編集可能

4号機の危険性指摘への考察

まとめました。
震災 原発 4号機 flyingzebra 使用済み燃料プール
172
Flying Zebra @f_zebra
福島第一4号機SFPについては、燃料集合体が冠水していることが確認され、耐震補強工事及びFEMによる耐震評価が完了した時点で部外者が気にしなければいけないものとしては「終わった」問題だというのが私の認識ですが、そうは思わない人も少なくないようなのでもう一度考えてみます。
Flying Zebra @f_zebra
事故の収束作業はまだまだ続いていて、1~3号機から損傷した炉心が取り出されるのはまだ数十年先でしょう。それまではひたすら冷やし続ける必要があり、大規模な漏洩の可能性は小さくなりましたが放射能を帯びた廃液の管理にはずっとリスクが付きまといます。
Flying Zebra @f_zebra
それに比べ、4号機は炉内に燃料がなく、SFPの使用済燃料にも大きな損傷がないことが確認されています。崩壊熱は事故直後より更に小さくなっていて、来年の末頃から燃料集合体の取り出し作業が開始される予定です。あくまでも比較の問題ですが、状況はずっとマシです。
Flying Zebra @f_zebra
それでも殊更に4号機を危険視する意見が根強く残っているようなので、その根拠を調べてみました。大まかに言えば、余震等で建屋が損傷、冷却ができなくなって加熱し、被覆管がジルコニウム火災を起こして燃料中の放射性生成物をエアロゾルとして撒き散らす、といったストーリーのようです。
Flying Zebra @f_zebra
ところが、その根拠となると国内外の公的機関あるいは「まともな」専門家がそうした危険を指摘した事実は見当たらず、A.ガンダーセンあたりが吹聴しているものが拡散しているようです。ジルコニウム火災についてはNRCの研究がいくつか言及されていたので、そちらを調べてみました。
Flying Zebra @f_zebra
9.11テロ以前には、SFPのジルコニウム火災は運転を終了して廃止されるプラントの潜在リスクとして認識され、所外への甚大な放射能汚染を引き起こす可能性があるもののそのリスクは小さく、追加の規制は不要とされていました。http://t.co/U9POLsYu
Flying Zebra @f_zebra
ここで言及されているスタッフレポートは記載のURLからは辿れませんが、以下のURLで全文を読むことができます。アメリカはEPRIなど民間の研究機関はあまりデータを出したがらないのですが、NRCはほとんどの文書を無制限で公開しています。http://t.co/JtSWiM7c
Flying Zebra @f_zebra
注意すべきは、アメリカの規制は徹底したリスク分析に基づいて行われていることです。アメリカ以外では確率論的「安全性」解析(PSA、SはSafety)と呼びますが、アメリカは潔くRiskのRでPRAと呼んでいます。
Flying Zebra @f_zebra
リスクとはハザードの大きさ×発生頻度であり、総リスクとはそれらのリスクを足し合わせたものであると、一般向けのレポートでも丁寧に説明されています。ハザードが甚大でも発生頻度が低ければリスクは小さくなり、有効な予防処置がある場合もリスクは小さく評価されます。
Flying Zebra @f_zebra
レポートでは、解析の結果SFPの事故による公衆被曝リスクは低いと結論付けられ、特に最終停止から1年を経たプラントではジルコニウム火災の可能性は低く、緊急避難計画の要求を緩和する根拠とできるとしています。
Flying Zebra @f_zebra
以上が2001年以前の状況です。9.11テロは原子力業界にも大きな衝撃を与えました。想定外のテロ攻撃が成功しうることが明らかになり、現時点で具体的な手口が想定できない「効果的なテロ攻撃」に対しても備えておく必要性が認識されました。
Flying Zebra @f_zebra
商用原子力プラントの安全対策も大幅に見直され、多くの追加対策が実施されました。このため、福島事故を受けたアメリカ国内の原子力プラントに対する緊急対応の検討では、既に完了した対策で十分なため、特に緊急の追加安全対策は必要ないと判断されました。
Flying Zebra @f_zebra
SFPのリスクについては、全米アカデミーズ(科学アカデミー、技術アカデミー、医学院)による公開報告書、"Safety and Security of Commercial Spent Nuclear Fuel Storage"(2006)に詳しく解説されています。
Flying Zebra @f_zebra
