。トキがひなを育てることができるような環境が、佐渡に戻ってきた。生活する者にとっても、訪れる者にとっても、すばらしい価値がそこにある。トキは、豊かな生態系の一つの象徴となる。

2012-04-23 07:30:06
茂木健一郎 @kenichiromogi

とほ(6)ところで、数年前トキを放鳥したときに、おもしろいことがあった。放たれたトキのうち何羽かが、佐渡から本土の方に飛んでいってしまって、日本海側の各地で目撃されたというのである。このニュースは、私にとって、実に痛快で、意味深いものであった。

2012-04-23 07:31:15
茂木健一郎 @kenichiromogi

とほ(7)ゲーテが『ファウスト』の中で書いているように、「自然にとっては大宇宙でさえ十分ではないが、人工は閉ざされた空間を必要とする。」トキが一度放たれてしまえば、それは「自然」となり、あらかじめここまで、というゾーニングができなくなる。そこに、トキ保護の深みがある。

2012-04-23 07:32:37
茂木健一郎 @kenichiromogi

とほ(8)トキに、佐渡以外には渡るな、とは言えない。トキにはトキの都合があって、思った方向に飛んで、拡散する。つまり、トキの保護を持続可能なかたちで図ろうと思ったら、豊かな環境を、佐渡という「点」から、「線」や「面」へと広げていかねばならぬ。そこにはなんと楽しい未来があることか。

2012-04-23 07:34:05
茂木健一郎 @kenichiromogi

とほ(9)自然に放たれたトキは、これからも、私たち人間の意図や線引きを超えていくだろう。そこに、飼育下ではなく檻の外にトキが息づいていることの意味がある。最初に放鳥されたとき、まっさきに佐渡から出てしまったのは新潟県知事の放した個体だったという。近頃、実に痛快な話だと私は思う。

2012-04-23 07:35:38
茂木健一郎 @kenichiromogi

以上、連続ツイート第573回「トキが飛ぶ空、ほたるが舞う小川」でした。

2012-04-23 07:36:09