2012年4月29日

鳥に纏わる掌編

少年の姿をした「鳥」と人々の物語。 Twitterで50ツイートごとに呟いていた掌編小説のシリーズです。 一応完結。
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chi-suke @ChiKomiya

【1再】鳥は掌に乗る程の美しい少年の姿をして居る。音も無く舞い上がる度にその異国めいた装束の裾と被礼とが鮮やかに翻った。鳥屋の言によると鳥には雄しか居ないのだと言う。どうやって殖えるのかと聞いたら意味深な顔で笑って居た。 #twnovel #鳥に纏わる掌編

2012-04-29 02:35:24
chi-suke @ChiKomiya

【2再】鳥屋が来たので一羽飼う事にした。瀟洒な鳥籠の中には女児が人形遊びに使うような調度が揃って居て、その中に掌に乗る程の少年が座っていた。翌朝水音で目が覚めた。鳥は藍の模様の水入れから小さな手で水を飲んで居た。飼って良かったのだとそう思った。 #twnovel #鳥に纏わる掌編

2012-05-03 00:05:27
chi-suke @ChiKomiya

【3再】不思議と青い色を好む鳥だった。一体何処から見つけて来るのか、青い糸屑や紙切れを鳥籠に溜め込む。不図思い立って青い硝子玉を買って来てやると、それを抱いて手放そうとしなかった。数年の後に鳥は死んだが、今でもその硝子玉は鳥籠に残って居る。 #twnovel #鳥に纏わる掌編

2012-05-11 03:46:06
chi-suke @ChiKomiya

【4再】売れ残ったという鳥を鳥屋から安く買った。成程華やかでもない上に鳴かない鳥だった。鳴かないのならと足首に小さな鈴を付けてやった。いい趣向だと鳥屋は笑っていた。(続く) #twnovel #鳥に纏わる掌編

2012-05-07 21:02:50
chi-suke @ChiKomiya

【4再】(続き)細い紐で結えて外に連れ出してやった時だった。不意の犬の声に驚いた拍子に紐が解け、そのまま舞い上がって姿が見えなくなってしまった。陽が落ちればすぐに冷気が辺りを覆う。凍えてはいけないと探し回ったが中々見付からない。(続く) #twnovel #鳥に纏わる掌編

2012-05-07 21:03:42
chi-suke @ChiKomiya

【4再】(続き)薄闇の中を探し疲れてしゃがみ込んだ時、鈴の音が聞こえた。そしてふわりと肩に舞い降りる重みを感じた。鳥屋にその話をすると、元々強い野の鳥でようございましたと言う。為りは地味ですが鈴のような良い声で鳴くのですよと彼は笑った。 #twnovel #鳥に纏わる掌編

2012-05-07 21:05:22
chi-suke @ChiKomiya

【鳥-5】愛嬌のある顔に相応しくよく囀る鳥だった。ある夜夢を見た。人間の少年の姿になった鳥が、寝ている自分の顔を覗き込んでいる。吐息が触れる程近くでその唇が紡いだのは自分の名前だった。目覚めると鳥は籠に納まっていたが、二度と囀ることはなかった。 #鳥に纏わる掌編 #twnovel

2012-04-15 16:34:00
chi-suke @ChiKomiya

【鳥-6】木立で一人の男を拾った。酷く鋭い目付きをした物を言わない男だった。不思議な事に居着いていた鼠達がぱたりと姿を消した。普通の食事に手を付けない代わりに生臭物ばかり食いたがる様子を見せるのは困ったものだった。(続く) #鳥に纏わる掌編 #twnovel

2012-04-19 21:22:31
chi-suke @ChiKomiya

【鳥-6】(続き)――あれを返しちゃ呉れないか。輪を掛けて人相の悪い男が訪ねて来たのはそれから数日の内だった。あれがいないと商売にならないんでねと男は唇を釣り上げる。刹那頬を強かに殴られた。気を失う前に聞こえた高い口笛の音が耳に残った。(続く) #鳥に纏わる掌編 #twnovel

2012-04-19 21:24:51
chi-suke @ChiKomiya

【鳥-6】(続き)目を覚ますと彼らはいなくなっていた。猛禽とはああいうものかと気付いたのは暫く経ってからである。少ししてまた鼠が戻って来たのには閉口した。 #鳥に纏わる掌編 #twnovel

2012-04-19 21:30:03
chi-suke @ChiKomiya

【鳥-7】鳥を二羽飼う事にした。妻は喜んだが息子は鼻を一つ鳴らしただけだった。暫く飼ったが、籠の中で身を寄せ合う二羽が哀れに思えて放してしまった。妻は残念そうな顔をしたが何も言わなかった。鳥が去った空を見て、還って来るだろうかと息子が言った。 #鳥に纏わる掌編 #twnovel

2012-04-22 19:22:17
chi-suke @ChiKomiya

【8】若い鳴鳥はよく鳴く年長の鳥の籠の傍で育てる。その鳥もそうして育てるうちに美しく鳴くようになった。年長の鳥は間もなく弱ってきたので場所を移した。若い鳥は兄貴分を慕うように高く鳴いた。良い声だと評判をとったが、もう鳴鳥は育てまいとそう思った。 #twnovel #鳥に纏わる掌編

