ドイツのFIT法改正について、日本の議論に違和感を感じるという話題から。
明日、3月11日には、ドイツ連邦の上院で、3月末に下院で決議されたFIT法改正(とりわけPV価格の大幅な見直し&系統安定化対策)について審議します。微妙なところですが、もしかしたら差し戻しもありえます。
2012-05-10 16:19:47最近、私はいろんな分野の方々から、3月末のFIT改正法案+Qセルズなどの破綻という2つの事柄によって、「ドイツのFITは失敗だったという意見を聞いたのですが、本当ですか?」という質問をよく受けます。いや、失敗って・・・改善を続けているだけだし・・・
2012-05-10 16:22:30失敗、成功って、そんな簡単に一口で切り捨てるのって本当はありえないですよね。「日本の年金制度は失敗だった」・・・おそらく、これに関しては、賛否両論、異なる視点や時間軸での意見が数多くあり、誰かが、「失敗だ」だとか、いや「成功だ」だとか、切って捨てることはできないはずです。
2012-05-10 16:25:41ということで、そんなご質問をメールでいただくと(無視もできない性格なので)、つい多面的に回答しようとし、お返事が長文になり、時間も多大に取られます。まあ、これも仕事のうちだと割りきっていますが、そうした質問のもとを辿ると、本当にひどい論説や記事などが氾濫していますね・・・
2012-05-10 16:29:34とりわけ多いのは、Spiegelなど雑誌の単なる一記者による、一つの記事(2次情報)を事例の紹介とするのではなく、論拠、出典として論考している記事、論文の類です。で、原典(1次情報)を辿ると、そういうニュアンス(FIT失敗やPV批判)では、もちろん書かれていない。
2012-05-10 16:34:20論拠であるなら、どちらかといえば、なぜ「Zeit」なんかから選ばないんだろうか。それも不思議です。Spiegel信仰の方は、日本にはまだ多くいるようですが(それ自体が私には?)、最近のSpiegelは単なる一雑誌ですからねえ。
2012-05-10 16:46:13日本の電力消費量はドイツの約2倍ですから、同じ量を設置したとしても日本のサーチャージは半額になります@kettyacom ただ、あれだけのサーチャージをドイツ以外の産業界が耐えられるか?というとそれもまた疑問では。もし日本がドイツと全く同じことをやってたら円高との合わせ技で…
2012-05-11 02:40:44さらにドイツはここまでの設置に12年必要でした(見方によっては91年以来21年)。独の12年前のFIT価格と、日本で設定された価格は似たような値です。ドイツよりも迅速に価格低下は進むはずですから(10年遅れなので・・・)・・・@kettyacom
2012-05-11 02:45:04・・・市場の価格低下に「機敏」に合わせてFIT価格を改定してゆけば、それほど大きな額のサーチャージにはならないでしょう。でも、放置してしまうと、バブルもあるし、負担も大きくなります。独のPVのFITで問題だったのは、2010年の12月のバブルですね。@kettyacom
2012-05-11 02:46:312011年の新年早々にFIT改正案が環境省から提示されましたが、政治の綱引きで改訂が遅れました。また、その改訂された内容も不完全で、結局2011年12月のPVバブルを生み出しました。これらは、日本のFIT価格の改訂の際には、大いに参考にして欲しいですね。@kettyacom
2012-05-11 02:49:03すみません、年度を1年分間違っていました。独のPVのFITで政治的に問題だったのは、2009年の12月のバブル後の対応ですね。で、これは2010年のバブルを誘発しています。2011年12月は、まあ、誰にも止めようがなかったでしょう。
2012-05-11 02:56:32今月号のPhoton誌の調べでは、PV中型(屋根置き)の平均価格は、設置費込みで1460ユーロ/kW。15万円です。1年前の今頃までは、こんなの誰も予想できませんでしたから、ねえ。
2012-05-11 03:04:09想定した受益者負担を超えたものの、想定した社会的利益と雇用創出も超え、急がれていた代替エネシナリオの速度を上回り、想定した以上に低価格化も実現した場合は、単なる失敗とは言わない。@powerpc970 想定した受電者負担を大幅に超えるなら失敗ですよ。@wakamisugi
2012-05-11 05:14:41社会的利益と雇用創出の評価はQ-Cellの破産、受電者負担の急増等で明らかになりつつあります。想定した以上の低価格化は、投資家への利益にしかなりません。適正なコスト、適正な速度、適正な規模でこそ成功と言えるでしょう。RT @murakamiatsushi @wakamisugi
2012-05-11 05:22:46少なくともPVは、メガとメガ以下とを区別しておく必要があったのかもしれませんね。ただし、日本のFIT議論は、それぞれのIRRが一定(アーヘンモデル)というところからではなく、安価なところから同一料金でというのがスタートですから、今後の改善に期待しましょう。@kettyacom
2012-05-11 17:20:47おそらく勘違いされているのか、ご存知ないようなので、いくつか私からのツイートとして、補足をしておきます。@powerpc970
2012-05-11 17:23:25ここからドイツにおけるFITの詳しい解説
ドイツのFIT、コストと便益について、少し取りまとめてみます。ドイツは91年からFIP、2000年からFITがはじまりました。91年に、電力消費量に対して、大型水力3%の再生エネ供給量だったのが、11年末には20%となっています。
2012-05-11 17:26:5290年代の議論では、2010年12.5%、2020年25%が目標とされていたり、見通しだったので、その普及のスピードは、当初の見通しを超えています。
2012-05-11 17:29:29当然、FITサーチャージも膨らんで、当初は上限が2.0~2.5㌣/kWhとされていたのが、2011、12年には3.5㌣/kWhと負担、コストは拡大しています。今後は、4.0㌣前後で天井を設ける議論が進められています。
2012-05-11 17:30:29それでは、FITにより、消費者が3.5㌣分、経済的な負担を受けているのかというと、これもまた不正解です。とりわけPVの推進によって、Merit-Oder効果が現れ、2010年頃から日中のピーク電力の取引価格が下落しています。
2012-05-11 17:32:12例えば、EPEXの電力スポット市場における2007年と2011年の時間帯別の取引平均値の推移を見てみると、日中ピーク時の電力は40%安価になっています。このスポット価格の低減が、先物取引やベース価格にどのような影響をおよぼすのか、現在、数多くの研究がなされているところです。
2012-05-11 17:34:08ということで、Merit-Oder効果によって、ひいては、FITによって、電力販売事業者の電力調達価格がいくら低減されているのかは、まだ統一された見解がありませんが、各種の研究報告書をざっくりと眺めてみると、おそらく2010年の段階で1㌣程度にはなっているように見受けられます。
2012-05-11 17:36:00