ある噂がTwitterで流れていた。「RTしてはいけない呟きがある」という噂である。なんでもそれは面白ツイートであったり、拡散希望であったり、とりあえず普通のよくある呟きがRTとして流れてくるから気付かないそうだ。
2012-05-16 00:36:01それを見分ける方法はある。そのツイートからアカウントのページに飛ぼうとすると、アカウントが存在しませんと出るのだ。存在しないアカウントが呟いているわけがない。だからこれはRTしてはいけないと分かるのである。
2012-05-16 00:38:12だがもちろんその噂は結局噂であり、本気で信じているものは滅多にいなかった。もしも信じるならば、RTしたいツイートを見る度にアカウントが存在するか調べなければいけない。そんな面倒なことをする人は誰もいないだろう。
2012-05-16 00:40:51だが、オカルトネタが好きでありながらとても怖がりなある男は、RTで流れてきた、RTしたい呟きを見かけると馬鹿正直にアカウントページを確認していた。
2012-05-16 00:42:41ある日男は不思議なツイートを見つけた。「■」としか呟かれていないのである。男はRTする気はなかったが、なんとなく気になってそのアカウントのページを調べた。
2012-05-16 00:44:45それは異様なアカウントであった。アイコンは真っ黒、背景はデフォルトの状態で、名前も現在位置もプロフィールも「■」としか書かれていない。何よりも奇妙なのは、■というツイートからアカウントを調べたはずなのに、ツイート数が0なのだ。
2012-05-16 00:47:50変に思った男はブラウザの戻るをクリックしてTLを確認した。しかし先ほどまであったはずの■というツイートは消えてしまっていた。先ほどのアカウントページに行こうとするとエラーが表示され、二度とあのアカウントを見ることは無くなった。
2012-05-16 00:49:27それからしばらく経ったある日、男はまたもや■というツイートを見かける。しかし前回と違ったのは、■と呟いているアカウントは相互フォローしている仲の良い人の呟きであった。
2012-05-16 00:51:23おかしく思い、「更新」をクリックする。すると「■」としか書いてなかったはずの呟きは、何の変哲もない日常的な呟きに戻っていた。男はただの不具合だろうと気にせず、Twitterをまた眺めた。
2012-05-16 00:53:15それから十数分経ったあと、今度は「■」という呟きが3つ現れた。そのうち2つは自分がフォローしているアカウントで、もう1つはRTで流れてきたと思われるアニメのアイコンのアカウントだった。
2012-05-16 00:54:52だが更新してみればまた普通の呟きに戻っている。RTで流れてきた呟きも元の面白ツイートに戻っており、男はアカウントのページを確認した後、その呟きをリツイートした。
2012-05-16 00:56:15それから数分経つと、いよいよ様子がおかしいことに男は気付いた。今度は7つのツイートが■に変わっているだけでなく、画面が割れているかのように、ブラウザやデスクトップの一部が■になっていた。
2012-05-16 00:57:53男は不安になりながらも、「パソコンの調子が悪い、あまり呟けないかも」とツイートした。他の人が呟いたツイートを表示するために、Twitterの画面が動く。
2012-05-16 01:01:26すると、画面の半分以上が、■で覆われた。■ ■■ ■ ■ ■■■■と、不規則に■が表示されている。男はいよいよ怖くなり、それでもパソコンがおかしいだけだと必死に思い込み、パソコンを再起動させた。
2012-05-16 01:04:41■に覆われて見にくくなった「再起動します」を確認し、Enterキーを押す。一度画面が暗くなり、Windowsのロゴと読み込んでいる様子が映っている。■は消えていた。
2012-05-16 01:06:27だがその数秒後、一瞬の間に画面いっぱいに■が表示されて、デスクトップは真っ黒になってしまった。男は慌ててコンセントを引き抜いた。
2012-05-16 01:08:24男は叫び、その部屋から逃げた。しかし、そこでようやく恐ろしいことに気がつく。目の前には未だに■が映っている。そう、壁に■があったのではなく。男の目に■があったのだ。
2012-05-16 01:11:15■はどんどん増え、男の目はどんどん見えなくなっていく。耳からも、鼻からも、口からも、音も臭いも味も無いはずなのに■が体内に流れていく感覚がわかった。
2012-05-16 01:12:46そして、男は行方不明となった。彼が何処にいるかは誰にもわからなかった。男のTwitterでの最後の呟きは「■」である。
2012-05-16 01:14:18RTしてはいけない呟きがあるというのはただの噂である。しかし「■」としか呟かれていないツイートを見かけたら、決してアカウントを調べないようにしなければいけない。
2012-05-16 01:15:34