2012-04-26 02:02:44
chi-suke @ChiKomiya

【9】彼は美しい鳥を飼っていた。余りの美しさ故に俺にしか見えぬのだと言って、その鳥を余人には見せようとしなかった。彼は今日も飽きることなく瀟洒な細工の鳥籠を覗き込んでいる。 #twnovel #鳥に纏わる掌編

2012-04-27 01:55:44
chi-suke @ChiKomiya

【10】気の病には生き物を飼うのも良いだろうと親が鳥を買って来た。人の言葉を覚える鳥で、意味を解するでもなく無邪気に教えた言葉を繰り返すのが面白かった。ある時不意に鳥が教えたわけでもない自分の名を呼んだように思えた。心底恐ろしくなった。(続く) #twnovel #鳥に纏わる掌編

2012-04-29 02:30:46
chi-suke @ChiKomiya

【10】(続き)少女めいた小さな鳥を握り潰し、そのまま庭に投げ捨てた。その後、無邪気な声で幾度となく名を呼ばれた気がした。庭を這いずり回り泥まみれになって探したが、死体は何処にも見当たらなかった。 #twnovel #鳥に纏わる掌編

2012-04-29 02:31:29
chi-suke @ChiKomiya

【11】地方へ出向く上司の為に鳥を預かった。婀娜めいた顔が気に食わなかったが、何となしに口ずさむ唄に合せるように鳴くのが面白かった。鳥は鼻歌にさえ和して歌った。お陰で返すのは少し惜しくなっていた。上司はどうやら俺は歌が下手らしいと笑っていた。 #twnovel #鳥に纏わる掌編

2012-05-03 00:02:58
chi-suke @ChiKomiya

【12】夫が死んで、後には鳥が残された。多くは鳥屋に引き取ってもらったが、一番古くから飼っていた一羽が手元に残った。元来花の蜜を好む鳥で、何時からか主人の好む花を摘んで帰ってくる術を覚えた。夫はそれを心から楽しみにしていた。(続く) #twnovel #鳥に纏わる掌編

2012-05-07 20:50:03
chi-suke @ChiKomiya

【12】(続き)その夕方に鳥を放した。何時ものように花を探しに飛んで行ったのを確認して戸口を閉め切る。寝床に潜り込み、深く布団を被っても、扉を叩く小さな音が響いて眠れなかった。(続く) #twnovel #鳥に纏わる掌編

2012-05-07 20:51:36
chi-suke @ChiKomiya

【12】(続き)翌朝、扉の前には秋枯れの庭によくこれ程という数の花が散らばっていた。その中に、鳥の小さな体が横たわっていた。美しい花々の中で余りに色の無い、冷え切った体を持ち上げる。足元の花は全て自分の好きな花だった。 #twnovel #鳥に纏わる掌編

2012-05-07 20:53:11
chi-suke @ChiKomiya

【13】寝坊が度重なって職を失った帰り道に鳥を拾った。顔の傷の為に捨てられたらしい。哀れを誘われて連れ帰ったが、恩返しにか朝になるとあれやこれやの手で人を叩き起こす。お陰で寝坊はしなくなったが、望まぬ女房を貰ったようで何とも言えぬ気持になった。 #twnovel #鳥に纏わる掌編

2012-05-11 03:43:00
chi-suke @ChiKomiya

【メモ】「ほう、ほう」と云って、人がかける時には、火事は遠い」と祖母が云った。ほうほうと云うのは、火事場に馳せつける時の掛け声なのである。ほうと云う名前の鳥が火事場に飛んで来て、火をくわえて行くから、その鳥を追い払う為に、ほう、ほうと云って走るのだそうである。―内田百閒「炎煙抄」

2012-05-14 11:33:41
chi-suke @ChiKomiya

【14】火事だという声を聞いて表へ飛んで出た。見物がてら煙の立つ方へと走る。燃えているのはある金持ちの別宅だった。轟々と火炎を上げるその家の前に一人の男が膝をついている。どうやら主人らしかった。下がれ、と火消しが肩に手を掛ける。(続く) #twnovel #鳥に纏わる掌編

2012-05-14 11:53:21
chi-suke @ChiKomiya

【14】(続き)主人が行かないでくれ、と叫んだ。男の視線の先を追うと、燃える屋根の上に人影があった。熱風に長い髪が戦いでいる。その人影が翼を広げた。翼に炎が赤く映えたように思えた。どっと火柱が上がった時にはもう人影は見えなかった。(続く) #twnovel #鳥に纏わる掌編

2012-05-14 11:54:18
chi-suke @ChiKomiya

【14】(続き)崩れるぞ、と声が上がる。刹那家は火の粉を舞い上げながら崩れ落ちた。主人は地に伏せていた。どうやら泣いているらしい。あんな鳥なぞを飼うからだ、と誰かが言った。それから数日の間、近所では火事が頻発した。#twnovel #鳥に纏わる掌編

2012-05-14 11:55:09
chi-suke @ChiKomiya

【15】早くに妻を亡くした父は細工の腕ひとつで私を育てた。こわい父親だった。寡黙に作業をする父の傍らで何時も鳥が囀っていた。鳥が矢鱈と鳴き立てるので作業場へと足を運ぶと、柱に凭れて眠る父の手に美しい細工の櫛があった。明日私は嫁に行くのである。 #twnovel #鳥に纏わる掌編

2012-05-17 20:40:42
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