ドゥームズデイ・ディヴァイス #5

翻訳チームによるサイバーパンク・ニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) ニンジャスレイヤー公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 続きを読む
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

第二部「キョート殺伐都市」より:「ドゥームズデイ・ディヴァイス」 #5

2012-04-25 14:12:24
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「全フロア踏破だぞォー」馬鹿にしたような声とともに現れたのは、切断された人体の部位を無数に付着させた、人型の黒ヘドロの塊である。その頭のあたりが開き、中から、黒髪を逆立てた男の顔が現れた。拘束具めいたメンポ、眠たげな眼。血の海となったこの社長室を見渡す。「何してンの、これ?」 1

2012-04-25 14:27:44
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「アイ、アーイエー!?」マグロアンドドラゴンCEOは、引きちぎられた人体で飾られた非現実的なエントリー者を目にし、ついに理性を失った。護衛の黒服はどうだったろう?知る由も無い。その時には伸びた黒いヘドロが社長デスクを飛び越え、まずその黒服二人を餌食にしたからだ。 2

2012-04-25 14:44:06
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その瞬間フジオは反射的にバックフリップし、無雑作なアンブッシュから逃れていた。彼はマコのすぐそばに着地した。護衛二人を圧殺したヘドロ塊は当然、マグロアンドドラゴンCEOを呑み込んだ。「アッ……ゴボッ」助かるまい。 3

2012-04-25 14:44:13
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「アー……オゲーッ」黒いヘドロがドロドロと滑り落ち、拘束具めいたニンジャ装束を着た男がゲップとともに正体をあらわした。その後ろからもう一人、様子のおかしい少女が入室してきた。男は頭を掻き、フジオを見た。「なァおい、なンで俺らの楽しみを断りもなしに勝手によォ……勝手にアァ?」4

2012-04-25 14:49:03
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男が目を見開いた。「ア?ア?てめェダークニンジャだろ?おい、俺だよ、デスドレインだよォ。おいこらァ!」「……」フジオはニンジャソードを構え、身を低くした。「なんだ、その、アア?」デスドレインはバリバリと頭を掻いた。血が流れ出す。腕先を黒いヘドロが這い、垂れ落ちる血液を吸う。5

2012-04-25 14:53:39
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その足元では少女が膝をつき、床に拡がるヘドロを、ぼんやりと指でいじり始めた。誰の事も目に入らないかのようだ。少女は指先で格子模様を描いている。「しかしよォ」デスドレインは一歩踏み出した。「今スゲェムカついたけどよォ、これ、ツイてるなァ?」「フジオ?何だ?」マコが震え声で呟いた。6

2012-04-25 15:01:40
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「知らぬ相手ではない。サンシタの屑だ」フジオは返した。「だが、ヴァンキッシュのようには行かない」フジオはデスドレインの出方を警戒し、同時に、マコの逃走経路を測った。後ろにあるショウジ戸から別室に逃れるか。「……私がくれてやった卑しい命をここで返すか?下郎」フジオは言った。 7

2012-04-25 15:07:45
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「おう、見ろ、見てくれよ、なァおい」デスドレインは拘束具めいた装束を掴み、裂くように開いた。痩せた上半身が露出した。巨大な傷痕が顔の傷につながっている。「咎」のカンジだ。「これだ!迷惑してンだよ……ナメた真似しやがって」「フン」フジオは口を歪めて笑った。「呪いの調子はどうだ」 8

2012-04-25 15:15:09
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「俺に何しやがった……」「使えると思ってな」フジオは言った。「アァ?」「お前にはどうでもいい話だ」アズールは格子模様を拡げて行く。いくつかの格子の中にはまぶたのない目が描かれている。フジオはマコに目配せした。マコが後ろへ走り出す。黒いヘドロがすかさず襲いかかる!「イヤーッ!」9

2012-04-25 15:24:34
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フジオがインターラプトした。飛び来たった暗黒物質の舌めがけ、カタナ持たぬほうの素手で裏拳を叩き込んだのだ。「ウォッ?」デスドレインはたたらを踏んだ。暗黒物質はフジオの手を取り込む事かなわず、弾け飛んだ。萎縮したヘドロは床に落ち、主のもとへ這い戻る。「何だ?この野郎!」10

2012-04-25 15:31:27
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「カラテだ」フジオは低く言った。左様、カラテの衝撃力がジツを跳ね散らしたのだ。強力なニンジャは時にこれをやってのける。幸運に恵まれ、たまたまこの反撃方法を味わわずにきたデスドレインにとって、屈辱の体験であった。「何がカラテだクソがァ!」「行け!」フジオはマコの背中に叫んだ。11

