渡邊芳之(@ynabe39)先生による戦前と今の歌手の歌い方について

渡邊芳之(@ynabe39)先生による戦前と今の歌手の歌い方についてまとめました。
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渡邊芳之 @ynabe39

いくら時代考証を丹念にやった映画やドラマでもなかなか再現できないのが「その時代の歌い方」だ。とくに録音が現存する明治から戦前の日本人の「歌い方」で歌える歌手や俳優はまずおらず,どれも「今の歌い方」になってしまう。

2012-05-02 07:25:26
渡邊芳之 @ynabe39

その点で,若い頃の美空ひばりの物真似ができる人はいまも多くいることから,ひばりの歌い方が「新しい歌い方」だったことや彼女が「日本人の歌い方の変化」を体現していたことがわかる。

2012-05-02 07:27:44
渡邊芳之 @ynabe39

われわれが時代劇に出てくる日本人の「歌い方」を気にしないように,明治から昭和20年代までの歌い方を知っている人がいなくなれば「明治から昭和が舞台のドラマでの歌の歌われ方」を気にする人もいなくなるだろう。

2012-05-02 07:29:28
渡邊芳之 @ynabe39

そういう意味では「この時はほんとうはこんなではなかった」とケチをつける人が一般の家庭にいなくなった時に,その時代を舞台にした映画やドラマは「時代劇」になるのだろうと思う。「三丁目の夕日」みたいな昭和ものなどかなり時代劇になっている感じがする。

2012-05-02 07:31:03
渡邊芳之 @ynabe39

しかし「リンゴの唄」などはレコードも残っているしわれわれ世代はまだそれをくりかえし聴いて育っているので,やはりいま風の「しゃくり上げる歌い方」で歌われると違和感がある。1920年代のブルースマン役がギブソン335でライトゲージの弦でチョーキングしまくりみたいな感じ。

2012-05-02 07:34:05
渡邊芳之 @ynabe39

古いレコードを集めるようになって「実感」したのは,昭和40年には「リンゴの唄」は「20年前のヒット曲」だったということだ。いまのわれわれから見て平成4年のヒット曲(たとえば「部屋とYシャツと私」)の感じであの歌が聴かれていた時代は明らかに「戦後」だったと思う。

2012-05-02 07:39:35
渡邊芳之 @ynabe39

実際にはしゃべり方や日本語の発音も今と昭和20年ではずいぶん違います。昭和40年代の日本人も今よりはずいぶん不明瞭なしゃべり方をしている。 RT @chaotic_7: …昔の映画やTV番組,ラジオ録音を視聴すると今と較べてセリフが速かったり声が甲高かったりするのですが…

2012-05-02 07:41:19
渡邊芳之 @ynabe39

それに加えて昔の日本ではアナウンサーや俳優など「プロの話し方」と一般の人の話し方との差が今より大きいようにも思える。昭和30年代の一般人が話している録音を聴くと何を言ってるのかちょっと考えないとわからないことがある。

2012-05-02 07:43:09
渡邊芳之 @ynabe39

われわれが「ブルーシャトウ」を歌うとそれは45年前の歌ということになるが,昭和40年からみた45年前はまだ大正時代である。

2012-05-02 07:49:42
渡邊芳之 @ynabe39

私が小学校に入る前の年の昭和43年が明治百年で,そのころには明治維新より前に生まれた人がまだ少なからず存命していた。

2012-05-02 07:51:36
渡邊芳之 @ynabe39

本当に昭和20年のオーディションだったらむしろ最初の子のほうが採用されたのではないか。

2012-05-02 08:19:09
渡邊芳之 @ynabe39

聖子ちゃんがデビューした頃に母がテレビを見ながら「こんな下手糞な歌でどうしてテレビに出てるのか」とよく言っていた。私は「すごく歌のうまい子が出てきた」と思っていたので驚いた。「歌のうまさ」の基準が違うのだ。

2012-05-02 08:30:18
渡邊芳之 @ynabe39

いっぽうわれわれが戦前の歌のレコードを聴くと洋楽邦楽とわず「音程が悪くて下手糞」に聴こえることがある。ヴァイオリンなどもそうだが、これも「うまさの基準が違う」のである。

2012-05-02 08:33:17
渡邊芳之 @ynabe39

デビュー曲の「裸足の季節」をいま聴いて「下手に歌っている」と思う人はまずいないと思います。完璧ですよ。 RT @KazAmano: デビュー当時は大人の指示でわざと下手に歌わされていたのだとか。

2012-05-02 08:35:50
渡邊芳之 @ynabe39

@kikumaco そうですね。モノマネされる一般的な聖子ちゃんのイメージは声が変わってからのものです。

2012-05-02 09:02:23
渡邊芳之 @ynabe39

美空ひばりは戦前の歌い方を引きずっていない、というのは今日の大きな発見。

2012-05-02 09:04:17
渡邊芳之 @ynabe39

@saizyo80 藤山一郎,霧島昇などは明らかに「旧来型」です。彼らは音楽学校出身だというのも大事な要素だと思います。

2012-05-02 15:52:55
渡邊芳之 @ynabe39

@saizyo80 それ私もわかります。ひばり以降は「現代」なんですよ。昨日も「誰か故郷を思わざる」を何度も繰り返し聴きました。

2012-05-02 16:06:19
渡邊芳之 @ynabe39

「低く出てしゃくりあげて正しい音になるという歌い方」が戦後のアメリカ音楽の最大の影響なのかもしれないなあ。

2012-05-22 08:09:07
@wander1985

@ynabe39 そうですかね?民謡やらの原型になった「声明」習ってますが、下からずり上げて入りますよ。一応、平安時代からおそらくこうだった、と師匠は言ってます。もちろんソウルとかブルースとかのずり上げ方とは微妙に違いますけど。

2012-05-22 08:25:17
@wander1985

@ynabe39 人間の身体の作り的に、音程は低いところからずり上げた方が楽というか自然なんです。声を高くするには弦(声帯)を強く張らないといけないけれど、無音状態で適切な張りをキープするのはしんどいから。だから世界中のプリミティブな音楽の多くは歌い出しに「ずり上げ」が入ります。

2012-05-22 08:35:15
渡邊芳之 @ynabe39

まさに先祖返りですね。戦前戦中の歌謡曲歌手のほとんどが音楽学校出身だったのはその点で重要なことです。@wander1985

2012-05-22 08:37:27
渡邊芳之 @ynabe39

戦前戦中に歌謡曲を歌っていた人々というのは音楽学校で西洋音楽の訓練を受けた人たちだったんですよね。「一般の日本人とは違う歌い方」ができる人が「歌手」だったのでしょう。戦後は日本人一般が西洋的に歌えるようになってプロが先祖返りしたかw。 @wander1985

2012-05-22 10:51:31
渡邊芳之 @ynabe39

「東京音楽学校」の世代ですね。二葉あき子や関種子もそう。 霧島昇は東洋音楽学校(いまの東京音大)。 RT @aratayuuki: @wander1985 藤山一郎氏は、 東京芸大出身だったような。 在籍中に、 何かの楽曲を歌唱しているハズですが。

2012-05-22 10:58:15
渡邊芳之 @ynabe39

霧島昇と結婚したミス・コロムビア(松原操)も東京音楽学校卒業だな。「旅の夜風」のデュエットは美しいね。 http://t.co/RSmFwbEw

2012-05-22 11:01:36
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