武雄新図書館構想 CCCの「どこか」と「マーケティング」

武雄新図書館構想の会見で語られた「どこかに出したりはやっていない」、「やるとすればマーケティング」の意味、ご存知でしたか?
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「どこか」って、どこ?

CCC担当者:今のところ補足なんですが、我々ですね、あの、CCCとして、個人の情報の履歴をですね、どこかに出したりってことは一切やっていないです。これは過去もやっておりませんので、ちょっとそこは誤解ないように、お伝えしたいなあと。

「どこか」とは具体的にどこのことでしょうか。

当社は、本条第2項記載の会員の個人情報を必要な保護措置を講じた上で取得し、本条第3項記載の各利用目的のために利用させていただきます。また、本条第4項記載の共同利用者と本条第3項記載の各利用目的のために本条第2項記載の個人情報項目を共同して利用させていただきます。

前半について、CCCが自社で使うことはおそらく誰もが予想されたことでしょう。では後半はどうでしょうか。

同 第4条第4項

共同利用者の範囲及び管理責任者
・当社の連結対象会社及び持分法適用会社
・ポイントプログラム参加企業(TSUTAYA加盟店を含みます)
本条第3項の利用目的のための共同利用に関し、個人データの管理について責任を有する事業者は当社とします。

つまり、CCC担当者の方の言っている意味は、


「CCCとして、個人の情報の履歴をCCC、CCCの連結対象会社及び持分法適用会社、TSUTAYA加盟店を含むポイントプログラム参加企業以外のどこかに出したりは一切やっていない」


となります。予想できましたか?

規約がこのようになっていることは、一部の人々にはよく知られていました。だからこそ、高木浩光氏は夕方の会見で次の質問を出しました。

Hiromitsu Takagi @HiromitsuTakagi

【誤字訂正】質問(4) 武雄市長は、Tポイントの利用規約「T会員規約」で、利用者の購買履歴が、記録されてCCC以外の事業者に提供される規約になっている事実をご存知ですか(はい/いいえ) ( #takeolibrary live at http://t.co/yJNpSora)

2012-05-04 17:36:20

この質問は、実は熱心な市長の支持者でもある代理質問者自身の口から

代理質問者: Tポイントの利用規約で、利用者の購買履歴っていうのは、CCC以外の事業者に提供される規約になっているってのが現在の規約ですけども、これは、まずご存知かどうか?っていうことと、それについてどうされるのか?っていうところは、まあ、検討中ってことですよね?
CCC担当者: そうですね。

と「(はい/いいえ)」ではなく「どうするのか検討中?」と歪曲され、さらには市長ではなくCCC担当者に投げかけられて、お茶を濁して有耶無耶にされました。高木氏はこれを回答と認めませんでした。

「マーケティング」って、なに?

CCC担当者:たぶん、やるとすればですね、より人気のある商品は何なんだとかですね、こういう、女性の方を含めるとこういう品揃えの方が喜ばれる、みたいな、新価値を高めるための、データのマーケティングでデータベースとして使用するということは、有り得るかなあというふうに思ってますが、個人の方がこうこと借りてるみたいなとかですね、世の中の方にお伝えするみたいなことは一切やりませんので。そこはよろしくお願いします。

CCCの言うマーケティングとはどういうことでしょうか。市場分析のようなイメージを持ちませんでしたか?