以下のURLで全文を無料で読むことができます。以下は、この報告書を読み解いていきます。http://t.co/XzBTDyfg 使用済燃料について構造から現状まで幅広い内容が丁寧に解説されてるので、英語ですが、全編読めばかなりの知識が身に付くと思います。
Flying Zebra @f_zebra
本題に入る前に、イントロに興味深い記述を見つけたので紹介しておきましょう。「原発に関しては、常に追加の利得が発生する。人は他の物理的な傷害より放射能を(過大に)恐れがちであり、放射能への懸念があるテロ攻撃は実際の物理的被害を超える大きな影響がある。」(p12)
Flying Zebra @f_zebra
つまり、放射能への恐怖心のために物理的被害以上のパニックが起こり、合理的な補償、除染コスト以上のコストがかかり、経済への影響も拡大し、故にテロリストにとっては実にコストパフォーマンスに優れた「おいしい」攻撃対象となりうる、ということです。
Flying Zebra @f_zebra
2章ではテロ攻撃について解説されています。具体的な手口はさすがに機密扱いで非公開ですが。ここでも、テロに対して脆弱なのは原子力施設だけでなく、石化プラントなどは原発より脅威が高い上に、人口密集地に近接していることが指摘されています。(p27)
Flying Zebra @f_zebra
報告の中で、9.11以降にテロ攻撃をも想定して事象を緩和する対策が取られており、仮に攻撃が成功しても重大な事態に至る可能性は低いと結論されています。また、堅牢な構造、厳重な警備のため、攻撃対象としては他の施設に比べ選択されにくいことも指摘しています。(p34)
Flying Zebra @f_zebra
使用済燃料はSFPまたは乾式キャスクで保管されていますが、3章ではこのうちSFPの潜在リスクについて論じています。冷却が失敗し、ジルコニウムの被覆管と酸素または水蒸気が反応して水素を発生する反応は発熱反応であり、加速的に進展する可能性があります。(p38)
Flying Zebra @f_zebra
これがジルコニウム火災で、温度が更に上昇すれば燃料の膨張、被覆管の破裂、更に燃料の溶融と進展し、その場合生成物及び燃料自体がエアロゾルとして放出され、外部に出れば甚大な汚染を引き起こすことがメカニズムとしてはあり得ます。(p39)
Flying Zebra @f_zebra
原子炉の炉心内におけるジルコニウム-水蒸気反応については1960年代から研究されていますが、これを応用してSFPの冷却材喪失事象について検討しています。
Flying Zebra @f_zebra
過去の研究では、SFPのリスクは炉心のリスクより遙かに小さいとされてきました。これは冷却水が大気圧である(加圧されていない)こと、燃料が未臨界で発熱量が小さいこと、配管の配置・構造等から冷却材喪失が起きにくいことなどによります。(p44)
Flying Zebra @f_zebra
報告は、近年の燃料の高燃焼度化やSFP内の高密度化を考慮してもなお、SFPのリスクが低いという結論は現在も有効であるとしています。ただし、過去の研究はテロ攻撃を想定していないことには注意を要すると指摘しています。
Flying Zebra @f_zebra
NRCは定期的にSFPのリスク解析を見直しています。先に紹介した、2001年の研究報告についてもこのページで概要が紹介されています。PRAの結果、SFPで冷却水喪失が起こるとすれば大規模地震、または移送中にクレーンから燃料が落下することによって起こる可能性が高いそうです。
Flying Zebra @f_zebra
強制冷却が失われたものの冷却水は失われないという場合だと、燃料が露出するまで約100時間の対処時間があるという熱流力解析結果も紹介されています。結論としては先に紹介した通り、ハザードは大きいが発生頻度が低く、リスクとしては小さいというものです。
残りを読む(16)

コメント

畠山元彦 @MuiMuiZ 2012年5月19日
すみません、ご教示ください。最終停止から一年を経たプラントでジルコニウム火災の可能性が低くなるとは何ページに書かれていますか? @f_zebra
Flying Zebra @f_zebra 2012年5月19日
MuiMuiZ これは初めの方に挙げたスタッフレポートのSummary and Conclusions(p45)の最後から2段落目ですね。少し前にはもう少し詳しく書かれています。そこを読むと、5年程度はジルコニウム火災を起こしうる崩壊熱が続くと書かれています。ではなぜ1年経てば可能性が低くなるのでしょうか。
Flying Zebra @f_zebra 2012年5月19日
