2010年1月10日

記憶と初恋と告白の一歩手前 【clum】

折館迅/独白(? - 95.夏)/ 52 tweets 折館の生い立ちから中2の夏までの話 #twnovel 。 過去に親に囚われている人。
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clum @clum_memo

は、よく笑う人だった。そして、よく怒る人でもあった。家族に対して淡白な父親に、いつも憤ってばかりいた。母親のわめく声と父親の怒鳴り声、9:1。そんな中で育った俺が不安定な子供だったことは道理だろう。その母が、交通事故で死んだときが最も不安定だった。俺も親父も。 #twnovel

2009-12-28 16:34:31
clum @clum_memo

親父が泣いているのを初めて見たのは、葬式から数ヶ月たった頃だった。それまで冷静だった父親が泣き崩れ、わめく。母が生きていた頃には出さなかったような声で。弱々しく苦し気な、声で。俺のことは見えていなかったのだろう。親父は独りで泣いていた。俺はそこにはいなかった。 #twnovel

2009-12-28 16:56:37
clum @clum_memo

ほとぼりが冷めた頃、思い出を振り切る為だったのだろう、引っ越しをした。それまで住んでいた街とは大きく違う、田舎と呼ばれる隣の県に。新しいマンションが立ち並ぶ新興住宅地。周りを田んぼで囲まれ、年の近い子供も多く、遊び場所にも相手にも事欠かないところだった。 #twnovel

2009-12-28 17:23:09
clum @clum_memo

でも特に親しくなったのが、佐野立夏と稲城克彦だった。特に佐野家では晩飯を世話になることも多く、家族ぐるみの付き合いをしていた。家の方は祖母や家政婦が入れ替わり立ち替わりで安定しなかったが、この幼馴染たちだけはいつも変わらず俺の日常にいる、精神安定剤だった。 #twnovel

2009-12-28 17:56:39
clum @clum_memo

時期はうろ覚えだが、恐らく幼稚園生の頃、立夏が変なことを言い出したことがあった。「もうあたしたちこいびとはおわりにするわよ」 …どうやら俺たちは付き合っていたらしい。「じゃあずっとともだちだ」そう返すと、立夏はうれしそうに笑って走っていった。 #twnovel

2009-12-28 18:16:17
clum @clum_memo

だけど、そんな友達と遊んでいても、祖母と楽しく過ごしていても、父親のことが頭から離れたことはなかった。母を失ってやつれていく父を支えたいと、4歳の俺は本気で思っていた。だから早く家に帰らなくちゃ。お父さんを一人にしちゃいけない。でも、親父はいつも家にいなかった。 #twnovel

2009-12-28 19:58:48
clum @clum_memo

かあれは、小学4年生の夏の終わりのことだ。いつものように一人で寝ていた俺が胸騒ぎとともに起きたのは、いつもよりかなり早い朝5時だった。窓を開け見下ろすと、向かいのマンションの下にパトカーが停まり、人がたくさんいるのが見えた。嫌な予感がした。あそこは立夏の家だ。 #twnovel

2009-12-28 20:10:31
clum @clum_memo

パジャマのまま走って駆けつけると、立夏を抱きしめたまま、立夏の母親が泣いていた。立夏と目が合う。でも、その目は俺を見てはいなかった。表情のぬけ落ちた顔で「ころされなくてよかった」とつぶやいた。その夜何が起こったのかは、後日聞いても、当時の俺には理解できなかった。 #twnovel

2009-12-28 20:16:25
clum @clum_memo

わかったのは、それからの立夏が少し変わったということ。その変化が事件のせいなのか成長のためなのかはわからない。俺に対しては相変わらずの憎まれ口だったけど、家族が不在の日に俺を家に呼ぶことが増えた。独りでいたくないのだと言い訳する立夏は、正直、かわいかった。 #twnovel

2009-12-28 22:15:00
clum @clum_memo

状してしまえば、それが俺にとっての初恋だったわけで。俺の中で対等な存在だった幼馴染が、守るべき女の子に変わっていったときだった。家に呼ばれるたび、内心は喜びとほんの少しの罪悪感で満たされた。もう一人の幼馴染も立夏を好きだということを知っていたから。 #twnovel

2009-12-28 22:42:12
clum @clum_memo

当の本人は、学年が変わるたびに他の男子に夢中だった。低学年の頃はクラスの人気者に惚れ、高学年になるにつれ趣味が変わったのか、優しい男を見つけては恋をしているようだった。俺も稲城も結局ただの片想い。ただの幼馴染。妙な均衡を保ったまま、同じ私立の中学を受験した。 #twnovel

2009-12-28 23:43:23
clum @clum_memo

元の公立も決して悪くはなかったのだが、中等部が新設されるその学園の制服を立夏が気に入ったことが決定打となった。そんな立夏につられて進路を決めたことに我ながら呆れ返るが、それは間違ってはいなかったのだと、今なら確信できる。立夏のためにも。俺のためにも。 #twnovel

