茂木健一郎(@kenichiromogi)さんの連続ツイート第594回「困難の暗闇を抜けると、太陽のような明るい人になる」

脳科学者・茂木健一郎さんの5月14日の連続ツイート。 本日は、昨日、講演会のときにわーっとよみがえってきたこと。
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茂木健一郎 @kenichiromogi

首里んくっ! ぷれいりーどっぐくん、那覇でおはよう!

2012-05-14 06:19:02
茂木健一郎 @kenichiromogi

連続ツイート第594回をお届けします。文章は、その場で即興で書いています。本日は、昨日、講演会のときにわーっとよみがえってきたこと。

2012-05-14 07:02:26
茂木健一郎 @kenichiromogi

こた(1)昨日、那覇のとまりんで行われた沖縄タイムスの講演会で、質疑応答のときに、「プロフェッショナルのゲストで印象に残った人は?」と聞かれた。『ローマの休日』のアン王女のように、「どの方も」と言う手もあったけれども、言葉が自然にわいてきた。「リンゴ栽培の、木村秋則さんです」

2012-05-14 07:04:27
茂木健一郎 @kenichiromogi

こた(2)木村秋則さんは、不可能と言われたりんごの無肥料、無農薬栽培を思い立つ。しかし、うまく行かない。畑から、虫たちが葉を食べる音が聞こえてくる。季節外れに花芽が出る。どうしてもうまく行かなくて、極貧の生活となり、子どもたちは一つの消しゴムを切り分けて使った。

2012-05-14 07:05:36
茂木健一郎 @kenichiromogi

こた(3)7年経ってもダメで、もう死ぬしかないと、木村さんは思い詰めた。祭りの夜、家族たちを先に家に帰して、首をくくるロープを持って一人山に入っていく。この木にしよう、とロープを投げ上げたら、落ちた、それを拾おうと斜面で転がったら、目の前に、リンゴの木があった。

2012-05-14 07:06:53
茂木健一郎 @kenichiromogi

こた(4)なぜ、こんな山の中にリンゴの木が? いぶかる木村さん。よく見たら、どんぐりの木だった。いつもリンゴのことばかり考えていたから、そう見えてしまったのだろう。そこで、木村さんははっと気づく。なぜ、山の中では誰も肥料や農薬を使っていないのに、こんなに青々と茂っているのか。

2012-05-14 07:08:11
茂木健一郎 @kenichiromogi

こた(5)木村さんは、夢中になって根元の土を確かめた。ふわふわとして、やわらかい。自分のリンゴ畑の土とは、全く違う。これだ! 死にに来たことなど忘れて、夢中で山を転がり下りた。鍵は、「土」だということに気づいたのである。木村さんは土作りに奔走した。そして、ついに「その時」が来た。

2012-05-14 07:09:43
茂木健一郎 @kenichiromogi

こた(6)ある日、木村さんが家にいると、「大変だ、畑に行ってみろ」という。怖くて見れなくて、小屋の陰からそっとのぞいた。リンゴの花が、満開に咲いている。涙が出た。日本酒の一升瓶を持って、一本ごとにお疲れさま、とかけてあげた。ほとんどは、自分で飲んだ。

2012-05-14 07:11:30
茂木健一郎 @kenichiromogi

こた(7)木村秋則さんの「奇跡のリンゴ」が出来るまでの物語。今度映画化されるそうだが、そこには本物のドラマがある。「真実」を求めて、それこそ自分の人生をすべて賭けて木村さんは探求した。その過程で、地獄を見た。地獄の中で、自分の命を絶とうとさえ思った。

2012-05-14 07:12:41
茂木健一郎 @kenichiromogi

こた(8)今日、木村秋則さんに会うと、まるで太陽のようである。その表情から、生命の光が輝いて見えるのだ。私は、木村さんほど、屈託なく、心から笑う人を知らない。その原初の日差しのような明るさは、言い尽くせない地獄をくぐり抜けたゆえ。夜明けの前の暗闇が一番深いという。

2012-05-14 07:14:32
茂木健一郎 @kenichiromogi

こた(9)木村秋則さんは口の中も「自然農法」で、歯が一本もない。収録の日、ディレクター(当時)の柴田さんが「歯入れてくるかな」と言っていたけど、結局歯無しできた。それでも滑舌がよくて、メロンも器用に食べる。木村さんのことを想うと、生きていてよかったと想う。困難が怖くなくなるのだ。

2012-05-14 07:16:16
茂木健一郎 @kenichiromogi

以上、連続ツイート第594回、「困難の暗闇をくぐり抜けると、太陽のような明るい人になる」でした。

2012-05-14 07:16:55
茂木健一郎 @kenichiromogi

「プロフェッショナル」の収録のあと、渋谷で打ち上げをしていて、木村秋則さんの話にあまりにも感動して、編集者の大島加奈子さんに「絶対本にした方がいい!」とその場で電話しました。それで、大島さんが『奇跡のリンゴ』(幻冬舎)をつくってくださいました。

2012-05-14 07:25:31