MuiMuiZ ここが確率論的リスク評価の大切なところなのですが、同規模の放射能汚染を起こす炉心での事故に比べ、事故の進展が遅く、放射能放出まで長い時間がかかります。そのため、その間に何らかの緩和処置、または住民の避難を行うことが容易となるため、最終的に放出まで至る確率は低くなるのです。
kon-beef @kon_beef 2012年5月19日
なるほどね。もし誰かから4号機は危なくないんですか?って聞かれたらこれを参考に答える事にしよう。こちらでは他人事じゃなくそういう会話する事がまだあるからね
畠山元彦 @MuiMuiZ 2012年5月19日
@f_zebra ご返信ありがとうございます。こちらのレポートはよく見ておりませんが2001年のNUREG-1738の元となったレポートの一つでしょうか。冷却復旧までの対処時間を考慮しての結果であり、ジルコニウム火災の危険自体は条件次第で5年間続くと理解しました。
笑い猫 @bokudentw 2012年5月19日
まずは問題は、匿名で説明していること、本来は保安院か東電が公式に説明すべきだな。でないとなんとも安全性向上にはつながらないな。いままでいろいろ事故起こしてきた人たちが安全、安全いっても信頼されないが。実際のコンクリートみたわけでもなく安全という人は信用したらいけない
笑い猫 @bokudentw 2012年5月19日
地震のレベルも今回の福一は500ガルぐらいだったが最大2000ガルまで有り得るという話もあるからなあ。311でも2号3号はECCSが働いて時間的余裕があったにもかかわらず複合多発的事故で対応しきれなかった。巨大地震あれば事故は複数起きるかもしれない
畠山元彦 @MuiMuiZ 2012年5月19日
参考:NRC NUREG-1738 (2001)より。わりと荒いモデルでの計算のようですが、停止後の時間とジルコニウム火災発火温度までの時間との関係 http://twitpic.com/9msjmo 1年目7時間、2年目13時間、3年目23時間…いざとなったときの持ち時間。
Flying Zebra @f_zebra 2012年5月19日
合理的な懸念があることについては説明が必要でしょうが、懸念がないことまで説明が必要なんでしょうか。私を含め素人が思いつくようなことは、専門家であれば当然考えています。専門家が心配していない事について素人が騒ぐのは勝手ですが、それに対し一々専門家の説明を求めるのはリソースの無駄遣いでしかありません。
Flying Zebra @f_zebra 2012年5月19日
MuiMuiZ その理解で正しいと思いますよ。化学プラントの小規模な火災でも、何も手を下さず放置すれば大災害になり得ます。mitigationの容易さ、言い換えれば成功可能性を考慮しなければリスク評価はできないということです。
Flying Zebra @f_zebra 2012年5月19日
ちなみに、最新の原子力プラントの設計は事故の際に能動的な緩和処置を必要としない、"passive safety"を標榜しています。運転員の技量に期待せず、何もしなくても、あるいはわざと悪化させようとしても勝手に冷温停止に至るというのが究極の目的です。
畠山元彦 @MuiMuiZ 2012年5月19日
@f_zebra ええ、冷却材喪失後の「NRCの見解では1年以上経た燃料でジルコニウム火災に至ることはまずあり得ないとしています」の根拠がどのような性質のものであるかはわかりました。
後藤寿庵 @juangotoh 2012年5月20日
4号機の危機を喧伝する文章には「倒壊」という言葉がよく見られます。イメージとしてはそれこそ911テロのようにグシャグシャに潰れるとか、底が抜けてバシャーっと水が出てしまう状況をイメージしてるんじゃないかと。
@1F9kLsF 2012年5月20日
しかし正直テロ対策観点から見れば日本の原発はちょっと不安ではある。アメリカじゃNESTやら原発警備特殊部隊がM4構えて睨み効かせてるが、国内じゃ専門は福井県警の警戒隊くらいじゃないか。まあ専門部隊を作れとは言わないが、原発攻撃に対する部隊の運用や対処方法について、もう少し露出があってもいいんじゃないか。無論手の内を見せる必要はないけど。
Tetsuro KITAJIMA@クラシック音楽方面用 @hcro_classic 2012年5月21日
f_zebra 素人が思いつくことについて懸念があるかないかは専門家でないと正当には判断できないのでは。で、今回専門家の判断をご紹介いただいたわけですよね。/日本だと「御用学者の言うことは信用できない」とかなるのが現状。
八的暁 ハチプロデザイン @hachipro 2012年5月22日
プールの水が全て流出した上で建屋がぼーぼー燃えたりなどしなければ、何かあって散らばったとして後始末がすごく面倒にはなるけれど広域に甚大な被害が出る確率は少ない…というような感じの理解でいいのかな?
