【ほうかご百物語】妖怪についてつらつらと(7巻)

ライトノベル・『ほうかご百物語』(峰守ひろかず著、電撃文庫) http://goo.gl/BI3Kh のシリーズに登場する妖怪の元ネタ・モチーフと思しき妖怪譚などについての呟きをまとめるリスト。 ※このまとめは覚書です。じっくり精査するのではなく、思い付いたネタやちょっとだけ調べた事項をまとめておくためのものです。 ※個人のメモですので、緩く見てください。 ※「作中との比較」の部分は、「この部分は文献を参考にするとこういうことであるに違いない!(断定)」ではなく、「もしかしたらこういうことなのではないだろうか?」という一つの可能性の「提案」を行うものである、ということを予めご了承ください。 続きを読む
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※機尋について

アルム=バンド @Bredtn_1et

雑記を更新しました。久々にほうかご百物語に出てくる妖怪の調査。> http://t.co/v4HZDRBw95 機尋について - EwigLeere -Memorium-

2013-03-25 22:50:05

※目競(めくらべ)について

※文献を基にした概説メモ

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今日は『ほうかご百物語』7巻より、「目競(めくらべ)」について。参考文献は[1]『鳥山 石燕 画図百鬼夜行』(高田 衛監修、稲田 篤信 / 田中 直日編、株式会社国書刊行会、1992)、

2012-05-14 19:23:13
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[2]『平家物語 上巻』(佐藤 謙三校注、株式会社角川書店、H.12第57版発行)、[3]『妖怪事典』(村上 健司著、毎日新聞社、2000)。

2012-05-14 19:23:17
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目競は『今昔百鬼拾遺』に、目玉の付いた無数の髑髏の姿として描かれる妖怪。その解説では「平家物語に見えたり」としている[1]。その元は『平家物語』巻五「物怪之沙汰」に見える怪異。

2012-05-14 19:23:31
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上記『平家物語 上巻』から該当部分を引用する([]の中の※部分は注釈)と、「又或る朝、入道相国帳台より出でて、妻戸をおし開き、坪の内を見給へば、死人の枯髑髏(しゃれこうべ)どもが、幾らと云ふ数を知らず、坪の内に充ち満ちて、(続く1

2012-05-14 19:23:54
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続き1)上なるは下になり、下なるは上になり、中なるは端へ転び出て、端なるは中へ転び入り、転び合ひ転び退き、からめき[※からからと音を立てる]合へり。入道相国、「人やある人やある」と召されけれども、をりふし人も参らず。(続き2

2012-05-14 19:24:30
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続き2)かくして多くの髑髏どもが、一つにかたまり合ひ、坪の内にはばかる[※幅一杯になる]程になりて、高さは十四五丈[※約42~45m]もあるらんと覚ゆる山の如くになりにけり。(続く3

2012-05-14 19:25:13
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続き3)かの一つの大頭に、生きたる人の目のやうに、大の眼が千万出て来て、入道相国をきっと睨まへ、しばしは瞬きもせず。入道、ちっとも騒がず、ちゃうど睨まへて立たれたりければ、露霜などの日に当って消ゆるやうに、跡形もなくなりにけり。[1]」

2012-05-14 19:25:20
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訳文はWikipediaにあるけど(参考: http://t.co/2j6S2TmC 目競 - Wikipedia )、一応自分でも訳文は付けておきます。

2012-05-14 19:25:31
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(福原に遷都した後の話。)ある朝、平清盛が起きて帳台から庭を見ると無数の髑髏が転がっていた。しかもそれらは上下や内外へとしきりに動き回っていた。その光景に清盛は人を呼んだが誰も来ない。(続き1

2012-05-14 19:25:45
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続き1)そうこうしているうちに無数の髑髏が合体して42~45mくらいの山のような髑髏となって清盛を睨み付けた。清盛がこれを睨み返すと、髑髏は日に当たった露や霜のように跡形もなく消えてしまった。

2012-05-14 19:25:51
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先に引用したように『平家物語』の中では特に「目競」という名前は与えられていなかったが、これを鳥山石燕が目競と名付けたものと考えられる[3]。

2012-05-14 19:26:01
アルム=バンド @Bredtn_1et

ということで、由来を辿れば平家物語、名前や容姿を辿れば今昔百鬼拾遺、という実は少し変則的な妖怪。いや、こういうパターンは結構あるのですけど(容姿は百鬼夜行絵巻の中から、名前は徒然草から拝借した、とか)。

2012-05-14 19:26:10

※作中との比較

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以上引用がメインでしたが概説メモとしたく。以下ほうかごとの比較。

2012-05-14 19:26:16
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顕現した後の姿(無数の髑髏が山のようになる)、やること(睨み付ける)、退治法(怖がらずに睨み返す)は平家物語の描写と同様なので略。

2012-05-14 19:26:22
アルム=バンド @Bredtn_1et

本来は「誰もいないはずの空間から視線を感じる」というのは目競の要素ではない気はするけど、その手の怪異というか報告例は古今往来多いですね。最近は心霊現象とかとして取り上げられることも。強いて妖怪でいえば、確かに目目連も結び付けられそうなポジションではあるけど…。

2012-05-14 19:26:30
アルム=バンド @Bredtn_1et

それと、不安な心に住み着く、というのも少なくとも平家物語では直接的に見られない要素かな、と。

2012-05-14 19:26:44
アルム=バンド @Bredtn_1et

とはいえ、目競を始めとした怪異現象が起きたのは清盛が福原に遷都した後のことで、「物怪之沙汰」の冒頭部にも「平家都を福原へ遷されて後は、夢美も悪しう、常は心騒ぎのみして、変化のもの多かりけり。」とある。

2012-05-14 19:27:02
アルム=バンド @Bredtn_1et

参考: http://t.co/neEvpthK 福原京 - Wikipedia 福原に遷都したもののすぐに京都に戻しているけど、これは源氏の挙兵に対応するものだとされていたりすることからすると、世の中はかなり不安定な情勢になっていたと考えられる。

2012-05-14 19:27:11
アルム=バンド @Bredtn_1et

この辺りから推測するに、世情が不安定になり、戦が近いことへの民衆の不安などから妖怪が出た→不安な心に居着く妖怪、という設定になったのかな?(※あくまで推測です)

2012-05-14 19:27:19