ADMSはCCCグループの会員情報を使ったマーケティング会社だ。CCCの会員期限は1年。更新すればレンタルビデオ1本無料とする特典をつけると更新数は60%を超えるという。最近では国土地理院の地図データに売り上げデータを組み込むまでに成長している情報システムを駆使して、こうした会員情報に基づきマーケティングを行う。日本アニメのビデオをレンタルした大阪府在住の30〜36歳の女性、サスペンス映画をレンタルした全国の18〜22歳の男性というようなカテゴリ分けを行い、延べ200社にもおよぶ提携企業のサンプル商品の提供、ダイレクトメール(DM)の発送、アンケートの分析などを行っている。
アンパンマンのビデオを借りた会員へ自動車ディーラー主催のアンパンマンショーの案内がとどいて新聞ダネになり、個人情報を横流ししているのではないかという疑いをCCC自身が持たれた。しかし、ADMSは、DM不要の会員は入会時に手渡されるその旨を記したハガキの郵送を行えばリストから除外すること、封筒にTSUTAYA CLUBと明記すること、個人情報をそのまま企業に渡さないこと、アダルト関連、宗教・政治団体とは取り引きしないこと、など個人情報の保護には気をつけていることを強調する。
確かに、ADMSの手法は、顧客名簿を流さず自社の管理下で他社のDMに顧客名簿を利用するという「ブラインド・レンタル」と呼ばれる方法で、出版社の日経BP社などが70年代後半から行っている。事業としてではないが、このような手法を使った外車ディーラーと航空会社、信託会社と不動産会社などの提携はしょっちゅうある。とはいえ、会員規約にDM送付もあり得るということは記してあるが文字が小さく分かりづらい、DM不要ハガキはCCCチェーン店では受け付けられず必ず郵送しなければならないなどと、手軽にDMを断れないという指摘もあり、業務を拡大することによる、個人情報の取り扱いにはより厳しい目が注がれることになるだろう。

株式会社アダムス(文中でADMS)はその後、株式会社Tカード&マーケティングとなり、さらに分割されて一部が株式会社Tポイントとなり、残りがCCCに吸収されました。

2012年現在もそのままやっているようです。

まとめ Tカードを作成したらダイレクトメールが届いた 朝日新聞 消費者情報(@asahi_lifestyle)の記者の息子さん(18歳未満)が親の同意なしにTカードを作成したら、その後家に息子さん宛のダイレクトメールが届くようになった、という話。 T-DM (ダイレクトメール) Media Sheet http://www.ccc.co.jp/pdf/business/T-DM_mediasheet.pdf Tカードサポートセンター http://www.tsutaya.co.jp/support/faq/faq_cnt/03.html 17435 pv 63 6 users 2

結局Tポイントカードって何なの?

規約からはこうなる、という以外に記事を一つご紹介。

会員3000万人で今や若者の必携品! CCCのTカードに群がる異業種企業 2008年8月22日

提携先企業は、Tカード利用者に発行したポイント数に応じて、CCC傘下のTカード&マーケティングに対してシステム使用料を支払う。これがCCCグループのカード事業収益となる。
また、提携先企業に対しては顧客分析情報が提供される。自社の店舗でTカードを利用しているのは、どんな客層でどこに住んでいるのか、利用頻度はどうなっているのかといった情報をTカード&マーケティングが定期的に報告してくれる。
こうした情報は原則無料なので、自社で顧客管理・分析のために新たなシステム開発投資をするよりは、Tカードの提携先となったほうが費用対効果は高いという判断が働く。

ポイントを付ければ付けるほど、システム使用料を支払います。
顧客分析情報は原則無料で提供されます。

情報の入手自体にコストから来る抑制がないので、不要な情報を入手しないという歯止めが効かず、どんどん広まるでしょう。

ただしソースはダイヤモンド。


さらに詳しく。

Tポイントの会員データ分析から企業は何を知るのか - ZDNet Japan 2012年06月11日

念のため

CCCはこんなに悪いことをしている、駄目だ、などと言っているのではありません。個人的にはたとえば、TSUTAYA発掘良品などは素晴らしい企画だと思います。暴走した市長をフォローしようとして、準備もなく不用意な説明になってしまったのだろうとも思います。しかし、こと情報の利用が絡む話では、何をどうすると言っているのかをしっかり見極める必要があるでしょう。

問題点のまとめのまとめ

まとめ 武雄新図書館構想 問題点のまとめのまとめ 問題点のまとめをまとめました。 13754 pv 31 9 users 1