バイクくん@進撃の超お嬢様執事 @Micheletto_D 2012年5月22日
bokudentw 資料は示されているのだからそれをご覧になった方がよいのでは?匿名の方の説明で不安でしたら自分で読んで理解すべきです。
なおとけ @naotoke 2012年5月22日
通常運用状態のSFP(使用済み核燃料プール)で冷却水漏洩事故が起きた場合は十分な持ち時間があるというのは納得できるんだけど、フクイチの状況で冷却水が喪失したり、SFPの土台が倒壊するリスクを低く見ていい理由はいまいち納得出来ない。制御不能になるけど逃げる時間はあるということ?
Flying Zebra @f_zebra 2012年5月22日
「倒壊」(笑、と付けたい気分ですが)については、原子炉建屋の構造、通常の応答解析に加えFEMでも耐震尤度を確認していることから、福島第一の他のユニットや他の原発に比べてもずっと「安心」です。4号機が倒壊するような地震なら、他のユニットも倒壊しますし、東北、関東一円に甚大な被害が出ているでしょう。
Flying Zebra @f_zebra 2012年5月22日
補強工事にしても、しなければ危険だからしたわけではありません。解析の際に損傷した壁などを強度部材としてどの程度評価できるか不明だったので、それらはないものとして、代わりの強度部材を追加して評価したということです。その通りの内容で発表されているのに、素人が写真のイメージだけで今にも倒壊するような「懸念」を示し、それが拡散しただけです。少なくとも私は、原子炉建屋の構造を理解している専門家が4号機の倒壊を懸念しているという話を聞いたことがありません。
シマシマネコのママ🌕(消費税減税・原発は禁止に。デススト完走済👍)🌈 @simanekomama 2012年5月22日
【放射能漏れ】4号機建屋の耐震性調査 福島第1原発 - MSN産経ニュース (5月17日)http://sankei.jp.msn.com/science/news/120517/scn12051720410005-n1.htm「東京電力は17日、福島第1原発4号機の原子炉建屋の耐震性を確認する調査を始めたと発表した。」
シマシマネコのママ🌕(消費税減税・原発は禁止に。デススト完走済👍)🌈 @simanekomama 2012年5月22日
→記事の内容の続き→「・・・1週間程度かけて調べる。  1535体の使用済み核燃料集合体を入れたプールが建屋5階にあり、プールが傾いていないか、壁面などのコンクリートが劣化していないかを目視や機器で調べる」念のため東電も調べるようですね。
みゃあみゃあ@もふ不足中 @umyadeyo 2012年5月22日
小出氏の講演ではかなり4号機の危険性を強調している印象を受けましたね。「倒壊」という言葉を使っていたかは覚えてませんが。「補強工事はされているがしかし」という論調。
シマシマネコのママ🌕(消費税減税・原発は禁止に。デススト完走済👍)🌈 @simanekomama 2012年5月22日
umyadeyo さん、小出先生のお話、こちらでしょうか→福島第一原発4号機倒壊で首都圏壊滅!? 小出裕章氏1http://www.youtube.com/watch?v=Y5J33LdXK58
畠山元彦 @MuiMuiZ 2012年5月23日
参考にリンクしておきます。私の以前のまとめ→ http://togetter.com/li/281581 ほとんど同じ文献を読んだのですが受けた印象はいくらか違いました。
畠山元彦 @MuiMuiZ 2012年5月23日
私が理解したのは以下のようなことです。①ジルコニウム火災の危険性は現実のものであり、注水が追いつかないような大規模な冷却水喪失事故が発生すると半日~数日内に起こりうる。ただし燃料の配置と空気冷却に依存。
畠山元彦 @MuiMuiZ 2012年5月23日
②火災の危険は停止後最長5年続く。4号機停止が2010年秋なので、(燃料が取り出されなければ)残り3年半。③燃料が露出したときの周辺の放射線量は致死的であり、対処作業は命がけのものとなる。
畠山元彦 @MuiMuiZ 2012年5月23日
④実際に火災が起きたときの被害は甚大なものとなり、火災が一部でも事故直後の放出量を容易に上回るものとなる。また特に、⑤私は上のPRA(PSA)に基づく評価は事故後の福島第一にはほとんど適用できないと考えます。
畠山元彦 @MuiMuiZ 2012年5月23日
それは今後数年のうちにプールの冷却水喪失事故が起こる可能性がどの程度であり、そうなったときにどう対処できるかがわからないからですが、これはなにより地震学者、そして東電や保安院に問うべきことでしょう。
ログインして広告を非表示にする
ログインして広告を非表示にする