フィリップ・K・ディックの第一長篇『偶然世界』(ハヤカワ文庫SF)が、SFフェアの一冊としてトール化重版されます。 (続く
2012-04-24 18:42:06小尾芙佐さんのもともと流麗な翻訳が、今回さらにリファインされているので、既読の方にもお薦め。未読の方にはもちろんお薦め。『火星のタイムスリップ』や『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』などとはまた違った、ディックならではの面白さが横溢している作品です。 (続く
2012-04-24 18:42:54ぼくが新しく解説を書きました。題して「偶然に翻弄される運命、無秩序に支配された宇宙」。ディック作品におけるランダム(無秩序)の系譜、ヴァン・ヴォクトの影響、『偶然世界』発表当時の評価、米版と英版の違い、短篇作家ディックから長篇主体への転身……などについて述べています。 (続く
2012-04-24 18:43:28『偶然世界』はほんとうに面白いよ! むちゃくちゃチープで、むやみに急展開して、ペイパーバックSFの典型のように思えるのだけど、ここまで行きついた作家はほかにいないんじゃないかってレベル。凄いすごい! ツッコミ所満載なのだけど、それがまたベリーグッド。
2012-04-24 18:50:38ディックのファンを大きく分けると、(1)初期のトリッキイな短篇を愛好するひと(仁賀克雄さんタイプ)、(2)中期の洗練された傑作群を愛好するひと(浅倉久志さんタイプ)、(3)後期の独自神学を模索した問題作を愛好するひと(大瀧啓裕さんタイプ)――になるが、 (続く
2012-04-24 19:23:22ぼくは、4番目のカテゴリとして、初期長篇のチープな感触を愛好するチームをつくりたい。いや、べつにチームにする必要はないんだけど、なんとなく。作品で言うと『偶然世界』『未来医師』『ライズ民間警察機構』『タイタンのゲーム・プレーヤー』あたり。 (続く
2012-04-24 19:24:11プラスチックや軽量合金のペカペカした意匠と、辻褄なんて気にせず滑降していく物語が、とってもステキ。どうやっても完成度の高い小説にはならないけれど、そんなのどーでもいーじゃん。SFってコレだよね。みたいな。
2012-04-24 19:24:20中学生のときに読んだ《ハヤカワSFシリーズ》でシビれたのは、ディック『逆まわりの世界』に付された山野浩一さんの解説。「フィリップ・K・ディックの形而上学」と、正面突破のタイトル。 (続く
2012-04-24 22:23:14山野さんは、まず邦訳された『宇宙の眼』『高い城の男』を読んだが、記憶に残る作品ではなかったと打ちあけている。 (続く
2012-04-24 22:23:32引用しよう。〔むろん他の多くの作家のSFもあまり良い作品と思わなかったので、ディックを特に劣悪な作家と考えたわけではない。要するにアシモフやハインラインと同じくらいつまらない作家だと思ったのである。〕 (続く
2012-04-24 22:23:53コンヴェンショナルなSFをまず貶すのが、NW論客の作法だ。山野さんがディックに注目したのは、『火星のタイムスリップ』を読んで以降である。その後、『太陽クイズ』(《ハヤカワSFシリーズ》版での『偶然世界』)を読み、〔私はディックこそ最高のSF作家と思うようになった。〕 (続く
2012-04-24 22:24:35続けて括弧書きで、〔のちにバラードを読み2番手に格下げされたが〕とある。
2012-04-24 22:24:46ディックとバラード。その当時(1970年代初頭)の新傾向の作品に関心のあるSFファンにとっては、いわば“究極の選択”みたいなものだが、両作家の比較はいまなお、じゅうぶんに有効だ。 (続く
2012-04-24 22:45:46ぼくはだんぜんディック派。バラードもかなり好きだけど、ディックにはかなわない。ぼくはバラードは20世紀の夢想家/思索者としては傑出しているが、小説家としては率直すぎると思う。読者をたぶらかすところがない。 (続く
2012-04-24 22:46:09それに対して、ディックの作品には主題的にも形式的にも、未完成もしくは壊れかけているところがあって、それが独特の面白さになっている。作品がとまらずに動きつづけている感じ。
2012-04-24 22:46:33これからディックを読んでみようというかたには、『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』『火星のタイム・スリップ』『ユービック』あたりをお薦めします。すべてハヤカワ文庫SF、新刊で手に入ります。
2012-04-24 22:58:52