2009-12-29 02:25:20
clum @clum_memo

小6の頃から恐ろしい伸びを見せていた俺の身長は、中学でもその勢いを止めることはなかった。かすれ始めたと思えば、声はすぐに低くなり、身体だけがやたらと大人に近付いた。同時に、立夏と話す時間が減っていった。あいつのことだから、友達もたくさん出来たのだろう。 #twnovel

2009-12-29 11:17:30
clum @clum_memo

見た目のせいか敬遠されることも多かったし、幼い頃より目立ちにくくなってきたとはいえ、髪の色を冷やかされることもあった。それでも次第に、少しずつ友達と呼べそうな人間は増えていった。立夏とは、ただのクラスメイトのように振る舞った。立夏もそれを望んでいたからだ。 #twnovel

2009-12-29 11:31:40
clum @clum_memo

一度だけ立夏から話しかけてきたのは、部活を立ち上げるときだった。「あたしは女子部を作るから、あんたは男子集めて男子部を作りなさい」「何の? 」バスケ部に決まってるじゃない。今、時代はバスケよ! 」1994年春。有名なバスケ漫画がアニメ化されて半年が経っていた。 #twnovel

2009-12-29 11:45:03
clum @clum_memo

バスケは、本気で練習するほどにハマった。小学校の体育でしていたポートボールとは比べ物にならなかった。成長していく身体を鍛えることも、チームで連携して動くことも楽しかった。流石に少しばかり成績も落ちたが、気にならなかった。中1の夏はバスケのみに明け暮れていった。 #twnovel

2009-12-29 11:51:42
clum @clum_memo

して、秋。放課後の家庭科室で初めて立夏以外の女子とゆっくり話す機会があった。どうやら集会委員会の集まりで会っていたらしいのだか、俺にはその記憶はなかった。岡本玲。第一印象は、大人しく控えめな子だと思った。立夏と正反対の。だから、恋愛対象外だった。 #twnovel

2009-12-29 13:13:54
clum @clum_memo

何だかんだ言って、立夏は俺の中で理想だったのかもしれない。わけのわからないところ、気まぐれなところも含めて立夏は完璧だった。でも、付き合うといったこととは程遠い気持ちだ。立夏が壊れないように守ってやりたい。ただそれだけ。玲に会ってもその気持ちは揺らがなかった。 #twnovel

2009-12-29 15:17:23
clum @clum_memo

それでも、玲とは放課後の部活の合間に、調理部の活動に使われている家庭科室で会っていた。ただ単純に、話していて楽しかったからだ。他の調理部員はどうやら玲ほど熱心ではないらしく、ほぼ二人きりだった。玲の用意してくれるお菓子とお茶で、贅沢な休憩時間を過ごしていた。 #twnovel

2009-12-29 15:58:37
clum @clum_memo

冬。暖を取ろうと家庭科室に顔をだしたとき、玲に訊かれた。好きな人がいるのだろう、と。これまでにない話題だったので驚いた。家族の話と、恋愛の話はしたことがなかったのだ。お互いにその話題を避けていたのかもしれない。答えを曖昧にして逃げようとして、逃げ損ねた。 #twnovel

2009-12-29 17:16:51
clum @clum_memo

玲の真剣な表情から、逃げてはいけないと思った。立夏を大事に思ってること。でもずっと友達でいたいのだということ。上手く話せないけれど、俺なりに必死で伝えた。玲には話せると思ったから。聞いてくれると思ったから。話し終わると、玲は複雑そうな顔で俺の顔を見ていた。 #twnovel

2009-12-29 17:25:29
clum @clum_memo

して、春。玲とはあの冬の日から二人では会っていなかった。距離を、おかれているようだった。俺たちは2年生になり、新しいクラスで友達を作ることに夢中で、次第に玲とはただの同級生に戻っていった。立夏とは相変わらず、つかず離れず。女子と関わるのは疲れる、と思った。 #twnovel

2009-12-29 22:49:33
clum @clum_memo

この頃の立夏は上機嫌だった。何しろ初めて、好きな相手と両思いになれたのだから当然だろう。相手はうちの部の1年の早坂一頼。いいヤツだ。でも、最初は複雑だった。別に立夏の隣に自分が収まろうなんて考えたことはない。ただ、取り残されるような気分が拭えなかったのだ。 #twnovel

2009-12-29 22:51:51
clum @clum_memo

のとき同じ班になった奴がかなりの変わり者だった。岡本樹。樹木の樹、一文字で「たちき」と読む。名字はよくあるもので、岡本玲とは関係ないらしい。学年トップの成績を誇る科学マニア。加えて極度のいたずら好き。どう考えても俺とは接点がないのに、話すと気が合った。 #twnovel

2009-12-30 00:54:05
clum @clum_memo

その樹を含めた3人の俺の友達が、何故か全員、岡本玲に惚れていた。玲は、1年のときは2本の三つ編みにしていた髪を下ろし、前髪を上げていた。それだけで、印象は大きく変わる。その腰まで届く長さの髪を揺らしながら歩く姿は、俺すらも目を奪われた。何が彼女を変えたんだろう。 #twnovel

2009-12-30 02:15:29
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