「飛沫感染」と「空気感染」、どこまで区別されるべき?
- fuka_fuka_mfmf
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発端の朝日の記事
http://www.asahi.com/science/update/0503/TKY201205020671.html
鳥インフル「4カ所変異で空気感染」 英誌論文公表
人に感染すると致死率が5割以上の高病原性鳥インフルエンザウイルスは、一つの遺伝子が4カ所変異するだけで哺乳類の間で空気感染するようになることがわかった。
aggren0xさんによる朝日記事批判
http://d.hatena.ne.jp/aggren0x/20120505/1336173711
(Nature論文はタイトルからして "droplet transmission" (飛沫感染)と書かれているのに、朝日記事は「空気感染」としている。朝日しっかりしろ、という話)
[医療][社会][科学]どっかの新聞は飛沫って書いてた気がする。"新型"のときにも話題になったと思うので報道さんレベルでも理解しておいてほしいものだけれど。/確認したら本文では飛沫だけども見出しで空気感染って言ってるのがちらほ http://t.co/LfMgr7gZ
2012-05-07 07:48:06aggren0xさんの指摘もちょっとおかしくね?というy_tambeさんの疑問
「空気感染」とは?(2011年1月のy_tambeさん自己まとめ)
(y_tambeさんのツイートを一部転載)
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うーん、プリオンの「空気感染」のニュース、変な風に誤解が広まらなきゃいいけどなぁ。「空気感染」って言葉は意外と厄介なんで。最近は、空気感染と飛沫感染の区別が強調されてるけど、その代償で、「空気感染=飛沫核感染」とか「空気感染=空気を介して伝染する」とかいう誤解も広まってるから。
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空気感染は「病原微生物が、空気中を(長時間)浮遊する微粒子として、経気道的にヒトに入り込み感染する」というもの。くしゃみや咳の際に飛び散る「飛沫」は、一定距離飛ぶと落下するので、空気感染とは別に「飛沫感染」として扱うことが多い。
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これに対して、飛沫が空気中にある間に、水分が蒸発して失われ、長時間浮遊可能な微粒子になったものが「飛沫核」。この状態になると感染力が極端に落ちるケースが多いのだが、なお感染力を維持する病原体もある。こういったものが感染源になるのが「飛沫核感染」。インフルエンザや結核がその代表。
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この「飛沫感染」と「飛沫核感染」の対比から、しばしば「飛沫感染は空気感染とは呼ばない。空気感染とは飛沫核感染のことだ」という説明がされることがあるのだが、これは微妙に誤り。空気感染と飛沫核感染はイコールではない。飛沫核感染は空気感染の一形態だ、というなら正しい。
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空気感染には、ヒトからヒトへ伝染するものとして「飛沫核感染」「塵埃感染」というタイプがあり、さらに伝染しないタイプのものもある。伝染しないタイプについては、細分化した名称を付けがたいのだが、テキストによっては、これを「(狭義の)空気感染」としているものもある。
そもそも、飛沫核感染と飛沫感染の区別、というのも、突き詰めると意外と微妙だったりする。特にインフルエンザのように上気道感染が主な問題になるケースでは。これが結核とかレジオネラみたいな肺への感染が問題になるケースだと、エアロゾルの粒子サイズの問題も出てくるけど。
2012-05-07 08:02:33さっきのリンク先が参照してる新聞記事も、主題は「哺乳類間を『空気感染』するようになる」ではなく、「『哺乳類間を』空気感染するようになる」ではなんだけどな。
2012-05-07 08:04:22ただ、その一方で、インフルエンザウイルスが本当に空気感染するのかどうかという議論が、再燃してはいる。 http://t.co/66dkSosl
2012-05-07 08:13:38あくまで個人的な印象としてだけど、このあたり、感染に要する暴露量の方が実は本質的な問題なんじゃないかなぁ、などと思わなくもなかったり…。
2012-05-07 08:16:50んで、さらにこれが通常のインフルエンザ(上気道感染が主)でなくて、インフルエンザ肺炎とか、トリインフルエンザのヒトへの感染(ヒトでも肺胞内にはトリ型の受容体が発現してるとかいう論文が出てたり)とか、肺への感染が問題になる重症型でエアロゾルの寄与がどうかとか、ややこしい問題も…
2012-05-07 08:27:22われわれ非専門家は「こまけぇこたぁいいんだよ!(AA略)」でいいんだろうけど、まあ少なくとも「専門分野の話題なんだから、基本に属する部分くらいはちゃんと調べて書いてよ大手マスコミなら」と溜息つくのは何の分野でも同じですな
2012-05-07 08:29:01.@fuka_fuka_mfmf いや、この場合、溜息ついてる「専門家」が、「インフルエンザは飛沫感染」と言ってることの方が問題。
2012-05-07 08:30:33「インフルエンザが飛沫感染する」というのは正しい。けど「空気感染(この場合、飛沫核感染)しない」というのは、*多分今のところ*言えない。論争はあるけど、決着してないから。防護法的には空気感染するケースとの共通点があるので、一般の人は「空気感染もする」と認識しとく方がいい。
2012-05-07 08:34:02論争があって決着してない問題について、専門家個人がどちらの論を採るのかは、もちろん自由なのだけどね。でも「論争があって決着してない」という事実をまず伝えずに、自分の支持する論だけを紹介するのは宜しくない(今回は、そういう深い問題ではなさそうだけど)
2012-05-07 08:38:07ただ、これを言い出すと、50-50くらいで拮抗してる論争と、95-5くらいでほぼ決着してるのを「まだ決着してるとはいえない」論争をどう扱うか、とかいう、また別のややこしい問題が…
2012-05-07 08:40:52@y_tambe 元記事も「溜息」ついてるエントリも斜め読みというのもありますが、わいたんべさんの指摘を受けて当該エントリがどの程度修正されるべきところかがパッとはわからないという。朝日が「誤訳」したという点はいいんですよね?
2012-05-07 08:41:03いや…実はそこもどうだか。タイトルでなく、論文のdiscussionくらいまで読み込まないと判断できない。「フェレットの実験系」での限定条件なので、論文上は「飛沫感染」でないとツッコまれる RT @fuka_fuka_mfmf 朝日が「誤訳」したという点はいいんですよね?
2012-05-07 08:45:39いちばん無難な修正としては、朝日新聞の記事については「哺乳類間で伝染しうる」にすること。というか、今回の主題はあくまでそこ。あと「空気感染」という日本語自体が実は結構曖昧なので、そこに専門性を求められるのかと言われると…
2012-05-07 08:48:16でもまぁ、状況によって(以前のまとめにある、プリオンの『空気感染』みたいに)、僕が、朝日新聞の記事読んでぼやいていた蓋然性も、そこそこ高いし。
2012-05-07 08:52:35そこは確かにどこまでマスコミを「責めて」いいのか微妙なことも。刑事で「被告」(被告人じゃなく)とか勾留・拘留とか QT @y_tambe: あと「空気感染」という日本語自体が実は結構曖昧なので、そこに専門性を求められるのかと言われると…
2012-05-07 09:01:54まぁ正直、「飛沫『感染』」という専門用語ですら、"transmission"を「伝達/伝染」でなく、感染 (infection) としてる時点で、結構もにょもにょするのですよ…
2012-05-07 09:20:17そして1週間後、aggren0xさんによる朝日新聞批判(再)
http://d.hatena.ne.jp/aggren0x/20120510/1336643958
(朝日がNature論文を紹介する記事において意図的に「飛沫感染」の用語を避けて「空気感染」として紹介したものだ、との回答を受けて、改めて朝日のスタンスを批判)