2012-04-25 15:37:49
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「申し上げます」黄金茶室の廊下に膝まづいたアデプトのニンジャ、ボロゴーヴが厳かに告げた。茶室に向かい合うのはパーガトリー、そしてニーズヘグだ。「アラクサマ市街のニンジャ被害が拡散中と」「ほう?」ニーズヘグが眉を上げる。パーガトリーは茶菓子を手にとった。 13

2012-04-25 15:52:29
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「マグロアンドドラゴン・エンタープライズ社屋のみならず、その周辺で破壊行為、市庁舎にも被害が及んだと……」「よいぞ、下がれ」「ハハーッ!」ボロゴーヴはドゲザし、しめやかに走り去って行った。「社屋外?」ニーズヘグは繰り返した。「ふむ」パーガトリーは茶菓子を口にする。 14

2012-04-25 15:56:43
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「マグロアンドドラゴン……スローハンド=サンが何か言っておったな」「さて、犯罪組織の撹乱行動の支援だったか……」パーガトリーは欠伸を一つした。「市庁舎とはしかし、スローハンド=サンも何を考えておるやら。ロードもお疲れになられるのう」「……」ニーズヘグはパーガトリーを見た。 15

2012-04-25 16:01:08
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チチチ。ニーズヘグのIRCノーティスが鳴った。彼はやや表情を動かした。アイボリーイーグルからの短いメッセージだ。「奴らか」「はて?」「続報だ。覚えておるか?例のオミヤゲ・ストリート、コフーン遺跡……要警戒の無軌道なニンジャどもよ」「いたな、そんな輩も。またぞろ騒ぎ出したか」16

2012-04-25 16:15:32
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「……」「何だね、さっきから?茶菓子でもついておるかね?」とパーガトリー。ニーズヘグは床几に肘を置き、センスで己を扇いだ。「いや、あるいは貴公、既にもう少し詳しい状況を得ておるかとな……そんな気がしたのだ」「ハ!ハ!ハ!何を買いかぶりを」パーガトリーは笑った。17

2012-04-25 16:20:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニーズヘグはふと思い立ち、尋ねた。「そういえばダークニンジャ=サンはどこにおるかね?」「……ン?懲罰騎士殿か?休暇中の?ああ、発信器か!そうだ、そうだな」パーガトリーは己のブレーサーに内蔵されたUNIX端末を操作した。「おや、これは!」パーガトリーは驚きの声を上げた。 18

2012-04-25 16:25:20
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「アラクサマ地区ではないか!おや、いかんなあ!詳細座標は把握しきれんが、これは休暇中のところを巻き込まれでもしたら……いや、待て!むしろ好都合ではないかね?なにしろ彼のカラテは素晴らしい……」「そうよな」ニーズヘグは頷いた。そしてチャを飲んだ。パーガトリーは目を細めた。 19

2012-04-25 16:32:38
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「これは大変だ。アラクサマのニンジャ治安は今や、休暇中の懲罰騎士殿にかかっているのか!」とパーガトリー「だが、強制休暇のルールは絶対神聖の掟!我々と言えど蔑ろにできぬ!ましてや、サンシタ・ニンジャの狼藉に神器や得物を届けに行くなどと……彼への侮辱になってもいけない」 20

2012-04-25 16:37:59
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

パーガトリーの視線がある種の殺気を帯びた。「……のう?ニーズヘグ=サン。特に貴公、彼のカラテを買っておった事だ」「ま、そうよな」ニーズヘグは寛いだ視線でそれを受け止めた。パーガトリーは言った「信頼もひとかどよな!万全の装備で無くとも、彼は必ずや困難を切り抜けよう……?」 21

2012-04-25 16:41:55
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「問題無かろう」ニーズヘグは言った「一度切り結んだ相手に遅れを取る奴ではあるまい。もし、得物無しで敗れるのなら……」パーガトリーは粘っこい視線でニーズヘグを凝視している。ニーズヘグは続けた。「……敗れるのなら、そこまでの男よ」「左様、左様!」パーガトリーは大きく頷いた。 22

2012-04-25 16:48:06
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「では、このままチャを頂きながら、彼の輝かしき忠誠行為の結果を共に見届けるとしよう!シテンノどもは……ほれ、あれよ、別件の……先程の五重塔UNIX施設の襲撃の調査だの、あとはまあ、色々と他でこう、重点しないといかんミッションも出てこようからな!行かれぬから!」「……うむ」 23

2012-04-25 16:52:34
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「このあと、特に予定は無いな、ニーズヘグ=サン?」「うむ」「もう少しここでこのままチャを楽しもう」「よかろう」「オイランを呼んでもよい」「いや、結構」「彼に直接、音声IRCで事態収集を命令したまえ。さ、今すぐに」「うむ」ニーズヘグは淡々と端末を展開した。 24

2012-04-25 17:05:35